金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「民主主義を疑ってみる」~面白い本です

2024年04月13日 | 本と雑誌
 今年2月に発刊された梅澤佑介氏の「民主主義を疑ってみる」という本は面白い本です。面白いという意味は現在のもやもやした政治の世界に色々な補助線を引いていくことで、もやもやの一部が晴れてくるからです。
 たとえば今年の秋に選挙が行われる米国大統領選挙は、バイデン現大統領とトランプ前大統領の一騎打ちで、下馬評ではトランプがやや有利とも言われています。「議会への暴徒の乱入を先導し、民主主義への前代未聞の挑戦」と特別検察官に言われているトランプが、民主主義の卸元の国で多くの支持を集めることに違和感がありました。
 しかしこの本を読んでいくと(まだ半分も読み進んではいませんが)色々なヒントに出会います。
 民主主義草創期のアメリカを視察したフランスのトクヴィルは「エートスとしての民主主義」に着目します。エートスとは「社会の構成員によって共有されている意識、倫理的な心的態度」です。トクヴィルはアメリカの民主主義を観察して、人々は「自分の代わりに判断してくれる後見人を選挙で選出する」と喝破します。そしてこれにより人々は「指導されたいという欲求」と「同時に自由のままでありたいという願望」の両方を満たすことができます。
 著者は「アメリカの民主主義社会にトクヴィルが下したこのような診断は、民主主義と独裁という一見相反する二つの統治形態が、実はぞっとするほど近いものであることを明らかにするものでした」と述べています。
 本書を離れた私の考えですが、アメリカの大統領というのは、特に有事には非常に大きな権限を持つことができます。たとえば第二次大戦時の大統領の権限と日本の首相東条英機の権限を較べると大統領の権限の方が圧倒的に大きかったのです。
 また現在のロシアによるウクライナ侵攻や中国の覇権拡大活動を「民主主義と専制主義の戦い」という非常に単純な図式で説明しようとする人々もいますが、トクヴィルの議論を見ると図式はそれほど単純ではなさそうです。
 日本では自民党の裏金問題や小池知事の学歴詐称問題が問題になっています。これらは話は「政治家に何をやらせるか」という政策レベルの話ではなく「誰にやらせるか」という政治家の人格や能力に関わる話です。特に清潔好きな日本では、嘘つきとか金に汚い人は忌避されますね。
 でも人格的に高潔な人を選び、その人に丸投げするのであればある意味の貴族制です、と著者は述べています。
 中々面白い本ですよ。

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自著のKindle本が売れないのはタイトルが悪いのか?

2023年09月17日 | 本と雑誌
 私事ながら少し前にKindleで出版したChatGPT関連の本があまり売れません。他の著書がドンドン売れている訳ではありませんが、「エクセルとマインドマップでライフプランノートを作る」は割と読まれています。もっとも売れるというよりはKindle Unlimitedで読まれることが多いのですが。
 ところが「ChatGPTで『使える」日本語を学ぶ 外国人の学習」の方はあまり読まれていません。
 この本は「ChatGPTを使って、日本語の対話をしたり、文法上の疑問を解決しながら自分で日本語を学んでいくにはどのようにChatGTPを使えば良いか?」ということを、具体的なプロンプトの書き方から説明した本で日本語学習や教育に役に立つと思っています。
 でも考えてみると「セールス対象」と「タイトル」が悪かったのですかね。
 ChatGPTを使って日本語などの語学学習をすることは有効な手段ですが、考えてみると、私の書いた本を読める位日本語ができる外国人の人であれば、それ以上日本語を勉強する必要はないかもしれません。
 一方これから日本語を勉強しようと思っている外国人の人には少し難しいかもしれません。
 そして最大の問題は、この本がおそらく日本語を勉強しようと思ってアマゾンで本を探している人の眼に入らないということでしょう。
 もし本気で「日本語を勉強しようと思っている外国人の人に訴えるなら、英語か中国語で書いて出版するべき」だったのでしょうね。

 実は「ChatGPTで「使える」日本語を教える~外国人の日本語学習のために」というタイトルでの出版も検討したのです。このタイトルにすると「セールス対象」は明確です。ボランティアで各地で日本語を教えている方が対象になるからです。その数は分かりませんが、小さいながらもマーケットがあることはある、と思いました。
 しかし私のまわりでボランティアで日本語を教えている人の典型的なプロファイルは、シニアの女性の方でスマートフォンでLINEはやるけれど、パソコンはあまりと得意じゃない、ChatGPTなんて興味ない、というものです。
 だから日本語教師の方をターゲットとするのは難しい、と私は判断しました。
 一般に売れる本、売れない本は「タイトル」で決まると言われるようです。
 つまりタイトルが「具体的で分かりやすく」「訴求力があるかどうか」がポイントということです。
 でもターゲットとなる読者があまりいない、ということであればそれは「タイトルの良否」の問題ではなく、「出版というプロジェクトのフィージビリティスタディの良否」の問題だったのでしょうね。
 その点反省はしていますが、別に後悔するほどのものではありません。何故なら本を書く過程で、ChatGPTの使い方にかなり慣れることができたからです。また私が日本語を外国人に教える時に実際に役に立っているからです。
 Kindle出版にかかるコストは投入した自分の時間だけです。書いた本が売れないと無駄のようですが、本を書く過程で学んだ色々なことは知識として蓄えられ、いずれ活用されます。
 ちょっと負けおしみぽい、ですか?(笑)
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「偽りの夜明けを超えて①」~暑い中で真面目な本を1冊

2023年07月31日 | 本と雑誌
 暑い中ですが、真面目な本を1冊読んでいます。
 昔の中国では考え事をするのに適した場所を三上(馬上・枕上・厠上)と呼びました。現在の家庭環境ではトイレを長時間独占する訳にはいきませんが、馬上を車上と読み替えると列車の中や布団の中が考え事をしたり、読書をしたりするのに適した場所であることは現在も変わらないでしょう。出張が多かったサラリーマン時代に結構本を読むことができたのは、往復の車上やホテルのベッドの上が読書の場になったからでしょうね。
 さて今回ちょっと岡山方面に出かけた時、往復の新幹線の中で読んだのが、「偽りの夜明けを超えて①」中西輝政著 PHP研究所です。
この本は著者がVoice(PHP研究所)に掲載した論考をまとめたもので、コロナ以前・ロシアのウクライナ侵攻以前に書かれたものも含まれています。
 そしてコロナ以前・ウクライナ以前に書かれた論考がこの二つの歴史的なテストを超えて、輝きを放っているのは著者の視点の高さを表しています。
 著者が言いたいことは「日本人に自立の矜持(きょうじ)を持て」「現実主義の思想を持って現実を直視しろ」ということなのです。
 著者は主に「国としての自立」を論じていますが、国として自立の矜持を持つためには、個々人が人生の最大の目標として自立ないし自立の維持を目指すという心構えを持つことが大切でしょう。自助共助公助という言葉がありますが、災害・介護等についてもまず自助をもっと重視することが大事でしょう。
 超高齢化社会を乗り越えていくには、元気なシニアにはもっと自助を求める施策を取って良いと思います。
 これはこの本を離れた私の個人的な意見ですが、元気なシニアが自立力を一部失った人々を支援する共助や公助の活動に参加した場合は、それに見合う社会保険料や税金の控除を行うといった制度設計はできないものだろうか?と私は考えています。
 想定される活動範囲は広い。「買い物代行」「庭掃除」「エンディングノート作成の手伝い」「スマートフォンやパソコン操作の補助」「病院への送迎」等々。ボランティアとしてただでやってください、というのだけではサービスを提供する側のインセンティブが弱いと思います。
 良い知恵はないものでしょうか?
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2023/06/21

2023年06月21日 | 本と雑誌
最近Kindle本「ChatGPTで『使える』日本語を学ぶ」を出版しました。
ボランティア活動として行っている外国人の方への日本語レッスンでChatGPTを使ってきた経験をもとに、語学学習でChatGPTを実戦的に使う方法を解説した本です。
 語学学習以外のあるゆる場面でChatGPTの力を効果的に引き出す「プロンプト」(命令・依頼)の書き方を解説しています。
 Kindle Unlimitedから無料で読むことができます。



あなたもこの本が気に入るかもしれません。"ChatGPTで「使える」日本語を学ぶ: 外国人の日本語学習"(酒井 利直 著)

こちらから無料で読み始められます: https://a.co/hBxzEuG
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「不老脳」シニアのチャレンジ精神を鼓舞する一冊

2023年04月23日 | 本と雑誌
 最近和田秀樹さんの「不老脳」(新潮新書)を読みました。ほぼ1日ですっきり読める良い本だと思いました。私にとって。
 自分にとって良い本(ノンフィクション)とは何でしょうか?
 それは①著者の意見に7,8割賛同できる。②7~8割程度は既知の話で2~3割程度新しい知識を得ることができる③論旨が一貫していてブレが少ないからすっきり頭に入るということだと私は考えています。すっきり頭に入るから身になって具体的な行動指針になります。
 その点で「不老脳」は私にとって良い本でした。
 まず和田さんがこの本で何を言いたいか?を考えてみました。
 実はあんまり強く打ち出していないと思うのですが和田さんが一番言いたいことは「人生は楽しんで生きなければ意味がない」ということなのだと私は思いました。シニアになってもつまり人生の後半戦になっても楽しく生きるためには「前頭葉が機能不全に陥らないようにする」ことが大切だと和田さんは強く訴えています。なぜなら前頭葉が「自己認識」「自己抑制」「やる気」「ソーシャルスキル」など人間らしい生き方に関わる脳の働きを担っているからです。
 そして和田さんは「前頭葉を鍛えるには①二分割思考をやめる②人生実験をする③運動する④人とつながる⑤アウトプットをこころがけることが大切」と述べています。
 この本のから学ぶ具体的な行動指針はこの5点です。
 逆にいうともしこの5点を実践しているならば敢えてこの本を読まなくても良いかもしれません。
 もっともどんな素晴らしい行動指針にしても結論だけを聞いて腹落ちするとは限りません。腹落ちするには「なぜそうなのか?」という理由をしっかり理解したいという人もいるでしょう。
 その人はこの本を読んでみることです。そうすれば大脳の役割、認知機能等の理解が深まり、前頭葉の重要性を再認識すると思います。
 ただし私はこの本が言っていること総てに賛同している訳ではありません。
 和田さんは「楽しいことにお金を使う」という項目で、「70代、80代になって『貯金が減らないなあ』と思ったら、前頭葉を使うためにも、ためらわずお金を使って行動してほしいものです」と述べています。
 しかしこれは今後のインフレの進行や社会保険料の負担増、マクロスライドによる公的年金の実質目減りなどを跳ね返す収入源や資産を持っているごく限られた高齢者に当てはまる処方箋だと私は思います。正直なところ3,4千万円の金融資産を持っている層の人ではそこまで大胆に振る舞える人は多くないと思います。つまり9割以上の高齢者は「将来の生活資金が減ることに漠然とした不安を抱えつつ、限られたお金で効率よく楽しみを求めている」のだと思います。
 もっとも他人と100%意見が合うことなどありませんから、この点で著者と意見が異なって良いと思います。本からは時分に必要なことを学べば良いと思います。

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