詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

菅のめちゃくちゃな論理。

2020-10-09 19:00:05 | 自民党憲法改正草案を読む
学術会議問題「会長が会いたいなら会う」 菅首相
という見出しの、朝日デジタルの記事。
https://www.asahi.com/articles/ASNB95V9XNB9ULFA020.html?fbclid=IwAR3R8xvN5p7ysIPyX-SIz5T8PYKvgyUa9uD02UnHET7qNV8v86hBJ-6mWYM
とんでもないことを菅が主張している。
次の部分だ。


「首相が任命を決裁したのは9月28日で、6人はその時点ですでに除外され、99人だったとも説明した。」
↑↑↑↑↑
早くも始まった「ぼくちゃん知らない」の継承。
では、だれが6人を排除したのか。
責任を他人に押しつける。
しかし、「ぼくちゃん知らない」なら、「排除したのは間違い、ぼくちゃんが責任を持って任命する」と言えるはず。
それにさあ。
いままで言ってきた「俯瞰的、総合的判断」って、いったい誰の判断だったのか。
「首相(内閣総理大臣)が任命する」と書いてあるのに、「ぼくちゃんの知らないだれかの判断を追認することが、任命する」になるのか。
いったい、「最高権力者」は誰なのか。
言えば言うほど論理が破綻する。
この問題は、さらに「文書管理」の問題も引き起こすぞ。
学術会議は105人推薦した。菅は99人しか見ていない。
だれが学術会議の文書(推薦名簿)を改竄したのか。
改竄者の責任問題に発展する。
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バーツラフ・マルホウル監督「異端の鳥」(★★★)

2020-10-09 15:16:00 | 映画
バーツラフ・マルホウル監督「異端の鳥」(★★★)

監督 バーツラフ・マルホウル 出演 ペトル・コラール(2020年10月09日、キノシネマ天神、スクリーン3)

 これは語りづらい映画である。ということは、映画そのものである、ことばにするとつまらない、ということなのだが。
 ホロコーストを逃れた少年が体験する「日常」を描いている。しかし、「日常」なのに「瞬間」でしかない。「いま」しかない。過去もなければ、未来もない。過去に経験したことが何の役にも立たないし、これから先、何が起こるかわからない。
 唯一、これから起きることがわかるのは、少年がナイフを拾った場所を教えに行くシーン。そこでは少年は「うそ」をつく。「うそ」というのは、かならず「計画」を含んでいる。つまり、そこには「未来」が予想されている。予想されている「未来」のために「うそ」をつく。
 このシーンが、いわゆる「普通の映画」らしい唯一の部分。そして、ひとつのクライマックスでもあるのだけれど、このわかりやすいシーンだけが、なんといえばいいのか、興ざめするのである。主人公に感情移入して、「やったね」と言ってしまうのだが、つまり共感してしまうのだが、その共感がこの映画を壊してしまう。このシーンがなければ、私は★を5個にした。マイナス1ではすまない、マイナス2という感じで、よくないのである。
 このほかのシーンは、少年には、何が起きているのか、さっぱりわからない。どうすれば生き延びることができるのか、「計画」が立てられない。場当たりで、反応するしかない。
 女とのセックスのシーンがそれを端的に語っている。女は少年にクリトリスを舐めさせ、快感にふける。次にセックスに誘う。少年は慣れていないから(まだ10代の前半、もしかしたら10歳以下かもしれないので、あたりまえだけれど)、あっという間に射精する。女は怒りだす。さらには、山羊とセックスして見せる(そういう素振りをする)。こんなことは、少年には絶対に想像できない。わからないことが、次々に起こる。目の前で「他人の行動」として起きるだけではなく、自分の「肉体」そのものが、そういう「現場」に誘い出されてしまう。
 少年は最終的に生き延び、父と再会するのだが、あまりに過酷なことを体験しているので、どうしても「未来」がわからない。父親と少年は一緒にバスに乗って我が家へ帰るのだが、そのとき父親は「未来」がわかっているから、安心して思わず眠ってしまう。けれど、少年は「眠り」に身をまかせることができない。父親の手に刻まれた数字を見て、自分にはそれがないことを思う。そして、自分の名前を、バスの窓に書く。「いま」自分は「ここにいる」と。「いま」「ここ」を「名前」で結びつけて、生きていくしかないのだ。
 映画のタイトルは、エピソードのひとつからとってる。野鳥の羽にペンキを塗って空に放つ。すると、仲間の鳥が「色違い」の鳥を見つけて、一斉に攻撃をし始める。小鳥は力尽きて墜落し、死んでしまう。少年はかろうじて「異端の鳥」のように死なずに生きている。しかし、それは偶然である。
 しかし。
 あまりの残虐さ(陰湿さ)に、耐えられない人がいるかもしれない。私は怖いシーン、血が飛び散るシーン、残酷なシーンは大好きな人間だが、この映画には、ちょっとまいった。どのシーンも、それがストーリーとなって動いていくのではなく、ただ「いま」としてそこにあるだけだからだ。普通の映画なら、このシーンは残酷だけれど、ストーリーをこんなふうに「説明」している、と言えるのに、この映画では、ただ「残虐」なだけでからである。









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「勧告なし」が特ダネ?

2020-10-09 07:59:39 | 自民党憲法改正草案を読む
「勧告なし」が特ダネ?

   自民党憲法改正草案を読む/番外403(情報の読み方)


 「日本学術会議」の問題の続報が2020年10月09日の読売新聞(西部版・14版)は1面に掲載されている。デジタル版では「独自」というマークがついている。「特ダネ」らしい。その見出しと記事。

学術会議見直し検討/政府「勧告10年なし」疑問視

 政府が、日本学術会議を行政改革の対象とし、運営や組織について見直しの検討に着手したことがわかった。年間約10億円の国費で運営されているにもかかわらず、法律に基づく政府への勧告が2010年8月以来、行われていないことなどから、河野行政・規制改革相の下、妥当性を検証する。

 どうして、これが「特ダネ」なのか。どの部分が「特ダネ」なのか。
 記事の末尾には、こう書いてある。

 政府は、自民党と連携して見直しを進める方針だ。河野氏は8日、自民党の下村政調会長と会談し、学術会議のあり方の検討で協力することを確認した。下村氏は7日、学術会議のあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)を党内に設置すると発表している。
 これに関連し、内閣府の三ツ林裕巳副大臣は8日の参院内閣委員会で、学術会議のあり方を議論するよう求める山谷えり子氏(自民党)の質問に対し、「しっかりと受け止め、対応していきたい」と語った。

 「河野氏は8日、自民党の下村政調会長と会談し、学術会議のあり方の検討で協力することを確認した」は公表されているかどうかわからない。その場合は、これが「独自(特ダネ)」ということになるかもしれない。しかし、「下村氏は7日、学術会議のあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)を党内に設置すると発表している」とあるから、これは他のジャーナリズムで報道されているかどうかは別問題として、「特ダネ」にはならないだろう。参院内閣委員会での三林、山谷のやりとりも公開されているから「特ダネ」にはならないだろう。
 そうすると、特ダネは「学術会議見直し検討」ではなく、学術会議が政府に対して10年間「勧告」をしていないことになる。(「見直し検討」は7日のニュースであり、8日のニュースではない。)
 でも。
 私は、見出しを読んだときも、思わず笑いだしてしまったのだが、勧告っていったい何?

 「勧告」というのは「こうしなさい/これをしてはいけない」というものである。普通は「勧告なし」が問題なのではなく、「勧告を受ける」ということが問題である。あらゆる組織(人間)にとって、「勧告を受けない/勧告なし」が「理想」である。よく新聞で見かける「公取委の勧告」「人事委の勧告」「労基局の勧告」というのは、すべて「勧告を受ける側」に問題があっておこなわれるもの。
 こういう勧告をすべきだったのに、その勧告をしていない、あるいは、政府が勧告を求めたが勧告しなかった、という指摘でないかぎり、勧告が10年間なかったという批判は意味を持たない。
 そのことを考えれば「勧告なし(勧告を受けなかった)」は政府が自慢していいことであって、勧告しなかった方が「仕事をしていない」という「証拠」はならない。「勧告なし」を「疑問視」する必要はない。少なくとも、政府側が、それ「疑問視」するというのは「論理的」におかしい。
 読売新聞は、いったいこの10年にどういう勧告をすべきだったと考えているのか。あるいは、政府がどんな勧告を求めていたと把握しているのか。

 国民が、「学術会議は勧告すべきなのに、何もしていない」という批判をするのならわかるが、政府が批判することではない。
 これは、こんな例を考えるといい。
 賭けマージャンが発覚した黒川が退職する。その黒川に退職金が支払われる。これはおかしいんじゃないかと国民が批判する。それに対して政府は「問題ない」という。いろいろな有識者の団体も批判している。しかし政府は「問題ない」という。
 批判を受けても問題がないと言い張る政府が、学術会議が何の勧告もしないと批判するというのおかしいだろう。

 どうして、こんな「記事」と「見出し」が成立するのか。
 根深い問題がここにある。
 この「10年間勧告なし」という情報源である。誰が調べた?
 普通、こういう「特ダネ」記事の場合は、「読売新聞が情報公開請求し調べた結果、明らかになった」という「ことわり」が書かれる。最低限「読売新聞の調べによると」という表現を含む。しかし、この記事には、それがない。
 誰が調べた? 誰の情報?
 新聞ではよく「政府筋によると(政府関係者によると)」というような「ことわり」も書かれている。その表現もない。
 これは何を意味するだろうか。
 私の「推測」だから、間違っているかもしれないが、このニュースは「政府筋(政府関係者)」からの「情報」をそのまま書いているのである。しかし、ここで「政府筋(政府関係者)によると」と書いてしまうと、政府の言われるがままにニュースを書いていることがあからさまになるので、それを隠している。
 学術会議が仕事をしてこなかったを証明するために、なんと、「10年間勧告してこなかった」と言ってしまったのだ。「しなかった」と言えば「仕事をしなかった」になると通じると国民に訴えることができると思ったのだ。
 「勧告」というものが、何か「改善」求められるものであるということ、「勧告を受ける側には問題がある」ということを忘れてしまっている。

 なぜ、こんなおかしな「論理」が「特ダネ」のなかで横行しているのか。
 インターネットでは、菅擁護の一環として学術会議批判が高まっている。それに便乗しているのだ。仕事をしていない、無用の存在と言いたいのだ。しかし、どうやったら「無用」を印象づけられるかを考えたとき、なんと「勧告10年なし」というところにたどりついてしまった。後先を考えずに「勧告を10年もしていない、仕事をしていない」と「政府筋」が読売新聞の記者に情報提供したのだ。記者は記者で、それを鵜呑みにした。10年間も政府に勧告を出していない、仕事をしていないじゃないか。
 これはね。
 くりかえすが、「10年間勧告なし」は、政府を批判し続けている人が、政府を非難しない学術会議は存在意義がない、というときの論理なのだ。学術会議は政府に勧告すべきなのに、何もしていな、そんものに金を出すなというときの論理なのだ。
 これは政府が学術会議の存在を見直すときの「根拠」には絶対にならない。ほんとうの「根拠」は別のところにある。それを隠すために、思わず「10年勧告なし」を書いてしまい、「墓穴」を掘っているのだ。

 私は、きのう夜が遅く、眠たかったのだが、読んだ瞬間にお笑いして、目がすっかり覚めてしまった。
 こんな情報をリークする方も、それをそのまま書いてしまう方も、それがどういうことを意味するか考えることもできないまま新聞に掲載する方も、ほんとうにどうかしている。
 このひとたちはみんな「日本語」を知らないのだろう。






*

「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
 

#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞



*

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https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

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