詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『つい昨日のこと』(133)

2018-11-18 00:00:00 | 高橋睦郎「つい昨日のこと」
133  花冠

どんな理屈を捏ねようと 白昼の群集の中でのきみの自爆は美しくない
きみに何の縁もゆかりもない無辜の人びとの笑顔を巻き込んだからには
きみの匂い立つ盛りの若さを犠牲にしたとしても 涼しい木蔭は約束されまい

 「涼しい木蔭」はコーランが約束する「天国」の描写のひとつだから、ここに書かれている「自爆テロリスト」はイスラム教徒ということになるだろう。
 書かれている「意味」はわかるが、私はこういう「倫理」を詩や小説で読むことは好きではない。
 もっとわけのわからないものに触れてみたい。自爆テロリストを擁護するわけではないのだが、「文学」なのだから、「あ、そんなことをしたら自爆テロが失敗する。もっときちんと準備しなくちゃ」というような感じで、テロリストのことを心配してみたりしたい。テロリストになってみたい、と思う。

 一方、

地獄に送るにふさわしい黒い花冠だって 無ければなるまいからだ

 「地獄」「黒い花冠」か。この組み合わせは、とても美しい。「地獄」が「黒い花冠」によって、美しいものに変わる。
 うーん。
 もしかすると、高橋は、自爆テロリストを「倫理的/論理的」には批判しているけれど、どこかでそれとは違った視点で見ていないか。私は何かを見落としていないか。そういうことを考えてしまう。

 こういうことは突き詰めずに、「保留」したままにしておく。その方がいいだろうと思う。いつか詩を読み返すときのために。





つい昨日のこと 私のギリシア
クリエーター情報なし
思潮社

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする