池井昌樹「道」「用」(「森羅」15、2019年03月09日発行)
池井昌樹「道」は高村光太郎の「道」を思い出させる。
高村光太郎を思い出すが、どこかが違う。どこが違うか、わざわざ言わなくてもいいだろう。誰のことばであっても、それを言いなおすときに「違い」が出てくる。その「違い」のなかに、その人がいる。そして、「違い」が「違い」を生んで、こうなってゆく。
ここには高村光太郎はいるか、いないか。いないように見えて、実はいる。道はいつでも「ひとすじ」である。
だから私は、ふいに和辻哲郎の「古寺巡礼」を思い出したりする。「二」に、こういう文章がある。
その「道」である。この問いと向き合う和辻の姿に、和辻のすべてがある、と私は感じている。
池井は、いまどんな「道」を生きているか。「用」に書かれている。
こういう詩を、いまは誰も書かない。だから、そのまま紹介しておく。
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池井昌樹「道」は高村光太郎の「道」を思い出させる。
かえるがひとはねぴょんとゆく
へびがうねうねうねくってゆく
ありがぎょうれつつくってゆく
のがもおやこがよちよちとゆく
ああみちがうまれる
高村光太郎を思い出すが、どこかが違う。どこが違うか、わざわざ言わなくてもいいだろう。誰のことばであっても、それを言いなおすときに「違い」が出てくる。その「違い」のなかに、その人がいる。そして、「違い」が「違い」を生んで、こうなってゆく。
のがももへびもかえるもありも
かっぱもひともやまんばも
それぞれのはやさですぎる
それぞれのいのちがゆきかう
おおにぎわいののどかなみちに
あかもきいろもあおもなく
とまれもすすめもきをつけもなく
とどこおらないかわのよう
どんなみちよりとおくから
どんなみちよりとおくへと
ながれつづける
うまれつづける
ひとすじの
はてしないみちがどこかに
ここには高村光太郎はいるか、いないか。いないように見えて、実はいる。道はいつでも「ひとすじ」である。
だから私は、ふいに和辻哲郎の「古寺巡礼」を思い出したりする。「二」に、こういう文章がある。
昨夜父は言った。おまえのやっていることは道のためにどれだけ役に立つのか、
その「道」である。この問いと向き合う和辻の姿に、和辻のすべてがある、と私は感じている。
池井は、いまどんな「道」を生きているか。「用」に書かれている。
つまといて
ようもないのに
こえをかけたくなることが
なにかいいたくなることが
ようもないから
だまっているが
ひとはひとりになることが
いつかひとりになることが
たったひとりで
ひとりっきりで
だからなによりたいせつな
どんなことよりたいせつな
たいせつな
ようがあるから
だまってせなかみていたら
いぶかしそうにふりむいた
つまのめに
めをふせて
こういう詩を、いまは誰も書かない。だから、そのまま紹介しておく。
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嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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(4)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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