金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

株は買い時ですか?

2008年10月31日 | 株式

株価大暴落に少し歯止めがかかってきたように見える。英字新聞を見ても少し前までBear(弱気)の文字ばかりだったが、最近は少しBull(強気)の文字も見られるよになってきた。株は本当に割安か?今が買い時なのか?という問いに対してLeonhardt氏が記事をニューヨーク・タイムズに寄せていた。参考になるところがあるので、ポイントを紹介しよう。

強気、弱気の交錯する中で著者は「自分の好きな株価判定の方法は、ベンジャミン・グラハムとディビッド・ドットが推薦する過去の~最低でも5年理想的には10年の~実績『株価収益率』(株価÷純利益)をベースとする方法だ」という。

この過去10年PERは過去1世紀について信じがたいほど安定したストーリーを告げる。それは平均するとPERは16になるということだ。1920年代や60年代のように20に長い間とどまっていたことは過去に何回かあった。しかしその後には絶えず大きな株価下落や長い間のパフォーマンスの低迷が続いた。

現在株価は大幅に下がっているが過去10年PERで見ると16弱というところで、歴史的な水準から見ると平均程度だ。ということはこの暴落の前に株価は相当過大評価されていたということになる。

この方法で日本株の水準を見てみよう。トヨタ自動車について手元で簡単に見ることができる2005年から2008年の実績PERは8.4だ(平均一株当り利益は457円、株価は3,850円)。また私が注目している自転車変速機等のシマノは12.3倍になる。シマノの場合は過去8年間の平均純利益を使った。純利益が大きく伸びているので過去PERを使うと数値は高めにでる。

PER16の法則によると買い対象になる日本株はかなりありそうだ。しかし予想PERが予想に過ぎないように過去の純利益も将来の純利益を保証するものではない。今はじっくり企業の中身を見ながらPERを自分で計算してみる時期だろう。今回に関しては買い時はそんなにすぐなくならないような気がする。

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どのように情報をキャッチするのか?

2008年10月30日 | うんちく・小ネタ

昨日Onikeiさんという方から「どのようにして情報をキャッチしているのですか?」という主旨の質問を頂いたので、ここでお答えしようと思います。まず私は情報を二つに分けて考えています。一つは単なる事実。例えばある日株価が上がったとか下がったという事実、いわばニュースです。もう一つは個々の事実を結ぶ地下水脈のような世の中の流れでいわば「真実」です。これについてジャーナリズムの元祖リップマンは次のように述べています。

ニュースと真実は違う。ニュースは一つの出来事が起こったことを知らせる合図であり、真実は「隠された事実を表面に出し、それを相互に関連付けて、人間がそれに基づいて行動できるように現実の情景を作ること」だ。

役に立つ情報とは「真実」なのです。逆に言うと良い情報を得るこつは絶えず「何が地下水脈なのか?何が真実なのか?」という気持ちをもって情報に接することだと思います。

残念ながら日本の新聞・雑誌は事実(ニュース)を追いかけることに力点を置き、「真実」を掘り出すことを軽視しています。この点英国のエコノミスト誌(週刊なのですが新聞という位置付けだと聞いたことがあります)は、「真実」にフォーカスしている代表的な雑誌です。これに匹敵する新聞・雑誌は日本にはありません。

残念ながらエコノミスト誌の完全日本語版はありません。ただインターネットで重要記事を邦訳したものは読めるようです(有料サイト)。エコノミスト誌の英語版はインターネットで購読することができます(年間1万円程度)。実は私の情報もエコノミスト誌によるところが大きいのです。エコノミスト誌を読んで、大きな概念図を作りそれから日本と外国の新聞などで、細かいニュースを読み「真実」をダブルチェックしています。

以上簡単ですがお答えにさせて頂きます。

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Max out (イディオム・シリーズ)

2008年10月30日 | 英語

Max outは「クレジットの限度が一杯になる」とか「すっかり酔っ払う」という意味だ。ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。People are completely maxed out with mortgages, home equity lines and credit card debt.

「人々は住宅ローン、不動産抵当ローンとクレジットカードの与信限度を完全に一杯まで使い切っている」

この文章は「消費者は次の危機はクレジット・カードだと感じている」という記事の中にあったものだ。米国では今年前半に210億ドルのカード債権が償却されたと推定されている。またアナリストは向こう1年半で550億ドルの不良カード債権の償却が発生すると予想している。現在の損失水準はカード債権残高の5.5%だが、ITバブル崩壊後の不良カード債権比率7.9%を超えるのではないかと予想されている。

焦付きリスクを恐れるカード会社はカードの拡販を押さえ、未使用のカード枠の削減に動いている。住宅ローンをパッケージにした債券類が投資家に敬遠されると同様にカードローンを証券化した商品も敬遠されているため、カード会社の資金調達コストが上昇していることもカード会社を慎重にさせている一因だ。

借金してものを買うことになれていたアメリカ人にとって、ホームエクイティ・ローンに続いてもう一つの蛇口も狭められた訳だが、このため消費の回復には時間がかかりそうだ。郊外の広い家に住み、大きなSUVを乗り回し、クレジットカードでジャンジャン買い物を楽しむというアメリカン・ドリームは遠い昔の話になってしまったのだろうか?

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忘れる前にきそうなオイルショック

2008年10月29日 | 社会・経済

世界経済のスローダウンから原油価格は1バレル60ドル前後に下がっている。国際エネルギー機構(IEA)のホームページhttp://omrpublic.iea.org/によると9月の原油生産は110万バレル減少して、一日当たり8,560万バレルになった。こうなると今年の夏のオイル・ショックが遠い日の出来事に見えるから人間とは不思議なものだ。

しかし来月18日にIEAが発表する予定の「世界エネルギーアウトルック」は、再び原油不足の問題をクローズアップさせそうだ。ファイナンシャル・タイムズはこのアウトルックの原稿を入手し、その概要を記事にしている。それによると「原油産出量は生産性を高める特別な投資がない限り、年率9.1%の割合で減少するだろう」「また投資があったとしても、年率6.1%の割合で減少するだろう」ということだ。

向こう数年間は世界的な景気後退で石油需要がスローダウンするので、原油産出量の減産は余り意識されないだろう。また原油価格と需要の低迷は産油国の投資意欲を減退させる。しかし世界経済が成長軌道に戻りだすとたちまち原油不足が問題になる・・・ということだ。

ファイナンシャル・タイムズによると、IEAは2030年の石油消費量を昨年の予測116.3百万バレル(1日)から、106.4百万バレル(1日)へ下方修正するレポートを出す予定だ。

原油産出のために追加投資を行っても産出量が増えないということは、原油産出量がピークアウトしたということだ。ハバートが唱えたオイル・ピーク説が正しいとすると~米国の石油生産に関しては1971年にピークをつけてから減少の一途をたどっているので正しいことが証明された~、原油の産出量カーブはピークをはさんで対象的になる。つまり釣鐘型の右斜面を下るように減少していく。

世界経済が景気後退に入る今こそ本格的な省エネルギー投資と代替エネルギー投資に主要国が協力して取り組むべきだろう。さもないと数年後に再び同じような大混乱をもたらすことになる。

なおこれは個人的な直感だがひょっとすると、数年後のエネルギー価格高騰から発展途上国の発展に大きなブレーキがかかり、発展途上国は永遠に発展途上国で終わるかもしれない。発展途上国への過大な期待は危険かもしれない。

10年後位にはジェット燃料ももっと高騰しているだろう。キリギリスのようだが、円高の今日本人は海外旅行を楽しんだ方が良いかもしれない。今のところジェット燃料を代替するエネルギー源はないので、2,3世代後には海外旅行は特権階級のものになっているかもしれない・・・・・。

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不思議な株高

2008年10月29日 | 金融

昨日(10月29日)ニューヨーク市場でダウは10.8%、889ドル上昇した。最近はダウの2,300ドルの上がり下がりでは大したニュースにはならないが、さすが10%も上昇するとトップニュースになっている。VIXも13ポイント下落して66.96になった。もっともこれ自体とてつもなく高い数字なのだが。

株高は連銀の政策金利引き下げ観測と株価を割安とみた買いが入ったためだ。不思議なことはこの日発表された消費者信頼指数がアナリスト達の予想を大きく下回って38と低かったにも関わらず株価が大幅上昇したことだ。

この点についてアナリスト達も明快な説明はできないようだ。従って多くのアナリストは株式相場が底を打ったという見方はしていない。10%上昇しても10月全体ではまだ2割以上の株価下落だ。

だが株式市場が常に先を読んでいるとしたら、既に米国の消費者主導型のリセッションをかなり織り込んだと言えないこともない。問題はどの程度織り込んでいるかだが・・・・・

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