惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

唐茄子屋

2015-09-07 21:00:03 | 演芸

 また、お天気が良くない。雨が降ったりやんだりの一日。
 やみ間にトマトやスイカの残骸をシュレッダーにかけて片付けました。できれば、白菜を植えるコンテナの土を調合したいのですが、雨に濡れてて具合がよくありません。

 お日和が期待できるのは、予報によれば、金曜以降らしい。苗はまずまず順調に育っているし、調合用の赤玉土も堆肥も用意できているんですけど……。

 夕食後の演芸タイムは、5代目古今亭志ん生「唐茄子屋」。

 「唐茄子屋政談」の前半です。吉原通いにうつつをぬかした若旦那が勘当になり、路頭に迷ってしまう。川に飛び込んで死のうとするところを、叔父さんに助けられるが、叔父さん、助けたのが若旦那とわかると、「助けるんじゃなかった。死んじまえ」。
 といっても、見捨てるわけにもいかず、家に連れ帰って、飯を食わせ、ひと晩、寝かせてやる。
 翌朝、天秤竿の前後の駕篭いっぱいの唐茄子(カボチャ)を売って来いと命じる。嫌がってた若旦那だが、しょうことなしにひょろひょろと道を歩いてゆくと……。

 叔父さんは若旦那に愛想をつかしているようで、心配もしている。このあたりの口調がしみじみと可笑しい。唐茄子を担ぐ際の腰の使い方を教えるところを念入りにやるのは、志ん生師匠の演出でしょうか。こういう、どうでもよさそうなところを微に入り細を穿つように描写するのが落語の真骨頂。
 途中、あれこれあって、若旦那が売れ残った唐茄子2個を担いで吉原の近くへ行き、1年前の花魁とのやりとりを思い出しながら、申し訳程度に「唐茄子屋でござい~」と小声でやるのも、情けなさとバカバカしさと可笑しみとを誘う。不思議な感情を醸し出すものです。

 今日、聴いた噺はこのあたりで終わりになっています。
 後半の、母子を助ける人情噺までやると1時間近くかかるんですね。それほど内容が濃い噺ではないのにたっぷり聴かせられるのは、やはり芸の深みといいましょうか。変わってゆく場面と、人の気持ちの変化が楽しめる一席だと思いました。


千夜・一夜

2015-08-21 20:48:09 | 演芸

 日中、2度ほど通り雨がありました。そのせいもあってか、気温はさほど上がらず。30度には達しませんでした。

 夕方、市民プールに行くと「気温29℃、水温29℃」という表示。お客さんもかなり少なめです。
 とはいっても、水に入ると寒いとは感じません。普段どおりに泳いで、計700メートル。
 明日はこの周辺で花火大会があるため、土・日と市民プールはお休み。もう少し長く泳いでもよかったかな。

 夕食後の演芸タイム。今日は漫才で青空千夜一夜「子供の教育」。

 漫才には詳しくないのですが、東京の漫才はこの2人の師匠であるコロンピアトップ・ライトがいて、リーガル天才・秀才、女性同士の内海桂子・好江、夫婦でやってた春日三球・照代……。関西に比べると見劣りしていたのをいきなりひっくり返したのがツービートだったでしょうか。

 千夜・一夜さんはノッポの一夜さんが、チビでメガネの千夜さんをコケにしながら噺を転がしてゆく。社会風刺というか、ダメな世間に突っ込みをいれるところに面白味があるように思います。今の演芸で社会風刺をやっている人って、誰だろう?
 今日、聴いたネタでは、ご飯の炊き方で「初めチョロチョロ、中パッパ。婆ぁ死んでも蓋とるな」などというところに、ビートたけしの先駆けめいたものを感じました。
 漫才は時代とともに移り変わるもので、落語のように古典的な演目はないんですねぇ。


よかちょろ

2015-08-18 21:06:00 | 演芸

 太平洋高気圧と日本海の移動性高気圧が押し合いをしているみたい。関東地方は両者の中間にあって、今日は移動性高気圧の圏内に近づきました。
 最高気温 31.7℃(隣町アメダス)は、猛暑時に比べると涼しいくらい。
 夕方、行った市民プールで、いつもよりひんやりした水の中から空を見上げ、「これまでと違って、秋めいてきましたねぇ」というご老人の言葉に相槌を打ったものです。

 夕食後の演芸タイムは先代・文楽師匠(黒門町)の「よかちょろ」。

 道楽息子の孝太郎が、遊郭通いを父親に叱られる。しかし、孝太郎はまるで悪びれるふうもなく、回収した売掛金200円(明治時代の噺なんですね)をいかに散財したか、得意げに説明する。「髭剃に5円、よかちょろに45円……」。

 「ぬけぬけと」という言葉がありますが、22歳の若旦那の態度がまさにそれ。
 殊に「髭剃」の説明がいいんです。遊郭の二階の一室で花魁をはべらせて、髭を当たってもらう。その場の様子を得意気に話す中で、「ここに猫がいたり、いなかったり」。
 いい気なもの、なんて言葉では言い尽くせない、どうしようもなさ。バカバカしいのに、どこか風情があって、親にしてみれば余計に腹立たしいだろうなあ、と。
 「この後、若旦那、勘当とあいなります」のサゲの言葉にも深く納得せざるを得ないわけです。

 こういう上流っぽい人たちのバカバカしさを描くと、文楽師匠は絶品ですねぇ。ご本人の気品がなせるわざでしょうか。素晴らしい。


三平さん

2015-08-17 21:00:38 | 演芸

 昨夕から、雨。時おり激しく降り、まさにバケツをひっくり返したような状態の時も。

 今日も日中は降ったりやんだりで、ずっと部屋でゴロゴロしながら本を読んでいました。
 寝そべって仕事をしているなんて、世間に対して申しわけが立たない気もしますが……。

 夕食後の演芸タイム。今日ではなくて、昨日の演目ですが、先代・林家三平「源平盛衰記」と立川談志「三平さんの思いで」。
 実際の高座は知りませんが、若い時、テレビで三平さんを観られたのは、とても貴重な思い出。くるくるの天然パーマの頭に、羽織袴。額の汗を拭き拭き、「もう大変なんすから」とやってた姿を思い出すだけでなんだか嬉しくなってきます。
 談志師匠の話によれば、この人ほどサービス精神に徹した人はいなかったとか。お客さんだけでなく、噺家仲間や酒場で出会った見知らぬ人にまでずっとギャグを放ち続けたそうです。
 芸の内容は、脈絡のない小噺やギャグの連発。とにかく笑ってもらおうと、「笑ってくださいよ、もぅ」などと言うことも多かった。

 なんかね、話の内容で笑わそうとかいうより、人物そのものが笑いの塊みたいだった感じ。こんな人がいたことを知っているだけで、人生、変わります。
 「ジャングルハウス3ガス」は林家三平を横文字に言い換えた名前ですが、この名前で出したレコードはラップの先駆けだったりしたんじゃないかしら。めちゃくちゃだけど凄い人でした。


お江戸でハナノベ

2015-08-08 20:42:49 | 演芸

 立秋。ということで、最高気温は 31.8℃(隣町アメダス)。
 天気図を眺めると、オホーツク海に中心をもつ高気圧が東海上から張り出していて、関東地方はその勢力圏内に入っているみたい。昨日までの太平洋高気圧圏内とは少し様子が変わりました。

 午後は深川江戸資料館まで出かけ、午後2時から「お江戸 de ハナシをノベル !! vol.6」。
 田中啓文さんを中心とする小説家が書いた落語を、月亭文都さんが噺に練って高座にかけるという催し。落語の面白さとともに、関西のSF作家さんの顔を見られる良い機会となっています。

 演目は次のとおり――

  • 「千早振る」月亭秀都
  • 「グルメ研究会の陰謀」(原作:北野勇作)月亭文都
  • 「元猫」月亭天使
  • 「うばすて村」(原案:山中利一/原作:田中啓文)月亭文都
  • 「トーク de ノベル」ザ・ノベラーズ
  • 「鏡」(原作:魔人ハンターミツルギ)月亭文都
  • 「エンディング de ノベル」ハナノベラブラザーズ

 ハナノベ落語を簡単に説明します。

 「グルメ研究会の陰謀」は、大学の落語研究会に入ろうと部室を訪れた新入生が、「落研は潰れた。代わりにグルメ研究会を作った」という怪しげな先輩に連れられて学食に行き、怪しげな貧乏メニューを披露されるという噺。どもならんものを、どもならんように云々するという、落語の醍醐味を味わわせてくれるものですが、どもならんメニューだけでなく、それに入れ込んでゆく人間の情感を膨らませるとさらに面白くなると思いました。

 「うばすて村」は、吾作が年老いた父親・為五郎を山に捨てて、さて、1年後にその山を尋ねてみると……。プロローグで1年後の吾作を描き、それから1年前に戻って事情を説き明かすという、小説めいた凝ったつくり。文都さんは高座でぐるりとまわりながら、時間の経過を表現していました。山中のうばすて村のなんでもありといった光景が可笑しい。

 「鏡」は、鏡に映った姿と本人が会話する。ありそうなアイデアを奇妙な味のドッペルゲンガー譚に仕上げていました。短い場面の切り替えが面白かった。見台の上に鏡の枠を立て、その向こうで文都さんから語るという演出も効果的。

 「トーク de ノベル」は、作家さんたちによるぐだぐだトーク。壇上に並んだのは、客席から見て左から順に、魔人ハンターミツルギ・安孫子武丸・田中啓文・北野勇作・牧野修・浅暮三文の面々。「ヒヤッとした話」を、それぞれ語りつつ自己紹介をして終了。エンディングは、この面々プラス文都師匠で「来年もよろしく」のご挨拶でした。

 というようなところでしたが、本日の拾いものは天使さんの「元猫」。
 江戸落語の「元犬」を、猫に換えて関西の噺にしてあったのですが、猫特有の仕草が可愛い。天使さんの猫好きぶりがうかがえました。猫柄の着物も良かった。
 6年前の「お江戸 de ……」第1回と比べると、ずいぶん上手になったと感心。

 ということで、良い暑気払いになった午後でした。