金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ヘッジファンドのリターンは何故落ちているのか?

2005年03月31日 | 金融
現在のところヘッジファンドのリターンは全般に余り良くない。
ダウジョーズ社のヘッジファンドインデックスを見ると過去52週の成績は以下のとおりだ。
転換社債アービトラージ:▲3.4 %、株式ニュートラル:0.5 %、イベント・ドリブン:8.5 %、ディストレス証券:11.8 %
合併アービトラージ 2.8%・・・

何故ヘッジファンドの成績が良くないか?そしてそれは回復可能か?ということを少し考えてみよう。

★ あるタイプの戦略、例えば転換社債アービトラージは将来も見込み薄。というのは転換社債と株式等との裁定に使うクオンツ・モデルについて市場参加者がほぼ同じモデルを使っているから。
これでは裁定機会が瞬時になくなってしまう。

★ 合併アービトラージも余り良くない。昔(10年以上前)は、優秀なヘッジファンド・マネージャーは人的ネットワークで弁護士等から合併の話や詳細な契約書を、競争相手に先んじて手に入れていたので、他を出し抜くことが出来た。

つまり孫子の兵法の孫子が言う「勝兵は先ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」(軍形編)の勝つ状態であった訳だ。

★ また「不良債権(債券)」について売り手と買い手のアンバランス(決算期末になると売り手が多くなる)があったことも、ヘッジファンドに収益機会を与えていた。しかし今では大手機関投資家も賢くなり、売り買いのアンバランスも減少している様だ。

★1990年代から2000年代初めまでは、歴史的に見ても株式・債券のボラティリティが高かったが、それ以降低下~むしろノーマルな状態に戻っている。これもヘッジファンドが高い収益を上げられない理由。

★ 勿論巷間言われているように、機関投資家の資金が大量に流入しているのも大きな理由。また機関投資家は、ヘッジファンドの運用スタイル・戦術の変化~スタイル・ドリフト~を嫌うので、ヘッジファンドが裁定機会を求めて機敏に動けないという問題もある。

以上のような問題は当面持続するので、一般的にはヘッジファンドに高いリターンを期待することは暫く困難と考える方が妥当かもしれない。

しかしあるヘッジファンド(不良債権特化型)のCEOによれば、中国は銀行システムを修復するため、向こう2,3年の間に大規模な不良債権処理に向かうので、大きな投資機会が発生する(バブル後始末時の日本と同じように)ということだ。

それがGood Investmentになるかどうかはもう少し様子を見ることにするが、どうもヘッジファンドが打出の小槌だった時代は過ぎつつあるのかもしれない。

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生き方の4本柱

2005年03月31日 | 日記・エッセイ・コラム
明日(4月1日)からペイオフが全面解禁になる。もっとも決済性預金は全額保護されるので、尻抜けだという議論もある。
とはいえ資産運用について「自己責任原則」一層強調される傾向にあることは変りはない。

ところで資産運用の大原則は「分散投資」だ。特に年金性資産のように長期の資産については「日本債券」「日本株」「外国債券」「外国株式」の4資産に分散投資することがリスク(変動性)を軽減する上で好ましいと言われている。

さて「自己責任原則」はややもすれば資産運用との関連で語られることが、多い様だが私は本当の自己責任の問題は生き方そのものにあると思う。

そこで人生の柱を次の4つに分けて考えてみた。
「職業人としての側面」「家庭人としての側面」「市民としての側面」「一個人としての側面」である
「一個人としての側面」というのは、例えば「趣味」「宗教」を追求する自己である。

私はこの人生における4つの側面の内容と組合せが、文化あるいは文明を規定していると思う。
「文明間の摩擦」とはこの人生における4つの側面の内容と組合せの違いに起因すると考えられる。

たとえばイスラム文明、これは一個人特に宗教のウエイトが高い文明だ。
西欧特に英米はこの4本柱のバランスが比較的良いと思われる。

日本はどうだろうか? 従来日本は「職業人としての側面」が他の側面に対して非常に高かった様に思われる。
会社中心の人生だ。

さて私は「自己責任の時代」とは、この人生の4本柱を見直し、そのウエイト付をもう少しバランスの良いものにすることではないか?と考えている。
平たくいうと会社にウエイトのかかり過ぎた人生を再設計することだ。

そうすることで、資産運用に即して言えば「人生のリスク」=予期せぬ変動に対する抵抗力が増えていくのではないか?

昔(江戸時代とか)の日本人はもう少しバランスが取れていた様だ。だから幕末に日本に来た外人(例えばペリー提督)も、
日本人の質の高さに驚嘆し、土足でこの国に上がることを躊躇した。

別に欧米に迎合することはないが、少し人生の4本柱を見直し、バランスの良い人生を送ることを考える様になれば、日本人はもっと国際社会で受け入れられるだろう。

人生のバランスを考えずに、資産運用面の自己責任だけが強調されるとまたゆがんだ人生が出来てしまう。
私はそのことを懸念する・・・・・・


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格付機関を巡る諸問題

2005年03月28日 | 金融
「RatingAgency.pdf」をダウンロード

数年前、金融機関の不良債権が大きな問題になっていた頃は、一般預金者の間でもムーディーズ等の格付が大きな話題になっていた。
昨今は日本経済の回復と金融機関のバランスシートのクリーンアップ、あるいは「慣れ」によりそれ程格付問題がマスコミをにぎわすことはなくなった様である。

一方米国では証券取引委員会が、議会に格付機関に対する監督権限の強化を求めた様だ。

格付と格付機関を巡る問題について最近エコノミスト誌がかなりまとまった論説を発表した。よくまとまったレポートだと思うのでその趣旨を紹介する。

詳しくを添付ファイルをご参照。

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ニッポン放送問題の裏にあるもの

2005年03月24日 | 社会・経済
「AgstTOB.pdf」をダウンロード

ニッポン放送のフジテレビに対する新株予約権発行が、昨日(3月23日)高裁でも認められなかった。
これでほぼライブドアがニッポン放送の経営権を手中にする訳で、今後ディールは第2段階に入っていく。


ところで私はこの問題が欧米のジャーナリズムでどのように見られているのか少し気になっていた。
欧米の経済紙は淡々と事実を余り大きな紙面を割くこともなく報じていたが、21日のファイナンシャル・タイムズ紙は少し
まとまった解説記事を書いた。

ただしその記事の主眼はニッポン放送争奪戦の日々の動きにあるのではない。
主眼は日本で経済産業省主導の下、敵対的買収に対するガイドラインの準備が整然と進められているというものだ。

M&Aの専門家によれば、日本は敵対的買収に関して20年から25年前の米国と同じ状況である。
当時米国でも敵対的買収が怒涛のように増加し、不当に株主利益が損ねられてことがあった。
それを防ぐため各種の合理的・合法的防衛策がガイドラインとしてまとめられた訳である。

敵対的買収後進国の日本は、先人の苦労と成果物を有効に活用すれば良い訳だ。

記事の概要は添付ファイルをご参照して頂くとして、ファイナンシャル・タイムズの深い分析は欧米の読者層の見識を想像させるものがある。



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早春の京都を旅する

2005年03月21日 | 旅行記
kannchiin2toujiKinnkaku


3月19日土曜日から21日月曜日にかけて、妻と次女と京都の実家へ行った。(写真は左から東寺の塔中観智院、東寺の堀、金閣寺)
19日の午後に妻の実家の墓参り(太秦)を済ませた後、金閣寺に寄ってみた。
4年前に金箔の修復が終わったということだが、新しい金閣寺を観るのは始めてである。
金閣寺をデジカメで撮る時は、露出補正に要注意だ。金箔が眩しすぎて、露出がアンダーになる可能性がある。
+1で撮った写真がキレイに写った様だ。

22日は東寺に行く。曇って寒い日であるが、五重塔の一階が一般公開されていた。

家内は「立派な仏像が多いけれど皆似たように見える」という。しかし良く観ると仏様の表情は様々だ。かなり日本的なお顔から明らかにインド的なお顔まで様々である。 特に象に乗った帝釈天のお顔は異国的である。

宝物館では長年お会いしたかった兜跋毘沙門天に出会った。この毘沙門様はギリシアのヘルメス神がインドに来て、クベーラ神と融合したものである。お像は中国は唐時代の作で、西域の雰囲気を良く伝えるものである。

東寺の仏様は時空の旅の証人である。



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