詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(19)

2020-04-02 09:58:39 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

それだけのものだが

ぼくは籠の中に見知らぬ花をいれる
息を切らしている小さな花を
あざむかれた昨日の花を

 「見知らぬ花」。しかし、それが「息を切らしている」ことがわかる。花の肉体に、嵯峨の肉体が同調する。
 道にうずくまる人がいる。そうすると「腹が痛いのだろう」と感じる。腹が痛いとき、腹を抱えてうずくまった経験が肉体の中に残っているからである。おぼえているからである。肉体は体験したことを忘れない。
 「息を切らしている」は「あざむかれた」ということばに変わる。「息を切らす」には原因がある。花の場合は「走る」ということはない。肉体を激しく動かすわけではない。しかし、肉体が動かないときでも、意識、感情は動く。動き回り、動き疲れて、「息を切らす」。
 花は「女」であるかもしれないし、未熟な「少年」(嵯峨の記憶)であるかもしれない。




*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
定価の下の「注文して製本する」のボタンを押すと購入の手続きが始まります。
私あてにメール(yachisyuso@gmail.com)でも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)
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なぜいま「医療崩壊」を言うのか。

2020-04-02 09:08:12 | 自民党憲法改正草案を読む
なぜいま「医療崩壊」を言うのか。
       自民党憲法改正草案を読む/番外332(情報の読み方)

 
 2020年04月02日の読売新聞(西部版・14版)の一面トップ。新型コロナ関連ニュース。

大都市の医療崩壊 懸念/専門家会議 5都府県、切迫

 これはその通りなのだろうが、なぜ、いま、それを言うのか。
 中国・武漢が都市封鎖したとき、さらにはクルーズ船が入港したとき、すでに「医療崩壊」が起きることは懸念されていた。多くの人が指摘している。それから2か月たっている。その間、専門家会議と安倍は何をしていたのか。
①中国のように臨時に病院をつくることを検討したか。そのための土地を確保したか。
②受診システムが混乱しないように、一般の患者と、新型コロナ受診(検診)を分離するシステムをつくったか。
 何もしていないのではないか。
 さらに言えば、何度も書くが、「医療崩壊」ではなく、国民の「健康崩壊」を心配したことがあるのか。
 医療というのは、「予防」を別にすれば、いつでも「後出しじゃんけん」である。国民が「健康崩壊=病気」になって、それから病院へ行く。国民が「病気=健康崩壊」を起こさない限り、国民は病院へ行かない。患者が殺到することはない。国民がいっさい病気をしなかったら、病院経営が成り立たないという「病院崩壊」が起きるのだ。病院が倒産するのだ。国民の病気を治療することで金を稼いでいる病院が「患者が殺到すると医療崩壊を起こす」と心配するのは、とても奇妙だ。殺到する患者を受け入れる準備をしておけば、それは「収入のチャンス」だろう。「医療崩壊」ということばは「テキトウに患者を治療して、自分の暮らしさえ安定していればいい(暮らしに必要な金さえもうかればそれでいい)」という発想ではないか。どうして、「いまこそ医療の底力をみせるときだ。一致団結してがんばろう。がんばるためのシステムをつくろう。そういうシステムを国に要求しよう」という発想を医療関係者はしないのか。
 「医療崩壊」ということばを読むたびに、私は、腹が立ってしようがない。国民の「健康破壊=死」は医療にとってはどうでもいいのか。国民は死んでいくのに、少しでも生きていたいという望みをかけ、治療を受けるのだ。ことばは悪いが、どうせいつかは死ぬのに治療を受けるのだ。何のために? 生きたいからだ。苦しい思いを少しでもしたくないからだ。その気持ちを「医療崩壊」ということばをつかう人たちは考えたことがあるのか。患者が殺到しては、自分(医師、看護師)が病気になり、死んでしまうと不安になるなら、そうならないシステムを作ればいいではないか。なぜ、それをつくろうとせず、「医療崩壊が起きる」と心配するのか。やっていることが、まったく逆だろう。
 しかし、それにしても。
 いま心配されている「医療崩壊」が起きるとしたら、それは何が原因か。医療システムが脆弱だという理由だけか。そうではない。繰り返しになるが、医療はいつでも「後出しじゃんけん」である。患者が発生して、はじめて医療が動き始める。
 新型コロナの場合、初動はどうだったか。クルーズ船を例に言えば、「全員検査」をしていない。船内での「隔離」を徹底していない。このため感染が広がり、こらに「陰性」と確認されていない人が下船し、市中に広がった。そこにいちばんの問題がある。いったん市中に散らばってしまえば、感染経路がわからない人が増える。「封じ込め(隔離)」が困難になる。こういうことは、医療関係者ならすぐに想像できるだろうし、私のような素人でも想像してしまう。
 一面には、感染者が「国内 新たに267人確認」されたというニュースが載っている。そこにこんな記事がある。

①都内の66人のうち、感染経路が特定できていない人は6割近い38人に上った。
②66人のうち40歳代までの感染者が45人と約7割を占めた。

 初動から、きちんと「全員検査」を実施していれば「感染経路が特定できない」というひとの割合は、もっと少ないだろう。「感染経路」が特定でき、経路の周辺をきちんと検査していれば「40歳代以下が7割」ということも起きなかっただろう。クルーズ船の乗客に「40歳代以下」は多くなかったはずである。少なくとも「7割」を40歳代以下が占めるというとはなかっただろう。行動範囲が広い40歳代以下が感染者になれば、当然、感染は拡大する。拡大スピードも速くなる。
 これからどうなるのかわからないが、安倍は少なくとも「初動の防疫体制が不備だった」ということを認め、国民に謝罪した上で、今後の政策を進めるべきだろう。「ぼくちゃん、知らない。ぼくちゃん、何もしていない」という姿勢ではだめなのだ。何が間違っていたか、それを語らないことには、国民の協力などあるはずがない。五輪で「ぼくちゃん、いちばん偉い。ぼくちゃんが首相なんだ」といいたい安倍の欲望のために、日本も世界も大混乱に陥っているのだ。その自覚が安倍には完全に欠けている。
 いま必要なのは、何が間違っていたかを明確にし、それを修正するためにどうするか、それを語ることだ。「医療崩壊が心配」などと言っているときではない。イタリアやスペインは「医療崩壊が心配」などとは言わず、医療崩壊を承知で必死になって医療をつづけている。そのことを見習うべきだ。
 安倍は医療現場に対して、「新型コロナが終息したらきちんと保障するから、なんとか医療は現場を放棄せずにがんばってほしい、そのために政府はこういうことをする」というべきときなのだ。










#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

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