金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

経団連・同友会、英紙を賑わす

2008年05月31日 | 社会・経済

雨の土曜日の朝、ネットで英字新聞を繰っていたら、日本の経済団体が話題になっていた。特にビッグ・イベントがあった訳ではないと思うが、一つは経団連の御手洗会長がFTのインタビューに対して答えたもので「表題は経団連会長、柔軟な労働市場を歓迎」というものだ。

御手洗会長の話は「日本企業は利益を上げても、賃上げを行っていないではないか?」という政治家やマスコミの批判に答えたものだ。彼の主旨は「大企業は06年に1.7%、07年に1.8%、そして今年1.9%の賃上げを行っている」「経団連は利益を上げている会社に賃金を上げることを求めている」というものだ。

また御手洗会長は全体としてサラリーが停滞している理由は「生産性の低いサービスセクターにおける低賃金」「年功序列型賃金制度における高年齢者の退職」によるとしている。

政治家やマスコミは「90年には5分の1以下だった非正規雇用者が07年には3分の1を超えるようになった。これが所得格差を拡大し、若者の力と希望を失わせている」と主張している。これに対して御手洗会長は「パートタイム労働の増加で、産業の空洞化を防ぐことが出来たし、女性や高齢者に働く機会を与えた」と反論している。

ところでこの非正規雇用者の問題について、もう一つの経済団体・経済同友会は異なった見解を示している。同じ時期に出たエコノミスト誌の記事は「経済同友会の桜井代表幹事は『臨時社員もパート・タイマーも、同じ仕事をしている限りフルタイム雇用者と同じ給料を支払われるべきである」と主張している」と紹介している。

私も「同一職務・同一賃金」をベースにするべきだと考えているので、桜井氏の意見を支持したい(ただし私は桜井代表幹事の意見を直接読んでいないので、これ程明確に非正規雇用者の権利を擁護しているのかどうかは確認していない。)

余談になるけれど、桜井氏はリコーで欧州勤務が長かった人だ。一方経団連の御手洗会長は米国勤務が長かった人だ。欧州は同一労働・同一賃金の思想が強いところだ。二人の勤務地の違いがこの問題に対する見解の相違に影響を与えているのだろうか?

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社長を首になる確率

2008年05月31日 | 社会・経済

先週のちょっとした話題は29日の株主総会で、かつらのアデランスの社長他役員の再選任が否決されたことだ。一般の新聞で大きな記事になり、夕刊フジでも一面で取り上げられ、そして世界で一番格調の高いエコノミスト誌でもさっそく話題になった。もっともエコノミスト誌は刺身のツマ的にアデランスのことを取り上げたのであって、本題は日本のコーポレート・ガバナンスの変革速度である。

エコノミスト誌がアデランスの話を取り上げた理由は、米国のアクティビスト・ファンドであるスティール・パートナーが株主として初めてあげた勝利だからだ。コーポレート・ガバナンスとは端的にいうと、株主に高い利益をもたらすことのできない経営者を首にすることだ。日本のコーポレート・ガバナンスが低いということは、日本では業績を上げなくても、社長が中々首にならないということなのだが、実際はどうなのだろうか?

そんなことを考えながら、エコノミスト誌を繰っていると「社長になる道と首になる確率」という趣旨の記事が出ていた。まず首になる確率から見てみよう。

Booz社の調査によると、欧州では社長の37%は事実上首になり、米国では27%が、そして日本では10%がやはり事実上首になるという。そして欧州と米国では社長が首になる背景の3分の1は、取締役会の反対と権力闘争だということだ。どのようにして日本の社長の1割が事実上首になっているという計算を行ったのかは書いてないが、一つのデータとして覚えておいてもよさそうだ。

ついでにこの記事で面白かったところを見ておくと、「以前はマーケッティング部門から社長になることが、多かったが現在は財務部門(CFO)から社長になる確率が一番高い」「一つの会社で長く勤めたものの方が、幾つかの会社を渡り歩いた人よりも早く社長になっている」というところだ。

また一般には、欧州よりも米国の方がより資本主義的だと思われているが、この調査によると「欧州の社長の平均年齢は54歳で米国の56歳より若い」「アメリカで生涯同じ会社に勤めた人が社長になっている割合は26%で、欧州では18%だ」で、欧州の方がよりダイナミックで経営陣に厳しい社会ということだ。

常識は時々洗いなおす方が良いという一例だろう。

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リゾートはニコニコ現金払いが良いね

2008年05月30日 | うんちく・小ネタ

少し前にリゾートクラブ「四季の宿」などを運営するパルアクティブが民事再生法の適用を申請したという記事を新聞で見た。その時は「あーそうか」という位に思っていたが、今日帝国ニュース(これは右翼の新聞ではなく帝国データバンクという信用調査会社が出している日刊誌)で少し詳しい事情を読んだので思うところを書いてみる。

実は2,3年前少しお金が入ったので、リゾートクラブのメンバーシップでも買って見るか?とチョッと思ったことがあり、パルの資料もパラパラとみたことがあった。その時思ったことは「会員権が東急リゾートなどに比べると随分割安だが、そこが妙に気になる」ということだった。

幸い?にもまだ頻繁にリゾートホテルに泊まりに行く程の時間的余裕もなかったので、具体的な検討は止めてしまった。この時気になったことは、消費者として「リゾート運営会社の信用リスクをどうチェックするのか?」ということだった。

今のように金融を仕事としていると、帝国データのような調査機関からデータを得ることも可能なのだが、一般個人としては、非上場のリゾート運営会社の経営状況を把握することは極めて困難だ。

「帝国ニュース」によると、パルのビジネス・モデルは「過剰債務を抱えて民事再生法の適用を申請したホテル運営業者から安い値段でホテルを買収して拡大路線を突っ走り」ながら「会員数を1万人に増やした」ものだった。しかし裏では過大な広告宣伝費、買収費用、豪華本社の家賃などが負担となり資金繰りの悪化が進んだとある。

その結果担当弁護士が明らかにしたのは、給与遅配、税金・社会保険料や公共料金の滞納で、従業員は相次いで退職し、直営施設は運営不能となっている驚愕の事実だ。

先程、金融を仕事にしているので信用状況を把握できるといったが、無論これとて完璧なものではない。もし完璧に信用情報が把握できるのであれば、銀行は融資先の倒産で苦しむことはないのだが・・・・・

また1,2年の融資の回収ならいざ知らず、リゾートクラブのように長く利用する相手の遠い将来の信用状況を予想することはほとんど不可能と思うべきだろう。

ではどうすれば良いのか? 保守的で堅実な方法は会員権など買わないで「いつもニコニコ現金払い」に徹することである。これなら泊まるホテルが更正法を申請しようが、倒産しようが関係はない。

更に言うとテントでも車に積んで、旅を続けるともっと良いかもしれない。半分冗談だが。

とにかく「安く見える会員権」というか何事によらず「安く見えるもの」には裏がある・・・ということは肝に銘じておいて良いとあらためて思った次第だ。

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インドネシアがOPECを抜けた意味

2008年05月29日 | 社会・経済

インドネシアは昨日OPECから脱退した。同国はアジアでただ一つのOPECメンバーだったので、これでアジアのOPECメンバーはいなくなる。「・・・抜けた意味」とブログのタイトルを付けたが、抜けたこと自体は原油価格の動向等に影響を与えるものではない。インドネシアは産油国から原油の消費国に変り、原油価格が安い方がメリットがあるので、価格カルテルであるOPECから抜けた訳だが、2005年には既に原油の輸入国になっているから、実際上の影響はないだろう。しかしインドネシアの原油の産出と枯渇の状況は全世界の原油の将来を暗示するかもしれない。

インドネシアは1962年にOPECに加盟、1976年に原油生産量は頂点に達した。その20年後の1995年から、原油の生産量は減少し始め、2005年には原油の純輸入国になった。現在の生産量は1日1百万バレル以下になっている。

自分のデータベースとして原油の生産国を列挙しておく。()内は1日当たりの生産量で単位は万バレル。

サウジアラビア(1,086)ロシア(977)米国(687)イラン(434)中国(368)メキシコ(368)カナダ(315)ベネゼラ(282)UAE(297)クェート(270)

また10大消費国は、米国(2,059)中国(745)日本(516)ロシア(274)ドイツ(262)インド(258)韓国(231)カナダ(222)フランス(195)サウジアラビア(201)

また確認されている原油の埋蔵量はサウジアラビアが最大で2,643億バレル。世界の10大消費国が1日に使う原油量は約5千万バレルで、年間では約183億バレルだ。もし10大消費国がサウジの原油だけを消費すると15年弱で枯渇する(2,643÷183=14.4)計算だ。

原油はやはり有限の資源である。

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小池百合子によると解散引き延ばし

2008年05月29日 | 政治

28日のファイナンシャルタイムズ(FT)は、自民党の有力政治家達が「自民党は政権の座から滑り落ちることを恐れて衆議院の解散を出来る限り引き延ばす」と同紙に語ったと報じている。有力政治家の中で実名が出ているのが小池百合子だ。小池氏は「福田首相の元では総選挙は行わないだろう」「だって孫子も負ける戦いをしてはいけないと言っているでしょ」と話す。

「負ける戦いをしてはいけない」というのは孫子の根本原理だが、「孫子」のどこに書いてあるかというとパッとは思い出せないけれど、一番最初に「兵(戦い)は国の大事、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」とある。また「軍形」編に「勝兵は先(ま)ず勝ちてしかる後に戦いを求める」とある。つまり名将は勝てる状況を作り出してから戦いを始めるということだ。これらを総合すると孫子が負ける可能性がある無謀な戦いを最も忌むことが分かる。

記事の内容自体は自明の話なので、それ程面白くもないが、日本の政治家は日本のマスコミには話さないことを外国人ジャーナリストにはバンバンしゃべることが面白い。

最近ジェラルド・カーティスという米国人政治学者が書いた「政治と秋刀魚」という本を読んだが、これが面白かった。詳しいことは別の機会に書評を書くとして、一番面白いことは歴代首相を始め、日本の有力政治家が、カーティスさんにはドンドン秘密の話をするので、彼の手元には貴重な裏話が集まり、日本の政治の研究が進んだというところだ。

私がファイナンシャル・タイムズを読んでいる理由も同じところにある。つまり日本の新聞は「突っ込んだ話」や「当局を徹底的に批判する記事」を書くと次から情報を貰えなくなるので、どうしても「ちょうちん記事」を書く傾向がある。ところがFTなどはそんなことお構いなしにズバッと書くので、時々貴重な情報に出会うことがある。

ところで小池氏達のいう様に、自民党が来年9月の衆議院の任期まで政権の座にしがみついているとすると日本の閉塞感は高まる一方だ。もっとも今解散したところで、自民党と民主党の間で「争点」を選挙民に明らかに出来るかどうか疑問ではあるのだが・・・

さてFTを読む外人達は、ねじれ国会で立法力を失い、改革推進を進められない日本を見て、日本株に失望するのだろうか?それとも政治は政治、経済は経済と割り切って株式投資の判断をするのだろうか?

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