詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「アリバイづくり」をはじめた読売新聞。

2020-09-04 09:07:44 | 自民党憲法改正草案を読む
読売新聞のずるさ(社説の書き方)
   自民党憲法改正草案を読む/番外388(情報の読み方)

 すでに「決定済み」の自民党総裁選。これを、どう報道するか。2020年09月04日の読売新聞(西部版・14版)は、非常に「ずるがしこい」報道の仕方をしている。
 1面に、

全都道府県で予備選/31府県 得票応じ配分/3陣営本格始動

 と全国の県連の動き。どうして党員が投票できないのだ、という批判が高まっている。それに対する動きを紹介することで、少し「ガス抜き」という感じ。読売新聞は、党員の不満にも耳を傾けています、というポーズ。
 2面に、

コロナ・経済に力点

 という見出しで、石破、岸田、菅の「主張」を紹介している。「コロナ対策」「外交」「憲法」の三項目を一覧表にしている。
 でも、「安全保障」がない。安倍の「辞任会見」以降、ぜんぜんかわりばえのしない「コロナ対策」よりも「安全保障(敵基地攻撃システム確立)」の方が話題になっているのに。
 さらに、菅は「安倍の政策を継承する」と主張しているが、その「継承」のなかには、公文書改竄も含まれるのか、という問題があるのに、そのことについては書いていない。石破は、安倍政権下で起きた問題解明に取り組むと言っているが、この問題を「争点」として取り上げていない。一種の「情報操作」である。問題を「コロナ」だけに向けようとしている。
 と、思ったら。
 「社説」に「政策の継承だけでは物足りぬ」という見出し。

 長期政権では、公文書の改ざんのほか、記録の廃棄や杜撰(ずさん)な扱いが次々に発覚した。国民に不信感が広がったのは事実だ。
 菅氏がいずれの案件も「決着済み」で済ませているのは疑問である。仮に新首相となっても、政権への信頼が揺らぎかねない。政策決定や文書管理のあり方を検証し、改善を図る責任があろう。

 一応、菅に注文をつけている。
 でも、この「アリバイづくり」がずるいのだ。
 「国民に不信感が広がったのは事実だ」「政策決定や文書管理のあり方を検証し、改善を図る責任があろう」と「菅総裁」に注文をつけるのはいいけれど、石破、岸田がこの問題にどう発言しているのか、それを明確にしないといけない。肝心の点を隠したまま、菅にだけ注文をつけることで、読売新聞はこの問題を忘れていませんとアピールしている。
 でも「公文書問題」が重要だと考えるならば、石破、岸田、菅がどういう姿勢を打ち出しているか、それを鮮明にし、総裁選びの判断材料として提供すべきなのだ。すでに菅で決まっているから、菅の「大勝利」に傷がつくようなことはしない。でも、「指摘だけはしました」というための社説だ。
 「社説」は紙面の重要な記事だが、残念ながら、社説を読む人はそんなに多くない。そんな読者の目をひかないところでアリバイづくりをしてどうするのだ。「社説できちんと指摘している」というのは、安倍が「改憲は公約に書いてある。改憲は国民に支持された」と選挙で勝つたびに言うのに似ている。「改憲」を公約のトップに掲げ、それを争点にして来なかったのに、選挙が終わればそれが争点だったと言い張る。読売新聞も、菅総理誕生後、公文書問題が再燃したときは「社説で批判してきた」というつもりなのだ。

 安倍が批判されてきたのは、コロナ問題だけではない。コロナは突然発生した「感染症」であり、その対策がうまくいかないとしても、ある程度仕方がないものがある。各国とも手さぐりしている。アメリカやブラジル、インドのように感染が爆発しているところもある。それは「行政」だけの力ではどうすることもできない部分もある。しかし、公文書の管理はそうではない。行政で完全に支配できる問題である。すべてが「人為」の問題である。
 安倍はコロナを利用して、「公文書問題」を隠蔽しようとさえしている。その政策を菅は引き継ごうとしている。それは簡単に言い直せば、安倍が逮捕されないようにするということだ。安倍を逮捕させないための政権づくりが進んでいる。こういう動きをジャーナリズムはどこまで追及できるかが問われている。
 「政策決定や文書管理のあり方を検証し、改善を図る責任があろう、と指摘した」。だから「読売新聞は責任を果たした」という「逃げ道」をいまからつくっていて、いったいどうするつもりなのだ。これを「ずるがしこい」と言わずに、なんと言えばいいのだろうか。








*

「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
 

#安倍を許さない #憲法改正 #読売新聞



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冨岡悦子「文庫本」

2020-09-04 08:10:44 | 詩(雑誌・同人誌)
冨岡悦子「文庫本」(「タンブルウィード」8、2020年08月25日発行)

 冨岡悦子「文庫本」。簡潔な詩だ。

書き込みのある
佐藤春夫詩集の文庫本には
ところどころ茶色いシミがある

喉の奥を押して
夏至の雨のように
声がよみがえる

ふといずこよりともなく 君が声す
もういちど聞きたくて
耳を澄ますと
自分がどこにいるかわからなくなる

百合の花の匂ひのごとく 君が声す
花びらは一度ひらくと
閉じていたころの自分に
二度ともどれない

 書き出しの「書き込みのある」がおもしろい。「書き込み」は過去の自分がしたものである。それは、そのとき、瞬間的に開いた冨岡の「花びら」である。もし、冨岡が百合の花ならば。
 そこには「声」がある。佐藤の詩を読むことで誘い出された冨岡の声である。
 その声は、聞こえそうで聞こえない。聞こえなさそうで聞こえる。だから耳を澄ます。そうして自分がわからなくなる。それは、悲しみか。悲しみと読んでしまえば「抒情詩」になる。
 それはそれでいいのだが。
 この詩には、何か「抒情」におぼれない「自制」が動いている。
 どの連にも「過去形」がない。動詞はすべて「現在形」である。「過去」を思い出しながらも「いま」をしっかり生きている、というところに「自制」の根拠のようななものがあるのかもしれない。








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