今年は「働き方改革」が具体的に推進された最初の年だった。大企業における時間外労働の上限などは4月から実施されている。だが顧問先の実態などを見ていると「働き方改革」の主要テーマが残業時間の削減等にフォーカスされて、本当の意味で多くの社員が高いモチベーションを持って仕事をするにはどのように会社は変わるべきか?ということまで議論が深まっていないと感じた。
つまり「ワーク・ライフバランス」が腹落ちしていないのである。何故腹落ちしないのか?というと私は「仕事」と「生活」というものを対立する命題ととらえtrade-offの関係にあるという整理から抜け出せないことに問題があると感じていた。
ところが今日CNBCで「マイクロソフトのCEOがワーク・ライフバランスの替りにこれを実践しアマゾンのCEOジェフ・ベゾスも同意している」という記事を読んで啓発されるところがあった。
マイクロソフトCEOのサティア・ナデラがワーク・ライフバランスの替りに何をやっているか?というと「ワーク・ライフハーモニー」だという。仕事と生活の調和である。
ナデラ氏の3人の子供の一人は重度の障がい者で、マイクロソフトは障がい者を助けるための人工知能の開発に25百万ドルの支援をおこなうと発表している。ナデラ氏は「マイクロソフトは私の夢を実現するプラットフォームである」と述べ、わワーク・ライフハーモニーによって大いなる満足と仕事に戻るエネルギーを得ている」と述べている。
またベゾス氏は「仕事でハッピーであれば家庭でもハッピーで、良い夫、良い父親でいることができる。家庭でハッピーであれば私は活力に満ち溢れ仕事に戻ることができる」と述べている。
ワーク・ライフバランスかワーク・ライフハーモニーか?という問題は前者が主に「時間的な割り振り」を考えるのに対し後者は「意味づけ」を考えるのだと私は解釈した。
仕事と生活を時間の割り振りで考えると二つはトレードオフの関係にある。つまり自分や家族を満足させる時間を増やそうと思うと仕事に捧げる時間を減らさざるを得ない。仕事に捧げる時間を減らすとアウトプットも減るというトレードオフ思考に陥ってしまう。だが弁証法的アプローチで考えてみると仕事と自分や家族に捧げる時間を質的に高めることでトレードオフを抜け出すことができる可能性がありそうだと私は感じた。
別の切り口で考えると、「仕事の中身を抜本的に見直し無駄なことはやめてしまう」というのも発想の転換だ。
ナデラ氏やベゾス氏から少しお知恵を拝借し、仕事と自分や家族を満足させる時間を調和させるには何をすれば良いか(または何をしなければ良いか?)を弁証法(一見両立しない二つの命題を統合的に解決する方法論)で考えると見えてくるものがありそうだ。