惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『日本の土』

2016-02-01 21:00:09 | 本と雑誌

 山野井徹『日本の土――地質学が明かす黒土と縄文文化』(築地書館、2015年2月初版)を読み終えました。大変おもしろかった。

 日本各地で見られる「クロボク土」の成因を解き明かす本です。
 クロボク土とは「黒くてボクボクした土」という意味らしい。武蔵野台地の関東ローム層表面はたいがいこの土で、我が家の近辺もそうです。有機物に富んだ粒子の細かい土で、そのまま鉢植えの土にすると、みっちりと固まって水はけが悪くなります。なので、赤玉土などを混ぜる必要がある。

 著者の結論をてっとり早くいうと、このクロボク土は縄文人が草原や疎林を維持するために、野焼き・山焼きを行なった結果、できたものだとのこと。読んでいると、至極妥当な説に思えます。縄文人は食糧確保のため、自然に手を加えていたようです。
 ただし、著者によると、野焼き・山焼きで生育を確保していたのはゼンマイなどの山菜のたぐいで、焼き畑農業のように種蒔きをして作物を育てるところまではいってなかった(その必要がなかった)。
 それにしても、今にいたるまで分厚く残るクロボク土をつくりだすほどに作業を続けていたのは大したもの。足元の土から縄文人を偲ぶと、グッとくるものがあります。

 本書の話はクロボク土にとどまらず、土というものがどのようにできるかというところから説き起こしてくれているので、良い勉強になりました。今後、日本の歴史を語る際、基本図書のひとつとなるのではないでしょうか。