藤原安紀子「註釈」(「森羅」15、2019年03月09日発行)
藤原安紀子「註釈」の一連目。
「むゆって さまわる」。何語だろう。私は、こういうことばをつかわない。知らない。何を書いてあるか、わからない。「ロロ」も実は「口口」かもしれない。池井の手書きの文字なので、どちらかはっきりしない。
それでも、わかることがある。文字が読める。「環の中心」はわかる。「たてまわり」の「まわり」は「まわる」の連用形だろうと、思ってしまう。で、思ってしまうことを、「わかる」と勘違いする。「誤読」だ。「けいれんして」も「わかる」、「しながら」も「わかる」「掘りにいく」も「わかる」。動詞を読むと「肉体」が反応する。
反応する、といっても「しながら」の前の行の「クシャック」「ムシャック」がわかるわけではない。けれど「クシャックしながら」「ムシャックしながら」と「誤読」し、それを動詞だと思い込んで、私が勝手に反応しているだけである。
「クシャック」「ムシャック」、くしゃみ、はくしょん、むしゃくしゃ。私の「肉体」は音の重なりを適当に解体し、つなぎ直して、「意味」を捏造する。「原生」ということばに刺戟されて、「くしゃみ」になるまえ、未分節のとき、「肉体」が聞いたのは「クシャック」だったかもしれない、と思ったりする。「シャック」の繰り返しも、「音」を「意味」に整えようとして動いている感じがする。
あれれ、「くしゃみ」が出てきてしまった。「意味」になってしまうと、つまらない。「意味」とは「理」のことである。
うーん、「理はつまらない」まで出てきてしまった。
でも、いいか。一連目が楽しいから。
「原生の川辺へ 星を掘りにいく」というのは、天と地が入れかわったみたいで楽しい。河は、このとき銀河だ。また「原生」の「原」はビッグバンということばを思い出させる。ここから世界がはじまる。「分節」がはじまる。
……という具合に、私は「註釈」してみる。つまり「誤読」してみる。言いなおすと、感想を書く。
*
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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なお、私あてに直接お申し込みいただければ、送料は私が負担します。ご連絡ください。
「詩はどこにあるか」2019年1月の詩の批評を一冊にまとめました。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
藤原安紀子「註釈」の一連目。
むゆって さまわる 環の中心で
ロロは たてまわり けいれんして
クシャック や ムシャック
しながら 原生の川辺へ 星を掘りにいくという
「むゆって さまわる」。何語だろう。私は、こういうことばをつかわない。知らない。何を書いてあるか、わからない。「ロロ」も実は「口口」かもしれない。池井の手書きの文字なので、どちらかはっきりしない。
それでも、わかることがある。文字が読める。「環の中心」はわかる。「たてまわり」の「まわり」は「まわる」の連用形だろうと、思ってしまう。で、思ってしまうことを、「わかる」と勘違いする。「誤読」だ。「けいれんして」も「わかる」、「しながら」も「わかる」「掘りにいく」も「わかる」。動詞を読むと「肉体」が反応する。
反応する、といっても「しながら」の前の行の「クシャック」「ムシャック」がわかるわけではない。けれど「クシャックしながら」「ムシャックしながら」と「誤読」し、それを動詞だと思い込んで、私が勝手に反応しているだけである。
「クシャック」「ムシャック」、くしゃみ、はくしょん、むしゃくしゃ。私の「肉体」は音の重なりを適当に解体し、つなぎ直して、「意味」を捏造する。「原生」ということばに刺戟されて、「くしゃみ」になるまえ、未分節のとき、「肉体」が聞いたのは「クシャック」だったかもしれない、と思ったりする。「シャック」の繰り返しも、「音」を「意味」に整えようとして動いている感じがする。
ロロはさらにいう じめん
なんて お絵かきできる
たのしい 白い紙は嘘で タリックが
パチャックすると くしゃみがでる
あかつきのお花が 曲がる
あれれ、「くしゃみ」が出てきてしまった。「意味」になってしまうと、つまらない。「意味」とは「理」のことである。
ぬける地に 理はつまらない
ありといえば 円座になって背をまわること
追っかけっこして蹴りあげる 世にふたつと
ない音たてて
うーん、「理はつまらない」まで出てきてしまった。
でも、いいか。一連目が楽しいから。
「原生の川辺へ 星を掘りにいく」というのは、天と地が入れかわったみたいで楽しい。河は、このとき銀河だ。また「原生」の「原」はビッグバンということばを思い出させる。ここから世界がはじまる。「分節」がはじまる。
……という具合に、私は「註釈」してみる。つまり「誤読」してみる。言いなおすと、感想を書く。
*
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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なお、私あてに直接お申し込みいただければ、送料は私が負担します。ご連絡ください。
「詩はどこにあるか」2019年1月の詩の批評を一冊にまとめました。
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オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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(4)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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