詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

森鴎外「青年」

2021-03-12 10:31:56 | その他(音楽、小説etc)
鴎外選集 第二巻 「青年」

「自然」ということばが何度も出てくる。
人間(青年)の肉体の自然な欲望。
未亡人や若い娘に向き合い、活発に動く。
その描写が、私には「正直」に響く。

ところで、「自然」の対極のことばは何か。
170ページに「趣味」ということばが出てくる。「芸術」に通じるかもしれない。精神によって整えられた世界を「趣味」というのかもしれない。
そういう意味でいえば、主人公の「正直」なことば、たとえば女の目の描写(どれも美しい)、自己(自然)分析のことばも「趣味」なのだ。

小説の終わり方も、鴎外らしくて、とても好きだ。
何か決着があるわけではない。
書いてきたそれぞれのことばが「正直」だから、それで十分なのだ。「正直」になるために人間は生きている。そこに鴎外の「自然」がある。
小説の中に漱石と思われる人物が登場する。漱石の小説にも「自然」は出てくる。それは「正直」というよりも「天然/本質」かなあとも思う。それはそれで、こころをひかれるが、「先生」と呼びたいのは、私には鴎外である。
コメント
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