金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

大企業はユーロの崩壊を視野に入れ始めた

2011年11月30日 | 金融

昨日「ユーロは大丈夫か?」という記事を書いたところ、「欧州より」さんから次のような貴重な現地情報を頂いた。

実は、28日夜のフランスのニュースで公表されたので、秘密ではなくなったようですが、厳格な財政規律を守れる北の国6カ国で、新たなユーロを作る構想があります。

このような情報が欧州でどの程度広がっているのかは分からないが、今日のFTやロイターは「欧州の大企業はユーロ崩壊に備えて危機対策を検討し始めている」と報じていた。

ロイターはデンマーク(ユーロ圏外)の世界的なインシュリンメーカー・ノボ・ノルディスクがユーロ崩壊の影響を模索し始めていると報じていた。FTは英国の酒造メーカー・ディアジオ社のモルガン社長の「ユーロの崩壊とはどのようなものか考え始めたところだ。ユーロの周辺でより大きな変化が起きると我々も異なった状況に入る。ユーロから離脱する国では、大きな平価切下げが起こり輸入品は極めて高くなる」と述べている。

世界的に事業展開を行なう会社の中には「ユーロの崩壊は暗い話だが管理可能だ」と述べる先もある。フォルクスワーゲンのポルトガル現地法人の財務責任者は「ポルトガルがユーロ圏から離脱することがあっても、全般的なインパクトはそれほどネガティブなものではない。何故なら我々は輸出業者であり、世界的なグループの一員だからだ」と述べている。つまりポルトガルの通貨(昔に戻るとエクスード)が安くなると輸出競争力が増えるからプラスという話だ。

フランス、イタリア、スペインの経営者の中には「企業がワーストケースシナリオとしてユーロの崩壊ということを考えているということが一般に知られるようになると、そのことがユーロ圏の安定に対してより大きな脅威になると述べている。

だが「考えられない(ないしは考えたくない)ことを世界的な企業はワーストケースシナリオとして考え始めたことは着目しておいて良いだろう。

もし仮にユーロが崩壊するとどのような経路をたどるのだろうか?

一般的にはギリシャやポルトガルのような多重債務国がユーロを離脱するという見方が多いだろうが、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの為替ヘッド・サイモン・ディック氏はドイツが国債の価値を守るために自らユーロを離脱するのではないか?という見方を示している。恐らくその場合はフィンランド等がドイツに同調するのだろう(私見)。

恐らく多くの人々は「ドイツは自分の言い分が通らない時はユーロを離脱するということをleverageとして、連帯保証を行なうとともに南欧諸国の財政政策に強く関与する権限を得る・・・」という落ち着きどころを予想しているのだろうが、「考えられないことを考える」必要も出てきたようである。

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今年も103万円の壁を越えた

2011年11月30日 | うんちく・小ネタ

年末調整の季節が近づいてきたが、今年も配偶者控除が受けられない。アルバイトをしているワイフの給料が103万円を超えるからだ。ご存知のとおり給料等から65万円の給与所得控除を差し引いた「所得」が38万円を超えると配偶者控除を受けることができない。

ワイフのパート仲間では年間給与を103万円以下に抑えるべく、働く時間を調整している人がいるようだが、僕はそのようなことはしなくても良い、気兼ねなく働いていいよと言っている。夫婦の税引き後の収入を細かく計算すると、103万円以下に押さえる方が得かもしれないが、次のような理由から小細工はしないことにしている。

第一の理由は僕は「配偶者控除」という制度に反対だからだ。何故か?というと配偶者控除があるために、主婦の賃金(特に時間当たり賃金)が低く抑えられる傾向があり、それがサービス業全体の低賃金につながっていると考えるからだ。また主婦がより多くの所得を得ると夫婦の可処分所得が減るというのは経済的に不合理である。これから労働人口が減少するのに、女性の労働力の活用を阻害するような税制はおかしいのである。

第二に妻が自分の裁量で働いて自由に使えるお金を増やすことは「夫婦の自律した関係を高める」上でプラスになるからだ。気兼ねなく好きに使えるお金が増えることはストレスを減らし、人生を豊かにするだろうと僕は考えている。

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iPS細胞の山中教授の講演を聴いた

2011年11月30日 | うんちく・小ネタ

昨夜(11月29日)神戸大学OB会主催の山中教授の講演会が東京商工会議所で行なわれた。最近まで知らなかったのだけれど山中教授は神戸大学医学部の卒業生だった。その縁で1時間弱の講演会が行なわれた次第。

教授の話は「何故自分が幹細胞の研究に進んだか?」ということから始まり、現在の研究状況や課題で終わった。印象深かったエピソードを幾つか紹介してみたい。

山中教授は学生時代打ち込んでいた柔道で何度も骨折した。それがきっかけで医学部で整形外科を学んだ。卒業後国立大阪病院で臨床研修医となるが、ALS(萎縮性側索硬化症)など整形外科で直すことができない病気があることにショックを受け研究者となることを志した。

やがてカリフォルニア大学グラッドストーン研究所に留学し、ねずみを使ったES細胞(胚性幹細胞)の研究を始めた。

ここで第一のエピソードがある。それは指導教授のRobert Mahkeyから「研究者はVWが大事だ」と教えられる。山中教授はMahleyがフォルクスワーゲンに乗っていたからそのことか?と思ったと冗談を交えながら、VはVisionのV、WはworkhardのWと説明する。そして自分はそれまでもworkhardだったけれど、改めてvision高い目標を掲げてそれに向かって進むことが大事だということを認識したと述べる。

やがて山中教授は帰国し、大阪市立大学医学部の助手となった。ここで第二のエピソードがある。それはPADになったということだ。PADって何か?というとPost America Depression(アメリカ帰国後鬱病)である。アメリカに較べて研究環境が悪いことや「人を誉めない」日本の医学界の状態に強いショックを受けたのである。山中教授はアメリカではノーベル賞受賞者やそのクラスの研究者と気楽に話しをして、彼等から誉められていたが、日本に帰ると「ねずみの杯細胞ばかりやってないで役に立つことしたら?」などと言われて愕然としたのである。

だが1999年に奈良先端科学技術大学院大学の助教授になり、基礎研究に復帰してついにiPS細胞の開発に成功した。私が感銘を受け第三のエピソードは山中教授が「iPS細胞の開発は自分と一緒に研究した大学院生や技官達の功績だ」といってスクリーンに彼(彼女)等の写真を写したことだ。

iPS細胞の開発のような大掛かりな研究にはチームプレーが欠かせない。教授が率いる京都大学iPS細胞研究所は200名近いスタッフを抱えるが、8割以上は非正規雇用者だ。教授は彼(彼女)等の人件費確保に非常に気を使っている。

第4のエピソードは日本の研究費が余りにも貧弱だということだ。配られた「幹細胞ハンドブック」によると「国際的にも幹細胞への期待が高まり、カリフォルニア州政府は10年間で30億ドル(2,460億円)マサチューセッツ州は10億ドル(820億円)イギリスは10年間毎年数千ポンド(十億円~百億円超)の予算を用意しているが、日本の文部科学省は5年で100億円の支援を決めた」とある。

山中教授のような稀有の才能の持ち主に余りお金の心配をかけずに研究に専念して欲しいと思うのは私だけだろうか?

(ご参考までに幹細胞の簡単な資料を添付しました)

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ユーロは大丈夫なのか?

2011年11月29日 | 金融

市場は時として調査機関等の警告を軽視する。昨日(11月28日)ムーディーズはユーロ圏の複数国家がデフォルトし、ユーロ圏を離脱する可能性は無視できないと警告を発した。その数時間後にOECDは、ユーロ危機に対する欧州の政治家の動きは余りに遅い、ユーロは世界経済に対するキーポイントとなるリスクだと警告した。

また先週エコノミスト誌はIs this really the end?という記事で「ドイツと欧州中銀がもっと迅速に動かないと単一通貨の崩壊が迫っている」と警告した。

しかし昨日IMFがイタリアに金融支援を行なうのではないか?という観測記事がながれたこともあり、株式市場は米国の好調なクリスマス商戦の開幕を好感して大きく上昇した。

欧州では今日財務相の会合があり、救済ファンドの増額方法について合意点が模索され、ギリシャのデフォルトを防ぐため80億ユーロのローン契約がサインされることも期待されている。そうなると一息つくことができそうだが、来年1月の最終週にはイタリア国債300億ユーロのリファイナンスが待っている。債券市場がイタリアリスクに尻込みし、欧州中銀がイタリア国債の購入に動かない場合は世界第3位の国債発行国がデフォルトに陥る危険性が高まる。

エコノミスト誌は記事の中で「大部分の人は最終的には欧州の指導者達は単一通貨を守るために何でも行なうだろうと推測しているが、金融パニックと急速に悪化する経済見通しと馬鹿げているほど頑固な瀬戸際政策のため、ユーロが軟着陸する見込みが減少している」と警告する。

エコノミスト誌の主張~そして英米の政治家の主張だが~は、即座の解決策を提供できるのは欧州中銀だけなのだから、中銀は最後の貸し手として、無制限の流動性を供給し、国債を買うという量的緩和を実施するべきだと主張する。

いわば米連銀と同じように「バズーカ砲」を打て、というのだ。一方応戦するドイツは「欧州中銀は危機対応策を提供するバズーカ砲ではない」と主張する。ドイツが恐れるのはユーロという通貨同盟がドイツなど税制面で余力がある国が南欧諸国を救済する「財務移転同盟」に衣替えするリスクだ。

エコノミスト誌は「南欧諸国は(政権を交替させ)財政緊縮と改革をはっきり表明しているから、モラールハザードの懸念は後退している。もしドイツが態度を変えないとユーロは崩壊する」と警告する。

FTはポーランドのシコルスキー外相の「欧州でドイツだけがユーロ圏を救済できる国だからドイツはユーロを破滅から救うべきだ」という呼びかけを記事にしていた。

英米系のメディアを見ていることもあり、ドイツに対する警告は高まっている(ドイツのメディアも見たいがドイツ語は簡単に読めない)。ドイツが瀬戸際外交の落しどころを理解していると期待するのみである。

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ブラックフライディ売上好調でアジア株上昇

2011年11月28日 | 株式

今日(11月28日)のアジア株はおしなべて好調だった。日経平均は127円1.6%上昇。FTによるとMSCIパシフィック指数は1.7%上昇、これは11月4日以降一番の上昇だ。

株式相場が好調だった理由は、日曜日に全米小売業協会が発表したブラックフライディの売上が非常に好調だったこととIMFがイタリアに金融支援を行なうのではないかというレポートを投資家が歓迎したからだ。

ブラックフライディというのは、感謝祭の後の11月の第4金曜日の通称で、この日からクリスマス商戦が始まる。なぜブラックフライディというかというとこの日小売業が黒字になる(つまりブラック)からだとそうだ。

全米小売業協会によると、買い物客一人当たりの消費額は昨年比9.1%の伸びでこれは2006年以降最大の伸びだ。

1週間ほど前のギャラップ調査を見ると、米国の高所得層(年収9万ドル以上)の経済への信頼度合いの改善が続いている。といっても8月には経済状態は悪くなっているという人の割合が8割で11月にはそれが7割に減ったという話なのだが・・・・

このようなセンチメントの変化がサイフの紐を予想外に緩めたのだろうか?

長続きするかどうかは分からないが、暗い話題が多い中ちょっと明るい話ではある。

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