金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

コリアパッシング

2017年08月31日 | ニュース

コリアパッシングKorea passing「韓国を無視した米朝交渉」という言葉は少し前から韓国のメディア(中央日報等)では取り上げらている。

昨日(8月30日)のWSJはSouth Koreans feel overlooked by U.S. in North Korea Debateという記事でコリアパッシングの状況を紹介していた。

今週の北朝鮮の日本の上空を超えるミサイル発射実験の後、トランプ大統領と安倍首相は40分にわたって電話会議をおこなったが、韓国の文大統領との間ではまったく電話会議はなかった。

韓国の文大統領は「北朝鮮に対する軍事的な攻撃については韓国の承諾を必要とする」と演説の中で述べているが、多くのアナリストは「米国の安全保障が脅威にさらされた場合、米国が韓国に北朝鮮攻撃について許可を求めることはないだろう」という見解を示している。

北朝鮮の短距離ミサイル・火砲はソウルに照準を定めているが、韓国にはオプションがない状態が続いているのだ。

北朝鮮は文大統領の南北会談提案を無視し続けている。北朝鮮は韓国を米国の傀儡政権とみなし、米国との直接交渉を望んでいるからだ。

今年4月にトランプ大統領が中国の習近平主席と会談した後、トランプ大統領は「習主席は古代に遡れば朝鮮は中国の一部だった」と説明した。この発言は歴史家の批判を浴びたが、ソウル市民は米韓関連性低下の兆候であると見ている。

ところで現在トランプ政権は北朝鮮問題について異なったメッセージを発している。

トランプ大統領が北朝鮮との対話の窓口が閉ざされたことを示唆する一方、マティス国防長官やティラーソン国務長官は外交という選択肢を示唆しているからだ。

これは政権内の意見の不一致ではなく、複数のメッセージを出すことで、北朝鮮を外交テーブルに座らせようとする米国の姿勢の表れだと私は解釈しているが如何なものだろうか?

あるいはむしろ水面下ですでに何等かの交渉が始まっているのではないだろうか?

いずれにせよ韓国は蚊帳の外でコリアパッシングに変わりはないが。

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北朝鮮での軍事衝突の可能性を50%から35%に引き下げ~野村證券

2017年08月30日 | 投資

先週野村證券は提携先の政治地政学コンサルタントAlavan Business Advisoryの意見を元に北朝鮮で軍事衝突が起きる可能性を50%から35%に引き下げていた。

昨日(8月29日)北朝鮮は日本列島の上を越える弾道ミサイルテストを行った。このニュースに円は対ドルで買われ108円台に上昇したが、昨日のニューヨーク市場ではドルが買い戻され109円台後半で取引されている。米国株は朝方低く寄りついたものの、北朝鮮問題についてはそれほど悪材料とはとらえず上昇して取引を終えた。

野村證券のアナリストは、昨日のミサイル発射テストは想定範囲内のものとして、北朝鮮問題に関する緊張はコントロールされていると述べている。

CNBCは「米国の「炎と怒り」という北朝鮮政策は完全に失敗している。米国はもっと北朝鮮との外交的解決を目指すべきである」という安全保障・外交政策ストラテジストJoel Rubin 氏の意見を紹介していた。

感情的にははなはだ面白くないことだが、北朝鮮を相応の軍事力を持った国であることを米国が認めて、外交交渉のテーブルに着くのが、現在のところベストの選択肢ではないか?と私も考え始めている。

前政権で極東アジア政策顧問を務めていたMerrill氏は次のように述べている。

"People sometimes forget that sanctions carried to an extreme can sometimes get us into real trouble," he told "Closing Bell," pointing to the oil and scrap metal embargo on Japan in the early 1940s.”"When they felt that their economy was being choked they responded with a military attack on Pearl Harbor.”

「人々は時々過度の制裁が本当のトラブルを引き起こす可能性があることを忘れる。1940年代始めの石油とくず鉄の日本への輸出禁止が日本を真珠湾攻撃に向かわせることになった。」

 

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話は「3」を意識するとまとめやすい

2017年08月29日 | 資格・転職・就職

来月早々顧問先で内定者向けに話をすることになっている。テーマはお任せするということなので「情報発信力を高める」ということにした。

今回の話の中身は、情報発信ツールの話ではなく、相手を納得させる構成の作り方の話だ。

今朝読売新聞を読んでいると「論理的に話し説得力を…結論から提示 研修開く企業も・・・」という記事があった。まさに私が話そうとしていることと同じだ。

ただ記事にはなかった点で私が今回話をするのは「話は「3」を意識するとまとめやすい」ということだ。

世の中には「日本三景」とか「日本三大名瀑」などと3をもってトップ集団とすることが多い。もっとも三大名瀑については「熊野の那智の滝」「日光の華厳の滝」「奥久慈の袋田の滝」とする説が有力だが、袋田の滝については全国区ではなく別の滝を入れる人もあるようだが。

それはさておき経済面でも三要素というのはよく使われる。企業を診断する場合は「成長性」「安定性」「収益性」の3要素が重要だし、不動産鑑定では三面等価の原則(理論的には市場価格・収益価格・再構築価格は等しくなるという理論)という。

つまり世の中のことはかなり3をベースに構成されているのである。

なぜ3なのか?一つはカメラの三脚で分かるとおり3が一番安定した形だからである。人は安定を好むので2や4ではなく3を選ぶのだろう。

次に3つなら覚えやすいということだ。8つや10になると中々覚えにくい。

「3を意識して話をまとめる」手法は理由を列挙する場合に典型的に使える手法だ。

「私は〇〇をやるべきだと思います。理由は次の3つです」という具合にだ。

理由は多ければ多いほど良いというものではない。数が多すぎると聞き手はどの理由が重要か判断できなくなってしまう。

3つなら覚えやすいし判断もしやすいのだ。だからストーリーは「3」を意識して構成するべきなのである。そうすると情報発信力が高まるのである。

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映画「関ケ原」、役所「家康」の熱演を楽しむ

2017年08月28日 | 映画

昨日映画「関ケ原」を観にいった。

近年では稀な歴史大作だ。映画は岡田准一演じる「石田三成」と役所広司演じる「徳川家康」の対立を主軸に展開する。

映画は司馬遼太郎の「関ケ原」をベースにしているが、映画らしい味付けもある。石田三成が心を惹かれる女忍者・初芽(有村架純)の登場などは原作にないアレンジだ。

出演者の熱演を楽しむことができる映画だったが、圧巻は役所広司演じる家康だったと私は思った。特に特殊メイクで家康が太鼓腹を示すシーンに圧倒された。平岳大演じる島左近も迫力があった。

馬上から手槍を投げるシーンでは、岡田・三成の身体能力の高さが目に付いた。もっとも本物の石田三成がこれ程の武芸達者であったかどうかは分からないが。

映画は「野望」の家康対「正義」(豊臣家への忠誠)の三成という構図で展開していく。これは司馬遼太郎のストーリーの通りなのだが、私は関ケ原の戦いの原因はそのように単純なものとは見ていない。

むしろ対立軸としては秀吉家臣群の中の「戦闘軍団」と「統治官僚」の戦いという色合いが強い。戦闘軍団は秀吉の天下取りの戦い(賤ケ岳の合戦など)を通じて秀吉政権の創業に貢献があったグループだ。一方石田三成を中心とする統治官僚グループは、太閤検地などを通じて政権基盤の確立を進めてきたグループだ。

「戦闘軍団」と「統治官僚」の対立は「地方分権的な封建制度」と「官僚による中央集権制度」の対立軸であったともいえる。

仮に関ケ原の戦いで石田三成が勝ったとすれば、戦後の体制は「官僚による中央集権」色が強いものになっていただろうと私は考えている。

もっとも関ケ原の一戦に西軍が勝ったとしても、懐の深い家康がそのまま首を取られたり、屈服する可能性は低いから、封建制の東国と中央集権的な西国の対立がしばらく続いた可能性の方が高いかもしれない。

関ケ原の戦いの後、成立した徳川政権は信長・秀吉と続いた絶対王政的政権ではなく大名連合的な封建制度であった。そして徳川政権は「戦闘軍団」的な大名集団を巧みに地方官僚集団に転換していったといえる。

日本に中央政権が成立するのは約270年後の明治維新である。封建体制では西欧列強の中央政権による帝国主義に対抗できなくなったからである。

関ケ原の戦いで封建制度が確立し、中央政権の動員能力が低下した結果、無用な海外侵略が行われず、パクス・トクガワーナと呼ばれる250年以上の平和な時代が続いたことを思うと「家康の野望」は悪いものではなかったともいえる。

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イエレン議長、金融規制擁護演説でコーン氏の次期総裁の可能性が高まる?

2017年08月26日 | 投資

昨日(8月25日)ジャクソンホールで行われたイエレン連銀議長のスピーチでは、市場が期待していた今後の金利引き上げに対する言及はなかった。

市場ではイエレン議長が金融引き締めに言及するのではないか?という予想があったため、言及しなかったこと自体連銀が金利引き上げを急いでいないのではないか?という見方がでたようだ。

その結果、米国国債の金利は低下し、ドルは主要通貨に対し値を下げた。またダウとS&P500は、小幅上昇し、ナスダックは小幅下落した。

イエレン議長は足元の景気や金融政策に言及するかわりに、連銀が10年前の金融危機以降取ってきた金融規制強化策の正当性を擁護した。

トランプ大統領は「2010年のドット=フランク法による金融規制強化により、お金を借りたい人が借りることができなくなっている」と規制緩和を訴えているが、イエレン議長はスピーチの中で「金融規制改革は、不当に信用供与や経済成長を阻害することなく、金融システムの回復力を著しく高めた」と述べた。もっともイエレン議長は今後規制緩和について連銀は再評価・見直しをコミットすると付け加えた。

イエレン議長の任期は来年2月に終了する。トランプ大統領はイエレン氏も次の連銀議長の候補の1人であるとは言っているが、今回のジャクソンホールでのスピーチは、ホワイトハウスにネガティブな印象を与える可能性は大きい。

その結果国家経済会議議長のゲイリー・コーン氏が連銀議長候補にノミネートされる可能性が高まったと思われる。

ゴールドマンザックスの社長を経験したゲイリー・コーン氏が連銀議長を務めることになると、約40年ぶりに経済学者以外の人が連銀議長にを務めることになる。

これから先市場の関心事は次の連銀議長候補に向かっていくだろう。

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