詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Obra de Luciano González Diaz

2019-03-31 23:01:25 | estoy loco por espana


Luciano González Diazの作品。

不安と信頼の、危うい均衡。
現代を生きる人間を象徴している。

ブランコの人が、落ちる人を支えているか。
落ちる人が、上の人を逆に上にとどまらせているのか。

常識的に見れば、ブランコの人が下の人を吊り上げるように支えている。
しかし、下にいる人がいるからこそ、ブランコの人はブランコにとどまり続ける。
もし下にいる人がいなければ、ブランコの上の人も落ちてしまうかもしれない。

Peligroso equilibrio de ansiedad y confianza.
Simboliza al ser humano que vive en la era actual.

Una persona columpio apoya a una persona que cae?
La persona que cae hace que la persona superior se quede arriba?

En el sentido común, una persona columpio está ayudando a levantar a la persona inferior.
Sin embargo, debido a que hay personas debajo, las personas del columpio continúan en el columpio.
Si no hay nadie debajo, el que está en el columpio también puede caer.

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阪井達生『雨の日のポトフ』

2019-03-31 11:03:27 | 詩集
阪井達生『雨の日のポトフ』(澪標、2019年01月31日発行)

 阪井達生『雨の日のポトフ』に「小骨屋」という作品がある。
               
 小骨は何かが喉を通過できず 引っかかってできるもの その小
骨を 大学の偉い先生に鑑定してもらったところ 先生は「この骨
は言葉の結晶だ」と 言葉だよ 難しいことはうまくいえないが
面と向かっていえない言葉 言ってもすぐ戻されてくる言葉なんか
は よく喉に引っかかると 先生はおっしゃる 数年も喉にあれば
結晶化して 骨になる

 「面と向かっていえない言葉」はすぐわかる。しかし「言ってもすぐ戻されてくる言葉」は意表をつかれた感じがする。そうか、言っても戻ってくることばか。たしかに、そういうものはあるなあ、と思い当たる。
 阪井はとても理性的なひとなのだろう。
 次の部分も、人間観察がこまかい。

                         骨がとれる
と言葉が一気に出てくるはずだが この商売を永くやっているが
そんな人はまずいない 言葉はなかなかでてこない 人の体は単純
ではない 体が先におぼえているものだ 人は小骨を取ると なぜ
か また小骨を欲しがる そのほうが楽だから 人とはそんなもの

 「体が先におぼえている」がきびしくて、やさしい。

 詩集は三部に分かれていて、二部に夫婦のことが書いてある。それは「小骨」のようなものである。詩の形で、そっと取り出されている。「面と向かっていえない言葉 言ってもすぐ戻されてくる言葉」なのか。それは読むひと次第だろう。
 たしかなことは、そのことばが詩に結晶するまでには、長い時間がかかった。
 その時間を、「体が」「おぼえている」。「体」の声を聞く詩集だ。
 そのなかの一篇。「ジャムのふた」の全行。

朝の食卓には
不思議な
ジャムがある

ジャムのふたが硬くてあけられない
妻も知っていて
「あけて」とも言わない

ビンには
感情という 大波に練りこまれた
夫婦の会話が詰まっている

無理にふたをあけるには勇気がいる
つらさを追体験する覚悟がいる

毎日 焼きたての
クロワッサンがあるのに
二人は自分から先に
ジャムのふたに
手を触れることはない





*

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池澤夏樹のカヴァフィス(103)

2019-03-31 09:50:17 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
103  葡萄酒鉢の職人

 職人が葡萄酒鉢をつくっている。真ん中に美しい若者を描いている。

裸体の、エロティックな 一方の足をまだ
水に入れたままの姿-- 記憶よ、お願いだ
手を貸してくれ。 私が愛した若者の
あの顔をそのまま よみがえらせてくれ。

 「裸体」を「エロティック」と言い直し、さらにそれを「一方の足をまだ/水に入れたままの姿」と言いなおす。主人公の職人は、若者が水からあがる瞬間を見ている。水の中にいたときは見えなかったものが、いまは見える。そのために一瞬、顔から目がそれたかもしれない。顔よりも、その瞬間を職人は覚えている。そういう「動き」が見える。
 このあと詩は、こう展開する。

これは困難なことだ。 それというのも
彼がいなくなってから もう十年になるのだから、
マグネシアの敗北に 一兵卒として倒れてから。

 ここにも不思議な動きがある。もし若者が戦死していなかったら、職人は若者を思い出したか。戦死したからこそ、若いときの姿のまま記憶に残っている。
 ここには何か「裏切り」のようなものがある。
 ほんとうに愛していたのなら十年たっても忘れないだろう。思い出せないのは十年の月日のせいだけではないと感じさせる。
 池澤は、「マグネシアの敗北」に関係づけて、こう註釈している。

 前一九〇年、セレウコス朝シリアがローマに敗れた戦い。(略)この詩が扱っているのはしたがって前一八〇年頃になり、(略)

 十年前の恋人の顔を思い出せないというだけなら「現代」を舞台にしてもいいのに、わざわざ紀元前を舞台にしている。
 想像力を二重に動かしている。
 歴史の事実を思い、それから十年後にそのことを思い出すという二重性。この「二重性」が水から上がる姿(足)を覚えているのに、顔を思い出せないという「分離」、記憶の不思議な二重性を刺戟する。「現代」を舞台にすると、二重性の「メタ」の感じが薄くなる。
 カヴァフィスはメタ構造の中でことばと感情を交錯させる。そのとき、ことばが感情になるのか、感情がことばになるのか。




カヴァフィス全詩
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書肆山田


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