79 アリストブーロス
アリストローブスの死を嘆く詩は、二連目の途中からことばの調子が一変する。
「一変」するのだけれど、激変という感じではない。感情の爆発というには、論理的すぎる感じがする。特に「遂にあいつらは目的を達してしまった!」が散文的だ。
ここまでくると、もう最初の「一変」というのは「意味」だけになってしまう。感情が先に溢れ出て、それをことばが追いかけてくるという感じではなくなる。「音楽」を聞いているという感じが消えてしまう。
池澤の註釈。
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アリストローブスの死を嘆く詩は、二連目の途中からことばの調子が一変する。
アレクサンドラはこの惨事にただ泣き暮らしていた--
だが自分一人の時になると彼女の悲しみは一変した。
彼女は、うめき、憤怒に燃え、悪罵を並べ、咒った。
よくも妾をあざむいてくれた! よくもだましてくれた!
遂にあいつらは目的を達してしまった!
アスモナエアス家を滅ぼしてしまった。
あの悪辣な王めがよくもそこまでやったもの。
「一変」するのだけれど、激変という感じではない。感情の爆発というには、論理的すぎる感じがする。特に「遂にあいつらは目的を達してしまった!」が散文的だ。
奸智にたけたあの腐りきった悪党めが、
よくもそこまでやったもの。その暴虐の計画に
マリアムネさえもまったく気付かなかったとは。
マリアムネが気付いたら、せめて疑惑をいだいたら、
弟を救う方法をなんとかみつけたろうに。
ここまでくると、もう最初の「一変」というのは「意味」だけになってしまう。感情が先に溢れ出て、それをことばが追いかけてくるという感じではなくなる。「音楽」を聞いているという感じが消えてしまう。
池澤の註釈。
アレクサンドラは本来のユダヤ王家アスモナエアスの一族の出で、その娘マリアムネはヘロデの妃となり、彼に愛されてはいたが、言うなれば攘夷派に属した。アリストブーロスはそのマリアムネの弟。
カヴァフィス全詩 | |
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書肆山田 |
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