金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ウオールマート、小型店舗で中国市場を攻める

2010年12月02日 | 株式

世界最大の小売業者ウオールマートは、小型店舗で中国の地方都市の新興中産階級を取り込む計画だ。ファイナンシャルタイムズによると、ウオールマートはラテンアメリカで開発した「コンパクト・ハイパーマーケット」というコンセプトの小型店舗を中国で300店舗作る予定だ。ウオールマートは先月江西省Zhag Suという50万都市で約100坪の店舗をオープンした。ウオールマートの国際部門CEOのマクミラン氏によると、店は小さくても投資利回りは規模の大きな店と変わらない。彼はコンパクト・ハイパーマーケットはウオールマートの国際事業によって今後重要性を増すだろうと述べている。

例えばもしウオールマートが南アフリカでビッド中の小売業者マスマートの支配権を手に入れることができると、サブサハラ地域で小型スーパーを展開することが可能だ。

ウオールマートにとって国際ビジネスは利益率が高い。海外売上が総売上に占める割合は4分の1だが、営業利益ベースでは3分の1を占める。

日本の小売業も中国市場に進出している。例えばセブン&アイは北京で8つ、成都で4つのヨーカ堂を出店している(他に北京・天津でコンビニあり)。ウオールマートに較べるといかにも「上品」な感じ。だが店舗が上品であることと、投資収益が高いということの間には関係がない。ウオールマートの中国の地方店は床はコンクリート、壁はレンガ、場合によってはエアコンなしということだ。

この投資リターンへのこだわりがウオールマートを「良い会社」にしている。ウオールマートは売上ではセブン&アイの7.4倍だが、純利益では14倍の1兆3千億円を稼いでいる。セブン&アイのROE2.6に対しウオールマートは21.1。PERは48.5対14.5だ。

ウオールマートのように新興国に強い企業の株を買うというのも、一つの新興国投資のあり方だろう。FTで調べると同社の株に対するアナリストのコンセンサスはアウトパフォーム(ベンチマークを上回る)だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本株、予想はポジティブになったが、世界デフレリスクは残る

2010年11月26日 | 株式

アイルランドや北朝鮮の問題があったものの、日経平均は1万円を割らずに頑張っている。日本株は今月に入ってかなり順調だ。ファイナンシャル・タイムズはその背景と今後の見通しについて業界筋の情報を紹介している。

最近の日本の株高は米連銀の金融緩和政策の影響と近時少し円安に振れていることによる。また日銀によるETFとREIT購入も市場の下支えだ。

また企業業績も好調だ。モルガンスタンレーMUFG証券は6割の会社が今年度の業績を引き上げ見直しを行っていると推定している。それにより一株当り利益は向こう2年間で各年15%から20%上昇する可能性がある。なお同証券は成長率はまだ株価に織り込まれていないと述べている。

同証券のチーフストラテジストKinmont氏は「市場はこのところの上昇の後、一休みをして、再び上昇に向かう。企業収益は予想よりも好調で上昇相場を助けたが、まだ完全に消化されていない」と述べている。

もっとも多くの投資家が日本株を避けていた理由~人口の高齢化、鈍い国内成長率、構造改革に対する政治的意思の欠如、持続的なデフレなど~はなんら解決していない。インベスコの日本株マネージャーRoberts氏は「日本株に対する未解決の嫌悪感がある」と述べる。

その一例は米連銀の第二弾目の金融緩和を予測して米国のS&P500は9月、10月とラリーを続けたが、日本株は11月に入って漸く上昇しはじめた。

Roberts氏は日本株は相対的に割安だと信じている投資家・ストラテジストの一人だ。モルガンスタンレーMUFG証券によると、TOPIXの季節調整後のPERは13.2倍でMSCI欧州の13.9倍、S&P500の20.2倍やアジア株(除く日本)の21.5倍よりも低い。

また野村證券は増配と自社株買いが市場をサポートすると述べる。野村證券によると今年度(3月期)配当は約3分の1増加し、自社株買いは58%増加すると予想している。

アナリスト達は上海株の不調などから投資マネーが日本に流れ込んでいることもプラス要因だと見ている。

モルガンスタンレーMUFGのKInmont氏は「実際のところエマージング市場に悪い状況は日本株には良い状況ということだ。世界は発展途上国をオーバーウエイトするために、先進国をアンダーウエイトしていないかどうか証明することはできないがその可能性を疑っている。特に発展途上国をオーバーウエイトするため、日本株をアンダーウエイトしている可能性が高い」と述べる。

だが既に述べたような日本株を取り巻く重荷が予測可能な将来に消滅する見込みはない。日本経済の分析に定評のあるピーター・タスカ氏はこれを「金融および知的資本の日本からの巨大な逃避」と呼ぶ。

その結果日本株の個別銘柄をカバーするアナリストが減少し、市場の非効率性が高まっている。逆の言い方をすると、個別銘柄に投資する投資家にとって「割安な株を見つけ出す」可能性があるということになる。(ご承知のように「効率的市場仮説」は高度に効率的な市場では、市場参加者は瞬時に情報を共有するので、個々の投資家は掘り出し物を見つけることはできないと述べる)

あすかコーポレートアドバイザリーの中神社長は過去10年間で、TOPIX全体では時価が3分の1以上減少したが、41%の会社の株はプラスのリターンを上げていると計算している。中神氏は株価が上昇した会社は「ユニークな競争力」と「独立心を持った経営」を持つ傾向があると述べている。同氏は特に中小型株の中に「隠れた宝石」があると述べている。

だが「日本株の主なリスクは世界のデフレだ」「もし世界がインフレになると日本は最良の投資対象の一つになるが、もしそうならずに世界がデフレにはまり込むと日本はデフレから抜け出すことは決してできないだろう」というタスカ氏の警告で記事は終わっている。

☆  ☆  ☆

日本株市場が非効率な市場だという分析が正しいとすると、日本株についてはパッシブ運用は非効率的な運用ということになる(少なくとも運用資産がそれ程多くない個人投資家にとって)。

日本株投資におけるパッシブ・アクティブ運用の比率を考える上で留意しておくべき点だろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

邦銀、国際的影響力が少ないので株価急騰

2010年11月10日 | 株式

今日(10日)午前中、大手銀行の株価が急騰した。手元のデータを見ると三菱UFJは16円(4.2%)上昇している。株価が急騰した原因は、FTのG20 draws up two-tier bank planという記事だ。

記事によると、大部分のアジアの銀行は、国際的な監督を受ける金融機関グループから除外される見通しとなった。

金融安定理事会Financial Stability Boardは当初、ゴールドマンザックス、JPモルガン、ロイヤルバンクオブカナダ等とともに、日本の3大メガバンクと野村證券を国際的に監督を受けるべき金融機関のリストに入れていた。

しかしG20サミットの議題についてブリーフィングを受けた人の話によると、中国や日本の銀行は規模は大きくても、国際業務でのプレゼンスは限定的なので、万一破綻しても国際的な影響は小さいので、国内の監督官庁にて規制されるべきだという結論になった。

国際的に規制される金融機関に認定されるとより多くの資本金が求められる。このため収益力の弱い邦銀には更なる増資リスクがくすぶっていたが、これで増資リスクが遠のいたと市場は判断した。

だが見方を変えると、世界の金融界から「あんた達は図体は大きいけれど、国際的には一流のプレーヤーではないのだよ」と言われたようなものである。

志ある邦銀幹部は増資リスク後退で安堵の胸をなでおろしながら、二流扱いされたことに不満を抱くというambivalentな気持ちを抱いているかもしれない。

ところでFTの記事を読むとみずほ、SMBC、MUFJはリストから外されるだろうと書いてあったが、野村については言及がなかった。株価だけを見ると野村も4%以上上昇しているので国際業務二流組なのだろうか・・・・。せめて一つ位国際的な監督を受ける金融機関が日本にもいて欲しい気がするが。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新興国株、躍進。インフラ投資に注目というが・・・・

2010年09月14日 | 株式

バーゼルⅢの自己資本規制が中核自己資本7%で決着したことや中国の経済データが安心感を与えたことで、昨日は新興国株式が躍進した。

私のポートフォリオではインドのIT大手インフォシスのADRが3.82%上昇し、64.71ドルと52週の最高値を付け、ブラジルETFは2.72%上昇、MSCI新興国インデックスも2.39%上昇した。もっとも目下円高のためそれ程利益は乗らないのだが。

もっとも世界の株価も日本の首相と同じく、強気・弱気が回り灯籠のようにクルクル変わるからこのまま強気相場が続くとは思わないが・・・

ただし新興国株式については中長期的にbullishなviewを持って間違いないと私は思っている。

新興国で注目されるのはインフラ投資だ。株屋さん(投資銀行)やアナリストの話は割り引いて聞く必要があるが、Benzingaによると新興国は向こう3年で6兆3千億ドルをインフラ投資につかう(その3分の2は中国)。

Benzingaはブラジルのインフラセクターを強く推奨する。一番の理由はブラジルは2014年のワールドカップ、2016年のオリンピックを控え、インフラ投資が持続するからだ。加えて中国の経済データは信頼できないところがあるが、ブラジルは新興国の中で一番正しい経済データを発表しているということ。

Benzingaはブラジルで個別銘柄のリスクを避けながらインフラセクターに投資するには、Brazil Infrastructure ETFが良いと推奨する。このETFが日本から簡単に買えるかどうか調べていないが、私はブラジルは金融セクターも投資ねらい目だと考えているので、一般的にいうとMSCIブラジルインデックスETFで十分ではないか?と考えている。

☆   ☆   ☆

テレビのニュースを見ていると振興銀行のペイオフ発動で、高金利を狙って1千万円以上預金した退職者が肩を落している姿が映っていた。

お気の毒ではあるが、破綻しそうなビジネスモデルに立脚して、高い金利で預金を集める手法が長続きすると考える方も少し甘いといわざるを得ない。

それと同様「成長著しい新興国への投資」という言葉にも罠はある。結局のところ自分で判断して、取れるリスクの範囲での投資を行うしかない。当たり前のことだが。

それを煩わしいと考えるか楽しいと考えるかはライフスタイルによる。今のところ私は色々な情報に目を通し、上手い話を疑いながらものを考えることを楽しみとしているが・・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブラジルの銀行株ETF、手軽に買えたら買いたいが・・・

2010年08月03日 | 株式

ブラジル株式市場ではベンチマークのボベスパ指数が11日連騰、年初からの下落幅を0.1%まで戻した(ブルンバーグ)。もっとも円投ベースでは円高のため、まだ苦戦しているが。

さてそのブラジル株式について最近銀行株に特化したETFがニューヨーク証券取引所に上場された名前はGlobal X Brazil Financials ETF。

何故ブラジルの銀行ETFに興味を持つかというと、ブラジルの財政と金融セクターが健全だからだ。ブラジルの公的債務はGDPのおよそ40%で、銀行の平均自己資本比率は18.2%だ。ETF Daily Newsによるとこれは米銀の14.3%や中国の10%よりはるかに高い。

またウォール・ストリート・ジャーナルによると、アンダー・バンクつまり銀行の受与信があまり活用されていない。従って銀行業が拡大する余地が多い。例えばブラジルの住宅ローンはGDPの僅かに3%(米国は72%、中国は18%)で、ブラジルの預金額はGDPの40%(米国は57%、中国は100%)だ。

ETF Dailyは更にブラジルの銀行が魅力的な理由として、中産階級の拡大をあげている。クレディスイスによると、過去5年間で22百万人近い人が中産階級入りをしたが、この流れは更に持続すると予想される。中産階級入りした人々は商品やサービスを獲得するため、銀行を利用するので銀行セクターの伸びが期待できるということだ。実際今年前半にブラジルの銀行の与信額は19.7%伸びている。

またインフレと良好な労働市場により消費者ローンのデフォルトリスクは緩和されているとEYF Dailyは述べている。消費者ローンで90日を越える延滞は2010年6月には6.6%に低下しているということだ。

中々魅力ありそうなブラジルの銀行ETFだが、マネックス証券の取扱の中にはまだ入ってない(他の証券会社は知らない)。当面は引き続きブラジル株全体のETF・MSCI Brazilを買うになるのだろう。因みにMSCI Brazilの約23%は金融セクターである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする