志村喜代子『人隠し』(水仁舎、2020年08月16日発行)
志村喜代子『人隠し』の「花びら」。
「なにかわからない」とはじまるのがとても自然。いつでも「なにかわからない」から、それをもとめてことばが動く。
一連目の「白日にさらす」がに連目で「いたんだ日をつつむ」にかわる。
いや、これは私の「誤読」であって、志村は、その花びらのようなもの、花びら自身の「いたんだ記憶(日々)」をつつむようにして、薄い皮膜があると書いているのかもしれないが、私は「太陽(日)」をつつむと読んでしまうのである。
花びら越しに太陽を見る。そのとき、花びらを見ているのだけれど、同時に太陽をも見ている。花びらを太陽に透かして見ているのではなく、花びらを透かして太陽を見ている。そのとき、まるで花びらが太陽をつつんでいるように見える。
なぜ、花びらが太陽をつつむ? それは花びら自身のなかに「つつまれたい」という願いがあるからだ。願いの裏返しとして「受動」から「能動」に転換する。ちょうど「愛されたい」と思っている人が「愛する」のに似ている。花びらはたしかに傷ついている。こわれかけている。それでもなおかつ、残っているいのちで太陽を愛するように、つつむ。そのとき、太陽と花びらが一体になる。同時に志村とも一体になる。
私は、そう読みたいのである。
このときの「沁みるもの」とは志村の肉体であり、こころだろう。
「神さまの黄」は「花びら」と重ね合わせるようにして読みたい詩である。。
「つつむ」「ほどく」「裂く」「ひらく」、そして「あえぐ」。それは花の「肉体」ではなく志村の「肉体」だろう。ここには自分をいとおしむ静かな力がある。
「来る雨」はことばのリズムの変化がそのまま雨が近づいて世界を変えていくリズムになっている。
「のどは棲めないこえを溜め/やけつく嗚咽をつめ」という緊張感というか苦しさのようなものが、雨によって叩きこわされ、解放されていくのを「リズム」のなかに感じる。駆け抜けていく驟雨の鮮やかさを見る感じがする。
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志村喜代子『人隠し』の「花びら」。
それがなにかわからないが
白日にさらすほど
すき透ってゆく
咳のような毀れめから 剥がれ
いたんだ日をつつむ うすい皮膜
「なにかわからない」とはじまるのがとても自然。いつでも「なにかわからない」から、それをもとめてことばが動く。
一連目の「白日にさらす」がに連目で「いたんだ日をつつむ」にかわる。
いや、これは私の「誤読」であって、志村は、その花びらのようなもの、花びら自身の「いたんだ記憶(日々)」をつつむようにして、薄い皮膜があると書いているのかもしれないが、私は「太陽(日)」をつつむと読んでしまうのである。
花びら越しに太陽を見る。そのとき、花びらを見ているのだけれど、同時に太陽をも見ている。花びらを太陽に透かして見ているのではなく、花びらを透かして太陽を見ている。そのとき、まるで花びらが太陽をつつんでいるように見える。
なぜ、花びらが太陽をつつむ? それは花びら自身のなかに「つつまれたい」という願いがあるからだ。願いの裏返しとして「受動」から「能動」に転換する。ちょうど「愛されたい」と思っている人が「愛する」のに似ている。花びらはたしかに傷ついている。こわれかけている。それでもなおかつ、残っているいのちで太陽を愛するように、つつむ。そのとき、太陽と花びらが一体になる。同時に志村とも一体になる。
私は、そう読みたいのである。
ひりひり 沁みるものへ
ゆるやかに降りてくる
鉤さきの 裂
このときの「沁みるもの」とは志村の肉体であり、こころだろう。
「神さまの黄」は「花びら」と重ね合わせるようにして読みたい詩である。。
ひと株の水菜は
ちぎってサラダに添える
いっそう冴えるさみどり
細い葉先の反り
四十センチ余り伸びた天辺は
粒状の固いしこりを
密生させていたが
そとがわの一本が離れ
つつんでいた萼をほどく
裂きながら
一片は次の一片へと感覚をひらき
花のかたちにあえぐ黄
「つつむ」「ほどく」「裂く」「ひらく」、そして「あえぐ」。それは花の「肉体」ではなく志村の「肉体」だろう。ここには自分をいとおしむ静かな力がある。
「来る雨」はことばのリズムの変化がそのまま雨が近づいて世界を変えていくリズムになっている。
はるかにも来る
のどは棲めないこえを溜め
やけつく嗚咽をつめ
待ち受けながら知る
その遠さに
来るものの象は毛羽立ち喘ぎつつ落ちると
花は草へ触れ 草は木へ道へ獣へ
海へ 河川や湖 ため池 沼 置きざりの庭の盥に
あゝ来る
父祖の 廃屋の まばらな集落の 屋根
きりもない墓地という墓地の
石の
たたずむ人垣に
坂が たわむ
切り通しがひしゃげる
干われた砂地に
水の流れがすじを引きひろがり
そくそくと つながっていく
「のどは棲めないこえを溜め/やけつく嗚咽をつめ」という緊張感というか苦しさのようなものが、雨によって叩きこわされ、解放されていくのを「リズム」のなかに感じる。駆け抜けていく驟雨の鮮やかさを見る感じがする。
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少なくとも月1篇は送信してください。
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また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
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(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
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