詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(12)

2018-02-24 10:05:28 | 谷川俊太郎『聴くと聞こえる』
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(12)(創元社、2018年02月10日発行)

 「スキャットまで」は「云いたいことを云うんだ」で始まったことばが「スキャット」になるまでを書いている。
 好きな部分は二か所。

                    ワンコーラスわけてく
れ いやツーコーラス いやスリーフォー いくらでもいい

 数字のたたかみかけるリズムが気持ちいい。「スリーフォー」と続けた部分がおもしろい。「わけてくれ」が省略され、「コーラス」が省略される。その展開の速さ、加速度が欲望の音楽。
 ことばはさらに続いていく。

                            一時
間二時間六時間いや一日まるごとくれよ俺に 黙っているのは龍安
寺の石庭 叫ぶのは俺だ 俺はのどだ 舌だ 歯だ 唇だ のどち
んこだ 声なんだ

 突然挿入される「龍安寺の石庭」がおもしろい。「龍安寺の石庭」は「沈黙」の象徴。「沈黙」が「音」を遮断する。
 この詩のハイライトだ。
 でも、不思議。
 「スキャット(声)」について書いているのに、「沈黙」がいちばん印象に残るというのは。
 これが、詩というものなのだろう。

 このあと詩は、「ジャズ」という音を変奏させながら「スキャット」に変わっていく。私はカタカナが読めない。聞いたことがある音はカタカナでもなんとか読めるが、聞いたことのない音が書かれていると、まったく読めない。
 谷川がいっしょうけんめいに書いたのは、その音の変奏なのかもしれないが、私の耳には聞こえない。朗読で聞けば「聞こえる」かもしれないが、文字からは聞こえない。これは谷川のせいではなく、私の「肉体」の欠陥である。



*


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目次

瀬尾育生「ベテルにて」2  閻連科『硬きこと水のごとし』8
田原「小説家 閻連科に」12  谷川俊太郎「詩の鳥」17
江代充「想起」21  井坂洋子「キューピー」27
堤美代「尾っぽ」32  伊藤浩子「帰心」37
伊武トーマ「反時代的ラブソング」42  喜多昭夫『いとしい一日』47
アタオル・ベフラモール「ある朝、馴染みの街に入る時」51
吉田修「養石」、大西美千代「途中下車」55  壱岐梢『一粒の』59
金堀則夫『ひの土』62  福田知子『あけやらぬ みずのゆめ』67
岡野絵里子「Winterning」74  池田瑛子「坂」、田島安江「ミミへの旅」 78
田代田「ヒト」84  植村初子『SONG BOOK』90
小川三郎「帰路」94  岩佐なを「色鉛筆」98
柄谷行人『意味という病』105  藤井晴美『電波、異臭、工学の枝』111
瀬尾育生「マージナル」116  宗近真一郎「「去勢」不全における消音、あるいは、揺動の行方」122
森口みや「余暇」129
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注文してから1週間程度でお手許にとどきます。



以下の本もオンデマンドで発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com



谷川俊太郎の『こころ』を読む
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分母は?(情報操作の仕方)

2018-02-24 09:09:12 | 自民党憲法改正草案を読む
分母は?(情報操作の仕方)
             自民党憲法改正草案を読む/番外180(情報の読み方)

 2018年02月24日の読売新聞(西部版・14版)の一面

労働時間誤り93事業所 厚労省調査

 という見出し。
 働き方改革(裁量労働制)法案の巡るデータ「捏造(偽造)」問題の続報。

 厚労省は(略)、不適切なデータ比較問題に関し、少なくとも93事業所でデータに誤りがあったことを明らかにした。厚労省は1万1575事業所のデータを精査しており、語数値はさらに増える可能性がある。

 この文章は「情報操作」のひとつである。
 「分母」がわからない。
 「少なくとも」と書いてあるから、「1万1575事業所」全部を調べ終わっていない段階だとわかる。
 「1万1575事業所」のうち何か所を調べたのか。
 「93事業所」を精査したところ、93事業所から「誤り」がみつかったというのなら、それはすべての事業所で「誤記」というか、情報操作がおこなわれていることになる。
 「分母」を公表できないのは、「分母」そのものに問題があるからだ。つまり、ほんの少ししか調査していないから、「〇〇事業所を精査したところ93事業所で誤記が見つかった」と言えないのでである。
 それを正確に明示しないかぎり、ひとは「1万1575事業所」のうちの「93事業所」と誤解してしまう。
 厚労省が「分母」を発表していないのなら発表していないで、報道機関はそのことを含めて記事にしないと、情報操作の片棒担ぎになる。

 さらに、「93事業所」のデータのうち、誤りは何か所あったのか。それぞれ「一か所」だったのか、それとも1事業所につい「百か所」あったのか。その「誤記」はどういう種類のものなのか。
 精密に調査すれば、膨大な問題点が出てくるだろう。
 厚労省にまかせるのではなく、第三者機関で調査しないといけないかもしれない。

 不都合がみつかるたびに、安倍政権は「資料は存在しない」(破棄した)という。だが、とういう政策でも「再点検」が必要なときがくる。再点検には資料が必要である。資料は「史料」でもある。それを残さない政権というのは、情報操作をしている証拠になる。森友学園、加計学園も同じである。「適正」なら「適正」であることを証明するために「資料」を残す。それが基本。




#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

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 「不思議なクニの憲法」の公式サイトは、
http://fushigina.jp/
上映日程や自主上映の申し込みができます。
憲法9条改正、これでいいのか 詩人が解明ー言葉の奥の危ない思想ー
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