詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(132)

2019-04-30 10:00:51 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
132 古代以来ギリシャの

 「アンティオキアが誇るのは、」と書き出され、さまざまなものが語られる。

だが、それらを差し置いてアンティオキアは誇る、
古代以来ギリシャの都市であったことを、
イオを通じてアルゴスに繋がる系譜を、
イナコスの娘の名誉のために
アルゴスの植民者たちによって造られた町であることを。

 「繋がる系譜」は「歴史」である。「時間」である、と言い換えた方がいいだろう。

 池澤は、この事情を簡潔に書いている。

ギリシャはローマのように統一された広大な領土は持たなかったが、地中海の諸地域に植民都市を築いた。シリアのアンティオキアもその一つである。

 ローマ帝国は「領土」(空間)を支配する。一方、ギリシャは「空間」の大きさは気にしない。「時間」が連続していればいい。精神(文化)は「時間」をつないで生きていく。精神が歴史そのものになる。言い換えるなら「歴史」を支配する。
 「領土」は「広がる」が「時間」は「つながる」。「繋がる」という動詞をカヴァフィスが次がんテイクことに注目したい。
 ことばは、その国民の精神の結晶である。カヴァフィスはギリシャ語を書くことで、ギリシャの歴史を書く。精神に新しいいのちを吹き込む。




カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
書肆山田


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