詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(11)

2020-03-25 16:56:01 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

老残

失つたものが心では無限に大きくなる

 この一行は、二通りの読み方ができる。
 一つは「失つたもの」が「心のなかでは」無限に大きくなる。「失つたもの」とは、たとえば「女の名」であり、「一つの善意」である。その結果「自分の姿はますます小さくなつて遠ざかる」ということが起きる。自分が小さく感じられる。
 たぶん、そう読むのが普通なのだと思うが。
 私は別の読み方をしたい。
 「失つたものが心では」とつづけて読む。「心を失ったので」、そのために、と読む。そのとき何が大きくなるのか。すべてのものが大きくなる。「女の名」とか「一つの善意」ではなく、私のまわりにあるものすべてが無限に大きくなる。それは圧迫するというよりも、むしろ稀薄になる。「もの」も大きくなるが、「場(世界/宇宙)」そのものが大きくなる。「もの」がどれだけ大きくなろうが、「充実」はやってこない。
 つまり、虚無になる。こころを失い、虚無の大きさを知る、と読みたい。


*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
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私あてにメール(yachisyuso@gmail.com)でも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)
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感染者は急増している

2020-03-25 09:34:30 | 自民党憲法改正草案を読む
感染者は急増している
       自民党憲法改正草案を読む/番外324(情報の読み方)

 2020年03月25日の読売新聞(西部版・14版)の1面。

東京五輪1年延期/来夏までに開催/首相・IOC会長合意

 「来夏までに開催」の「までに」がわからない。「夏」を含むのか、含まないのか。会談のポイントには

2021年夏までに開催することで合意
「2020年」の大会名は引き継ぐ

 これを読むと、私の感覚では「2021年の夏」は含まない、という感じがする。本来の開催予定だった「7月24日」までに開催する。つまり「2020年7月24日から2021年7月23日までに開催する」となる。これなら「会期」を2週間ではなく1年間にしたと考えることができる。つまり、「2020年7月24日に開始したが、事情があって8月9日には終わることができなかったので、2021年7月23日までかかった」と言うことができる。
 こういうことは単なる詭弁、ごまかしだけれど、政治の世界はこういう詭弁・ごまかしに「面子」をかけているところがある。

 で。
 こんな「面子ごっこ」の影に隠れて、ひっそりと報道されているニュースの方が私には気になる。

 30面(社会面)に、

新型コロナ 新たに71人/福岡では3人 感染者 東京最多に

 感染騒動が起きてからすでに2か月近くになる。本来なら対策が軌道に乗り感染者が増え方が減っていいはずなのに増え始めた。
 最初に話題になった和歌山では、この日の感染増加は0、北海道は1人。こうなるのが普通だろう。
 そして、北海道、和歌山の「経験」を生かし、他県でも増加は抑制されるというのが常識的な「推測」になると思うが、東京では18人増えている。
 ちょっと振り返ると、23日は北海道3人増加、24日0、25日1人増加、和歌山はずっと増加0、東京は23日2人増加、24日16人増加、25日18人増加。
 どうして?
 どう考えても、これまで検査を抑制していたから感染者を発見できなかったということになると思う。
 東京五輪の今夏開催見込みが消えたから、五輪のことを気にせずに検査をしはじめた。その結果、感染者が増えはじめたとしか考えられない。(志村けんが、新型コロナウィルスに感染し、重篤というニュースがネットで流れていた。)これからもっと増えてくるだろう。
 東京は、通勤圏が広い。感染の拡大は確実に広がっている。ちなみに、新潟、石川、福井の感染者全員には、東京から帰って来たひとという共通項がある、という。(3月21日、情報速報ドットコム、https://johosokuhou.com/2020/03/21/27837/?fbclid=IwAR2TfMyOaJ7j4HZ4P-0Ql3etR0OynoqeRSQvaeXtDJ6ub8HCwhLWiTmw-54)たまたま東京へ用事で行って帰って来たひとが感染するなら、日々東京へ通っているひとがもっと多く感染していると考えるのが普通だろう。

 一方、海外の感染者の変化はどうか。気になるのが台湾である。台湾は長い間感染者が「45人(死者1人)」でとまっていたが、欧米を含む世界の急増にあわせるかのように、25日の集計では感染216人、死者2人。海外から渡航してきた人の感染者が増えているのだろう。(読売新聞の一覧表では詳細がわからない。)台湾に限らず、海外では感染者、死者が増えている。増え方が減っている韓国でも増えていることに変わりはない。

 そういうことを考えると、気になるのが「一斉休校の中止(学校再開)」の動きである。「一斉休校」に入ったとき、感染者が増えていないのに、どうして?という疑問が起きた。いま、「学校再開」にむけて動くのはなぜ? 今度は、そういう疑問が起きるはずなのに、なぜか、あまり聞かない。
 どうして?
 「一斉休校」のとき、こまることのひとつに、子供のめんどうを見るには仕事を休まないといけない、というものがあった。親が困る。しかし、金もうけのことしか考えない虻にはもっと困ることが起きたのだ。休業補償の問題が発生するし、仕事が停滞するという問題もおきる。
 いま「学校再開」に踏み切るのは、きっと、このことが関係している。休業補償に金をつかいたくない。働いてもらわないと経済が停滞する。子供のために仕事を休んでいるに復帰してもらうには、学校を再開するしかない、ということだろう。
 まったくいい加減であるというか、「経済」のことしか考えないのか、とあきれかえる。東京五輪の中止(延期)で、五輪で入ってくるはずだった金が入ってこなくなる。だから、働いてもらわないと困る、ということだろう。五輪がないんだから、病気になろうがどうしようが、国民は働け働け、ということだ。
 国民をばかにしていないか。
 五輪の夏開催はむり、というのはずいぶん前から予測がついたことだ。絶対むりと確信して、先に「学校再開」を打ち出したのだ。五輪中止のあと「学校再開」を打ち出すと、五輪さえ中止になるのに、なぜ、いま「学校再開」という声がおきるはずだと予測して、先に「学校再開」といったのだ。
 きっと、感染が拡大し、どうしようもなくて、もう一度「一斉休校」というに決まっている。
 初期からきちんと検査し、対応していれば、韓国のように被害をかなり抑制できたのに、感染者が増えては五輪が開けない(金がもうからない)というので、検査さえしなかった。その「つけ」がこれから、爆発する。
 安倍の五輪開催のとき首相でいたいという欲望(もっともっと金もうけがしたいという欲望)のために、とんでもないことが起きるのだ。
 五輪は「延期」ではなく「中止」しないといけない。
 実際、今後の日本の感染者(死者)の状況次第では、たとえ感染がおさまったとしても「中止(返上)」を要求する声が起きるだろうと思う。







#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

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