「単独行より仲間と登山」というタイトルを見ると「山登りの話か?」と思われる人が多いと思うが、主題は山ではなく友情の話である。ただスタートは丘を登るところから始まる。
ニューヨーク・タイムズによるとバージニア大学が面白い研究をした。その研究というのは「34名の学生を急な丘の下に連れて行き彼等に重りを入れたザックを担がせ、丘を登らせて傾斜を見積らせる。ただし何人か友達と一緒に登らせ、何人かを一人で登らせる。その結果分かったことは友達と一緒の登った人の方が一人で登った人よりも傾斜を緩く見積った。更により長い間友達だった人の方がより傾斜を緩く見積った」というものだ。
このことは友情が厳しい環境を楽観視させることを示唆している。この記事のタイトルはWhat are friends for? A longer life 「友達を持つことは長生きにつながる」というものだ。
記事によると10年にわたるオーストラリアの研究で高齢者について大きなサークルの友人を持つ人々は研究期間中より少ない友人を持つ人々よりも22%死亡率が低かった。「友人関係は心理的な幸福について家族関係よりも大きなインパクトを持つ」と述べている研究者もいる。
色々な研究成果は友人を持つことが健康に有用な効果を持つことを示しているが、何故そうなのか?は明らかではない。ただ強い友人関係を持つ人はそうでない人よりも風邪を引きにくいので、恐らく彼等はストレスレベルが低いのだろうと記事は推測している。
話は変わるが先週長年の友人であるカタカナ生保のスーパーセールスマンを招いて会社でお話をして貰った。その時彼が言っていたことで強く印象に残っているのは「年を取るほど所得格差は拡大する。高齢の低所得層は『引きこもり』傾向があり、これがうつ病のリスクを高める。また歯の治療等が不十分になり健康を悪化させ寿命が短くなる。・・・・だから若い時から生面保険を使ったライフプランが大事」という話。後段の生命保険のセールス部分はさておき、低所得が友人との交友を含めて社会的活動を低下させそれが健康に悪影響を及ぼすとすればこれは由々しき問題である。
スーパーセールスマンの講演の後は彼とお酒になった。曰く「年をとっても登山なんか良いですよね。ゴルフよりはお金がかからないし」
確かにそうである。山ではプレーフィーはいらない。要るのは交通費と食事・宿泊代程度。山登りのために日頃から適度な運動をすれば健康に大いに役立し、お仲間がいれば山坂も緩く見えるから一石二鳥だ。
もっとも山仲間には結構酒飲みが多く、下山後駅前の安い酒屋でドンちゃん騒ぎをすることもあるから、私の場合お仲間登山の方が単独行より楽で健康であるとは断言できないのである。