谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(12)(創元社、2018年02月10日発行)
「スキャットまで」は「云いたいことを云うんだ」で始まったことばが「スキャット」になるまでを書いている。
好きな部分は二か所。
数字のたたかみかけるリズムが気持ちいい。「スリーフォー」と続けた部分がおもしろい。「わけてくれ」が省略され、「コーラス」が省略される。その展開の速さ、加速度が欲望の音楽。
ことばはさらに続いていく。
突然挿入される「龍安寺の石庭」がおもしろい。「龍安寺の石庭」は「沈黙」の象徴。「沈黙」が「音」を遮断する。
この詩のハイライトだ。
でも、不思議。
「スキャット(声)」について書いているのに、「沈黙」がいちばん印象に残るというのは。
これが、詩というものなのだろう。
このあと詩は、「ジャズ」という音を変奏させながら「スキャット」に変わっていく。私はカタカナが読めない。聞いたことがある音はカタカナでもなんとか読めるが、聞いたことのない音が書かれていると、まったく読めない。
谷川がいっしょうけんめいに書いたのは、その音の変奏なのかもしれないが、私の耳には聞こえない。朗読で聞けば「聞こえる」かもしれないが、文字からは聞こえない。これは谷川のせいではなく、私の「肉体」の欠陥である。
*
「詩はどこにあるか」1月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして1750円の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
瀬尾育生「ベテルにて」2 閻連科『硬きこと水のごとし』8
田原「小説家 閻連科に」12 谷川俊太郎「詩の鳥」17
江代充「想起」21 井坂洋子「キューピー」27
堤美代「尾っぽ」32 伊藤浩子「帰心」37
伊武トーマ「反時代的ラブソング」42 喜多昭夫『いとしい一日』47
アタオル・ベフラモール「ある朝、馴染みの街に入る時」51
吉田修「養石」、大西美千代「途中下車」55 壱岐梢『一粒の』59
金堀則夫『ひの土』62 福田知子『あけやらぬ みずのゆめ』67
岡野絵里子「Winterning」74 池田瑛子「坂」、田島安江「ミミへの旅」 78
田代田「ヒト」84 植村初子『SONG BOOK』90
小川三郎「帰路」94 岩佐なを「色鉛筆」98
柄谷行人『意味という病』105 藤井晴美『電波、異臭、工学の枝』111
瀬尾育生「マージナル」116 宗近真一郎「「去勢」不全における消音、あるいは、揺動の行方」122
森口みや「余暇」129
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
「スキャットまで」は「云いたいことを云うんだ」で始まったことばが「スキャット」になるまでを書いている。
好きな部分は二か所。
ワンコーラスわけてく
れ いやツーコーラス いやスリーフォー いくらでもいい
数字のたたかみかけるリズムが気持ちいい。「スリーフォー」と続けた部分がおもしろい。「わけてくれ」が省略され、「コーラス」が省略される。その展開の速さ、加速度が欲望の音楽。
ことばはさらに続いていく。
一時
間二時間六時間いや一日まるごとくれよ俺に 黙っているのは龍安
寺の石庭 叫ぶのは俺だ 俺はのどだ 舌だ 歯だ 唇だ のどち
んこだ 声なんだ
突然挿入される「龍安寺の石庭」がおもしろい。「龍安寺の石庭」は「沈黙」の象徴。「沈黙」が「音」を遮断する。
この詩のハイライトだ。
でも、不思議。
「スキャット(声)」について書いているのに、「沈黙」がいちばん印象に残るというのは。
これが、詩というものなのだろう。
このあと詩は、「ジャズ」という音を変奏させながら「スキャット」に変わっていく。私はカタカナが読めない。聞いたことがある音はカタカナでもなんとか読めるが、聞いたことのない音が書かれていると、まったく読めない。
谷川がいっしょうけんめいに書いたのは、その音の変奏なのかもしれないが、私の耳には聞こえない。朗読で聞けば「聞こえる」かもしれないが、文字からは聞こえない。これは谷川のせいではなく、私の「肉体」の欠陥である。
*
「詩はどこにあるか」1月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして1750円の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
瀬尾育生「ベテルにて」2 閻連科『硬きこと水のごとし』8
田原「小説家 閻連科に」12 谷川俊太郎「詩の鳥」17
江代充「想起」21 井坂洋子「キューピー」27
堤美代「尾っぽ」32 伊藤浩子「帰心」37
伊武トーマ「反時代的ラブソング」42 喜多昭夫『いとしい一日』47
アタオル・ベフラモール「ある朝、馴染みの街に入る時」51
吉田修「養石」、大西美千代「途中下車」55 壱岐梢『一粒の』59
金堀則夫『ひの土』62 福田知子『あけやらぬ みずのゆめ』67
岡野絵里子「Winterning」74 池田瑛子「坂」、田島安江「ミミへの旅」 78
田代田「ヒト」84 植村初子『SONG BOOK』90
小川三郎「帰路」94 岩佐なを「色鉛筆」98
柄谷行人『意味という病』105 藤井晴美『電波、異臭、工学の枝』111
瀬尾育生「マージナル」116 宗近真一郎「「去勢」不全における消音、あるいは、揺動の行方」122
森口みや「余暇」129
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
谷川俊太郎の『こころ』を読む | |
クリエーター情報なし | |
思潮社 |