惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

星雲賞

2006-07-10 21:27:45 | 日記・エッセイ・コラム
 サッカー、ワールドカップ終了。予想で唯一名前を出してなかったイタリアが優勝とは……。
 真剣な戦いにイタリア人はどうも似つかわしくないような印象があっていきません。イタリア人といえば、おいしいものを食べて、歌をうたって、恋を語っている――そんなイメージを抱いてるんです。偏見かしらん。
 どんな戦いぶりだったのか、詳しいことはこれからビデオで勉強させてもらいます。

 昨日、書きかけていた8日(土曜日)のずんこん参加の旅の続き――

 昨日はせっかく名勝松島に来ていながら、弁当の話ばかりで景色のことは何も書いていませんね。我ながら食い意地のはった男だとあきれております。

 絶景といわれる松島。穏やかな湾内に青々とした松の繁る小島が点在しています。それぞれの島は海抜数メートルしかなく、上に松、基部は白い岩肌が切り立っていて、どれも同一デザイン・同一サイズといっていいぐらい。まるで誰かが意匠を凝らした海上庭園のようです。
 なぜ、このように似たような島がたくさん浮かんでいるのでしょう?

 秘密は火山活動と断層、それに最終氷期に海面が下がった際、このあたりは河岸段丘のような地形になっていたこと、さらに、松島湾には土砂を流し込む大きな川がないあたりにあるらしい(と書いても、よくわからないかもしれませんが)。ともかく、偶然の産物というか、天然の造化の妙なのですね。

 しかし、陸上の雰囲気は国内各地に見られる観光地そのもの。通りが比較的整然としているのは好感が持てますが、あまり長居はしたくない。食事を終えると、海岸線を眺めながら東進し、ずんこん会場のホテル壮観に着きました。

 主な宿泊企画はこのホテルで行なわれます。しかし規模の大きな上映とか対談など、いくつかの企画は向かいの松島町中央公民館大ホールを会場としており、中には地元の方々に公開されるものもあります(そのうちのひとつ「日本沈没」対談については後に触れるつもり)。

 その中央公民館で行なわれたオープニングで諸注意を頭に入れた後、ホテルに帰って、午後3時からは「SF創作講座」。参加者の作品を、塩澤〈SFマガジン〉編集長、ライトノベルに強い評論家の三村美衣さん、それに森下が公開で批評するというなかなかにシビアな企画です。今回は途中から架空戦記を中心に活躍している作家の横山信義さんも評者陣に加わってくださいました。
 参加者は事前に小説を寄せ、世話役の平田さんがそれを本にしてすでに配布してあります。つまり、ほとんどが参加者の作品を読んでその場に臨むので、敷居が高い。しかし、そのぶん互いの交流も深まり、気心が通じ合うという得がたい体験ができるのです。

 3時間半をかけて創作講座を終えると、また公民館に移動して「星雲賞授賞式」。昨年発表された作品(とばかりは限らないのですが)の優れたものをSFファンが投票で選ぶ賞で、年を重ねてこれで37回目。
 賞の詳細はたとえばこちらを見ていただくことにして、記憶に残った受賞者について簡単に。

 お1人目は〈自由部門〉受賞の「MUSES-C はやぶさ イトカワ着陸ミッション」で登壇されたJAXAの方。お名前を記録していないのはまことに失礼なのですが、はやぶさに搭載したイオンエンジンを開発された方だとか。
 JAXAは「星雲賞」という得体の知れない賞に、最初は警戒しつつも、正体がわかると喜んで受けてくださることを決め、精鋭をわざわざSF大会会場まで送って下さったようです。受賞の言葉でそのあたりをさらりと触れた後、ご自分の研究、はやぶさのミッションのあらまし、今後の見通しなど、現場におられる方ならではの熱意に満ちたお話を聞かせてくださいました。

 もうお1人は漫画家の岡野玲子さん。『陰陽師』全12巻が〈コミック部門〉で、原作者・夢枕獏さんとともに受賞となったのですが、こちらもわざわざ松島まで(ご主人の手塚眞さんとご一緒に)来てくださったのです。なんでもこのあたりは執筆にあたって日本各地を回ったうちの一箇所で、作品に霊感を与えた土地だとか。そんなこともあり感慨新ただというようなお話でした(またまた記憶が曖昧で申し訳ありません)。どこか巫女を思わせるような優雅なファッションが素敵でした。

 この後は夕食から夜の企画へと続くのですが、長くなりましたので、また明日にでも。