「菅1強」と読売新聞のゴマのすり方
自民党憲法改正草案を読む/番外388(情報の読み方)
2020年09月04日の読売新聞(西部版・14版)の1面。自民党総裁選の行方を予測する記事。予測するといっても、すでに多くの派閥(国会議員)が菅支持を表明しており、いま「菅総裁」に疑問を持っている国民などいないだろう。だから、
この見出しが主張したいのは、主見出しの「菅氏、議員票7割固める」ではない。2行目の見出し「全体票の過半数」である。
読売新聞は、きのう09月04日の1面で、
という記事を書いていた。きょうの記事は、その「続報」なのである。ただし、「続報」と言っても「31府県 得票応じ配分」の部分を明確にしているわけではない。つまり、「予備選」で石破、岸田、菅が何票獲得し、その結果として菅の得票がどうなるかを分析しているわけではない。
きょうの1面の「前文」にこう書いてある。少し長いが引用する。
要約すると、総裁選の「総票数は535票である。過半数は268票。菅はすでに271票を固めているから、都道府県連の141票がだれに流れても、菅の当選は動かない」。
しかし、こんなことは菅が271票を固めた段階で(多くの派閥が支持した段階で)わかりきったことである。なぜわざわざ「全体票の過半数」を1面の見出しに掲げる必要があるのか。
ウェブ版では「独自」と明記している。この記事が「特ダネ」であることをアピールしているが、こんな単純な「計算」と「答え」が、いまごろになって書かれる理由がわからない。まだ各派閥の支持がかたまらず揺れているときなら、都道府県連票の何%を固めたから「過半数」に達しそうという「予測」を「独自」の判断として提示できるが、きょうの「予測」は私だってできる。それもきょうではなく、派閥の支持が固まった段階で書ける。
だから、考えてみなければならないのは、ここからである。
なぜ、読売新聞は、こんなわかりきったことをこの日のいちばん重要なニュース(1面のトップ記事)と判断したのか。
簡単である。
都道府県連票への「圧力」をかけるためである。3面に、
という見出し。
菅を支持しないと、石破、岸田のように「冷や飯」を食うことになるぞ、と脅しているのである。菅を支持しろ、と間接的に言っているのである。菅批判をすると、金をまわしてもらえなくなると考えたことはあるか、と脅しているのである。
この国の政治がどうなるか、ではなく、菅を中心として再編成される(?)権力構造がどうなるか、地方の議員は考えなさいよ、と「暗示」しているのだ。
地方では石破人気が高いといわれている。石破の「落選」はすでに決まっているが、その石破が地方票でトップだと困るのだ。菅の「面子」がつぶれてしまう。そうならないようにするために、読売新聞は「いまさら石破に投票したって、意味がないよ」と言っているのだ。わかりきっているのに「死に票」を投票するより、菅に投票しろと言っているのだ。
この主張は、たしかに「独自」である。ジャーナリズムは、そういう「圧力発言」をすべきではない。
しかしねえ。
政党内の権力闘争は別にして、ジャーナリズムさえが、突然「菅1強」を受け入れ「よいしょ合戦」をはじめたことに驚く。ここで「よいしょ」しておかないと、切り捨てられると感じているのか。
必死さの度合いが「安倍1強」のときよりも激しいのは、菅がどこまで支配するかつかみきれていないからだろう。
「マスコミ」ということばのなかには「マス」はあるけれど「個」がない。しかし、どんなことばも「個」が出発。「個」を捨て去って「マス」であることを追いかけるとき、それは「言論」とは言えない。
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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
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#安倍を許さない #憲法改正 #読売新聞
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自民党憲法改正草案を読む/番外388(情報の読み方)
2020年09月04日の読売新聞(西部版・14版)の1面。自民党総裁選の行方を予測する記事。予測するといっても、すでに多くの派閥(国会議員)が菅支持を表明しており、いま「菅総裁」に疑問を持っている国民などいないだろう。だから、
菅氏、議員票7割固める/本紙調査 全体票の過半数
この見出しが主張したいのは、主見出しの「菅氏、議員票7割固める」ではない。2行目の見出し「全体票の過半数」である。
読売新聞は、きのう09月04日の1面で、
全都道府県で予備選/31府県 得票応じ配分
という記事を書いていた。きょうの記事は、その「続報」なのである。ただし、「続報」と言っても「31府県 得票応じ配分」の部分を明確にしているわけではない。つまり、「予備選」で石破、岸田、菅が何票獲得し、その結果として菅の得票がどうなるかを分析しているわけではない。
きょうの1面の「前文」にこう書いてある。少し長いが引用する。
読売新聞社は、自民党総裁選(8日告示―14日投開票)で、党所属国会議員(394人)の支持動向を調査した。菅義偉官房長官(71)が議員票の約7割を固め、岸田文雄政調会長(63)、石破茂・元幹事長(63)を大きく引き離している。支持議員数は都道府県連票を含めた全体の票数の過半数を上回っており、菅氏選出の流れが強まっている。
総裁選は国会議員394票と、都道府県連代表141票の合計535票で争う。過半数の268票以上を獲得した候補が新総裁に選出される。
調査では、衆参両院の議長を除く同党国会議員394人のうち、96%にあたる378人の意向を聞き取りなどにより確認。4日夜現在、菅氏を支持することが明確な議員は、党所属議員の69%にあたる271人に達した。
要約すると、総裁選の「総票数は535票である。過半数は268票。菅はすでに271票を固めているから、都道府県連の141票がだれに流れても、菅の当選は動かない」。
しかし、こんなことは菅が271票を固めた段階で(多くの派閥が支持した段階で)わかりきったことである。なぜわざわざ「全体票の過半数」を1面の見出しに掲げる必要があるのか。
ウェブ版では「独自」と明記している。この記事が「特ダネ」であることをアピールしているが、こんな単純な「計算」と「答え」が、いまごろになって書かれる理由がわからない。まだ各派閥の支持がかたまらず揺れているときなら、都道府県連票の何%を固めたから「過半数」に達しそうという「予測」を「独自」の判断として提示できるが、きょうの「予測」は私だってできる。それもきょうではなく、派閥の支持が固まった段階で書ける。
だから、考えてみなければならないのは、ここからである。
なぜ、読売新聞は、こんなわかりきったことをこの日のいちばん重要なニュース(1面のトップ記事)と判断したのか。
簡単である。
都道府県連票への「圧力」をかけるためである。3面に、
3氏 地方票争奪選/菅氏「党員」も勝利狙う/岸田・石破氏「3位回避」
という見出し。
菅を支持しないと、石破、岸田のように「冷や飯」を食うことになるぞ、と脅しているのである。菅を支持しろ、と間接的に言っているのである。菅批判をすると、金をまわしてもらえなくなると考えたことはあるか、と脅しているのである。
この国の政治がどうなるか、ではなく、菅を中心として再編成される(?)権力構造がどうなるか、地方の議員は考えなさいよ、と「暗示」しているのだ。
地方では石破人気が高いといわれている。石破の「落選」はすでに決まっているが、その石破が地方票でトップだと困るのだ。菅の「面子」がつぶれてしまう。そうならないようにするために、読売新聞は「いまさら石破に投票したって、意味がないよ」と言っているのだ。わかりきっているのに「死に票」を投票するより、菅に投票しろと言っているのだ。
この主張は、たしかに「独自」である。ジャーナリズムは、そういう「圧力発言」をすべきではない。
しかしねえ。
政党内の権力闘争は別にして、ジャーナリズムさえが、突然「菅1強」を受け入れ「よいしょ合戦」をはじめたことに驚く。ここで「よいしょ」しておかないと、切り捨てられると感じているのか。
必死さの度合いが「安倍1強」のときよりも激しいのは、菅がどこまで支配するかつかみきれていないからだろう。
「マスコミ」ということばのなかには「マス」はあるけれど「個」がない。しかし、どんなことばも「個」が出発。「個」を捨て去って「マス」であることを追いかけるとき、それは「言論」とは言えない。
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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
#安倍を許さない #憲法改正 #読売新聞
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