現行犯逮捕なのに ++ ナノ秒の大虐殺(2) ::
最初に読者と合意しておかなければならないことがある。ナチスによるホロコーストの犠牲者の数である。これを書くに当たってざっと資料をあたってみた。専門家でない私としては下調べから始めたわけである。
ところが、これがナマズのような、コンニャクのようなつかみどころのない話で、色々な数字、説があるのには驚いた。前回のアメリカの日本爆撃、原爆投下に続いてドイツの現代科学を用いたホロコーストの生産性という観点から、強制収容所における毒ガスを使ったユダヤ人の大量殺戮を中心として検討することとする。
現代的方法によらない大虐殺まで話を広げるとアメリカも中国やソ連には負けてしまうだろう。
強制収容所の問題はドイツの敗戦と同時に露見し把握された問題で、いわば現行犯逮捕で有無をいわさない証拠があると思っていた。ところがサにあらず、ということらしい。毒ガスで殺害された証拠となる遺体が発見されていないという報告もある。強制収容所で発見されたガス室といわれるものが、そうではないという説もあるようだ。
多数の証言がお互いに全く矛盾しているという指摘もある。ナチスのドキュメントにまったく言及するものがないという指摘もある。これは敗戦時に焼却隠滅したということになている。実際にはナチス文書をろくろく調べていないのだという人もいる。
最近になって当時のナチス政府の残された文書を一箇所に集めてこれから検討を始めようという動きも出てきたとか。
戦時中連合軍の偵察機が強制収容所上空から撮影した写真からは煙など焼却施設が稼動していたという証拠はないという報告もある。もちろん世に流布されている数字を主張する多数の資料もあるのだが、上述のように無数の反証もあることがわかった。もちろん専門家でない私にはどちらが正しいという裁定は出来ない。
犠牲者の数についても、ホロコーストを肯定する人の間でも信じられないくらいのばらつきがある。上は1000万人から100万人のあいだに大体収まるようである。ホロコーストに疑問を呈したり、犠牲者の数を云々することを封殺する雰囲気が欧米にあることはよく知られたことである。
日本で、だれかが核兵器を持つことを検討するがいけないばかりではなくて、核の議論をすることがいけないという人もいたが、ユダヤ人のホロコーストについてもそういう風潮があるようだ。
山本七平ではないが、「空気」というものは世界中どこの国にでもある。日本文化の専売特許ではない。かっての宗教裁判、宗教戦争と同じである。
ここで色々あげつらってもラチがあかないので、一応欧米の(現代宗教裁判所)が採用している数字すなわちユダヤ人のホロコースト犠牲者は600万人と仮定して話をすすめる。
つづく