金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

相次ぐ金融機関の不祥事の原因は、MoralとMoraleの欠如から

2024年12月17日 | ニュース
  三菱UFJ銀行の貸金庫からの行員による窃盗事件など金融機関の相次ぐ不祥事がマスコミを賑わしています。
私がかって勤めていた銀行でも、インサイダー取引事件を起こしていましたので、偉そうなことは言えませんがあえて不祥事の背景を考えてみました。
 そのシンプルな答がMoralとMoraleの欠如です。この二つの言葉の語源は道徳を意味するラテン語Moralisですが、前者が「道徳や正しい行動基準」を意味し、後者は「集団の士気や個人のモチベーション」を意味しています。
 不祥事に関する金融機関トップの会見を見聞きすると「管理体制の強化」などといったMoralに関する話ばかりで、Moraleに関する話はでてきません。
 しかし私は金融機関の不祥事の背景には、多くの行員のモチベーションの低下、平たく言うと「業務に対する熱意Enthusiasmの低下」があるのだろうと推測しています。この推測は過去のバブル期やバブル崩壊期を通じて、内外の金融機関で起きた不祥事件をベースにしたものです。
 融資や証券投資が活発化する時期において、それらの分野に従事する人々の評価はあがり、報酬面でも優遇されます。一方個人営業担当者等は、リスク商品の販売等に関して大きなノルマを背負わされ、本来の金融機関のあるべき姿である「顧客に寄り添った金融サービスの提供」ができなくなっています。
 これが業務に対するEnthusiasmの低下を招いている。つまりMoraleの低下を招いています。
 Moraleの低下は、時として人生の目標設定を狂わせ、ギャンブルや過剰な消費行動へののめり込みにつながり、Moralの低下そして犯罪行為へとつながります。
 つまり金融機関が不祥事の撲滅を目指すのであれば、役職員が「顧客に寄り添う金融サービスの提供」とそれに対する顧客の評価をやりがいとするようにEnthusiasmから考える必要があると私は考えています。
 言うは易く、実践のハードルは高い話ですが。
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「同性婚を認めない民法などの規定は違憲」東京高裁判決をみてちょっと勉強

2024年10月30日 | ニュース
 今日(10月30日)日中に流れたニュースの中に、「東京高裁が、同性婚を認めない民法などの規定は憲法に違反する」という判決を言い渡しました。
 私は同性婚の問題について、これまであまり関心がなく、詳しいことは知らなかったのですが、ちょっと勉強してみようと思いたちました。
 なぜなら同性婚を認めている国は西側先進諸国に多く、それらの国々は「包摂性が高い」国です。包摂性とは「すべての個人が社会の一員として認められ、平等な権利と機会を享受できる状態」を指します。包摂性が高い社会では、性別、人種、性的指向、宗教などに関係なく、すべての人々が尊重され、受け入れられる環境が整っています。
 今読んでいる「国家はなぜ衰退するのか?」(今年ノーベル経済学賞を受賞したアセモグル氏たちが著者)によると「特権階級が資源や権力を独占する収奪的社会は長期的には衰退するが、すべての人々が経済活動に参加できる機会がある包摂的社会は、経済成長により持続的に発展する」と結論付けられます。
 このように考えてくると「同性婚を認めるか認めないか」という問題を、同性婚を認めないとする法律が憲法に違反しているかどうかという視点だけで論じるのではなく、それが「包摂性の高い社会を作るという理念に適っているかどうか」という視点から論じる必要があります。
 ところで国や国民の権利義務の基本を定めた法典は憲法ですが、国を越えて世界中の人々の行動規範を定めたものに国連憲章やその下部規定としての国際規約がありますね。
 すでに同性婚を合法化している国々では、1948年に国連で採択された世界人権宣言や1966年に採択された国際人権規約を一つの論拠にして、同性カップルの権利拡大をはかっていったようです。
 ここで人工知能の力を借りて同性婚に関する諸外国の法制度を調べてみました(裏はとっていませんので間違いのある場合はご寛容ください)。
 アメリカ合衆国: 2015年最高裁が合衆国全体で合法とする判決をくだした。
 イギリス:2013年に「同性婚法」が成立し、翌年から同性婚が合法化された。
 ドイツ:2017年に同性婚が合法化された。
 フランス:2013年に「同性婚法」が成立した。
 スウェーデン:2009年に同性婚が合法化された。
 中国:同性婚は合法ではなく、社会的な受容度は低い
 韓国:同性婚は合法ではないが、同性カップルの権利を求める運動は活発化している。
 欧米諸国は15年から10年位前に同性婚を合法化しているということができます。
 個々の国がどのような経路を経て、同性婚を合法化していったか?ということは私の勉強の射程外ですが、その根底に包摂性ということを意識した各分野の指導者がいたのではないでしょうか?
 


 
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北朝鮮はなぜ精鋭部隊をロシアに送らなかったのか?

2024年10月28日 | ニュース
 北朝鮮がロシアに約3千名の部隊を派遣し、彼らがウクライナ戦線に投入されるだろうというニュースは、米国や韓国で大きな話題になっていますね。
 私もいくつかの情報源を読みながらこの問題の背景を考えてみました。
まず基本的な事実(らしいこと)を確認しておきましょう。
 それは「北朝鮮が送った兵士は、精鋭部隊ではないようだ」ということです。
 この点について、WSJのNorth Korean soldiers arrive on Russia's front line. How ready are they to fight?という記事は冒頭で、The North Korean troops nearing Russia's front lines with Ukraine may not be the cream of the crop in Kim Jong Un's army.
「ウクライナとのロシア最前線に近づいている北朝鮮軍は、金正恩軍の精鋭ではないかもしれない」と述べています。
 Cream of the cropは直訳すれば「穀物のクリーム部分」とまり最良のものです。記事はビデオ映像や情報当局の分析から判断して、10代か20代前半の徴兵初期段階の兵士である可能性が高く、背が低く、スリムに見えるのは貧しい北朝鮮に蔓延する栄養失調の現れだと述べています。
 この点について、別の情報源によると韓国の金竜彰国防相は「弾除けの傭兵にすぎない」と述べています。
 日本のテレビでは北朝鮮は「暴風軍団」と呼ばれる精鋭部隊を送ったなどと報じられていましたが、実は違うというのが真相のようです。
 ではなぜ北朝鮮は精鋭部隊を送らなかったのでしょうか?
 可能性をあげると次のようなことが考えられます。
  • 第一にロシア側が北朝鮮部隊をいきなり、最前線に投入せず、後方支援などサポート部隊で使う予定なので、最精鋭の部隊でなくても良いという見方です。この見方の問題は、現代的な装備や兵器の運用に慣れておらず、言語の壁もある北朝鮮兵士がサポート部隊として役に立つのか?という点です。
  • 次にウクライナがロシア領土に侵攻している地域などの最前線に投入し、弾除けの傭兵として使うという考え方です。ロシアの伝統的な戦争戦略は敵より多くの犠牲を出しても、最終的な勝利を得るという消耗戦です。現代戦の経験・知識がない北朝鮮の若い兵士が実戦経験豊富なウクライナ軍に対抗することは困難でしょう。
  • 近現代戦の実戦経験不足という点では、北朝鮮の精鋭部隊も同じですから、精鋭部隊を投入しても北朝鮮兵の犠牲は増えると思います。しかも精鋭部隊の損耗が大きい場合は北朝鮮側に次のような問題を引き起こします。精鋭部隊は国防と金政権下の治安維持を担っていますから、精鋭部隊が減少すると、治安維持面で困難が起きると金正恩が判断していることです。
  • また今回北朝鮮がロシアの派兵要請に応えて軍隊を送った理由を考えると第一に「外貨稼ぎ」(韓国国家情報院によると北朝鮮は派兵の対価として一人当たり2千ドルを受け取るという話)です。次にロシアから高度な軍事技術や装備を受け取ることが期待されるでしょう。またロシアとの関係強化は、日米韓に対する対抗力の強化につながると北朝鮮は考えています。
次に北朝鮮から派兵を受け容れるロシア側の問題を考えてみましょう。
  • 国内的には徴兵や自国兵の損耗を抑えることで、国内の反プーチン感情を抑制できるとプーチンが考えた判断できます。
  • 一方西側諸国には「ロシアはプーチンが喧伝しているほどには勝っていない」という分析の根拠を与えることになります。アメリカのシンクタンク38 North(ジョンズ・ホプキンス大学の南北問題研究サイト)はpart of the answer is that Russia is not winning, at least not to the degree that Vladimir Putin would have the world believe と述べています。
 西側諸国が「ロシアはいうほどには戦果をおさめていない」と判断すれば、ウクライナ支援を高める可能性があるでしょう。北朝鮮兵のロシア派遣は、色々なシグナルを送っていますね。
 戦争とは前線で血を流すだけのものではありません。色々な情報を分析して、敵味方の本当の戦争遂行能力を測るというのも、戦争の大事な部分です。誰がこの情報戦で勝っているのかを考えてみるのも面白いですね。

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トランプ氏、ハリス氏に僅差でリード

2024年10月25日 | ニュース
 今週の日曜日は衆院選挙の日ですね。この選挙で私が興味を持っていることの一つはNHKが各候補の当選確実を出すのに、どれ位時間がかかるか?という点です。従来は開票開始時間早々に当選確実を出している場合が、多かったと思いますが、大接戦が予想されている中、今回ははやばやと当確を出せるケースは大幅に減っているだろうと思います。
 さて接戦というと、あと2週間に迫った米国大統領選挙も大接戦ですね。
 大接戦ですが、世論調査によるとここに来て、トランプ氏のリードがやや広がってきたようです。
 23日付のWSJの最新調査によると、トランプ氏が47%対45%でハリス氏をリードしています。8月時点の調査ではハリス氏が2%リードしていたのですが。ただし誤差の範囲はプラスマイナス2.5%ということですから、ハリス氏が勝つ見込みもない訳ではありません。
幾つかの争点の中でトランプ氏が有利な立場にいるのは「移民問題」「経済」「インフレ」「イスラエル/ハマス問題」でハリス氏が優位なのは「妊娠中絶」と「社会保障」です。
 特に移民問題についてトランプ氏が優位に立っている理由は、最近の選挙活動で不法移民が余り家人の個人の安全と雇用の機会に対する危険であると指摘することに重点を置いているからです。
 WSJの調査によると、有権者の23%は、移民問題が候補者を選ぶ最大のポイントだと述べています。
 ということで、現時点ではかなりの確率でトランプ氏が次の大統領になる可能性が高いようですが、トランプ氏と渡り合えるのは誰か?ということを頭の隅に入れながら、衆院選の投票場に足を運ぶのも面白いかもしれませんね。

 

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米国経済が再び世界をリードする~IMFの発表

2024年10月24日 | ニュース
 WSJに「IMFが積極的な投資で米国の生産性が向上するとして、同国の成長見通しを引き上げる」という記事が出ていた。
ポイントは次のような点だ。
  • 今年の世界の経済成長率は3.3%と予想される。先進国全体では昨年の1.7%成長に続き、今年は1.9%成長すると予想される。米国については第4四半期に前年同月比2.5%成長すると予想されていて、主要先進7カ国でもっとも成長率が高い。(なおこの記事には出ていないが、IMFは今年の米国の消え在成長率を2.8%と予想している)
  • 世界第2位の経済大国中国の今年の経済成長率は4.5%の予想。ユーロ圏は今年1.2%の成長予想にとどまる。
  • IMFは米国経済が好調な理由を「非住宅投資の増加と個人消費の堅調」とし、個人消費はインフレ調整後の実質賃金の上昇に支えられているとしている。
  • IMFは米国の総固定資本形成(投資の広範な指標)は、今年4.5%増加すると予想する。これは先進国全体の3倍以上になるという。
  • コンサルタント会社RSM USのチーフエコノミストは「ソフトウエア 機器や知的財産への投資の継続的な増加により、米国とその他の経済の成長経路に乖離が生じている」と述べている。
今米国は人工知能で世界をリードしている。ところで人工知能の開発や運用については、大量の電力を消費する。米国の強みの一つは2020年代に、水圧破砕などの新技術を利用して、エネルギーの生産性を向上させ、世界的なエネルギーショックの影響を受けない体制を確立したことだ。
記事によるとロシアのウクライナ侵攻以降、欧州諸国はエネルギー価格の高騰で大打撃を受けている。欧州員会の報告書によると、欧州の企業は米国企業に較べて、電力に2~3倍、天然ガスに4~5倍の金額を支払っているということだ。
このため欧州企業は米国企業に較べて、生産性向上への投資で遅れている。

★    ★    ★
 このブログでしばしば書いているように、個々の政権が経済発展に与える影響はそれほど大きなものではない、と私は考えている。政治が経済に影響を与えるのは、もっと基本的な枠組みの部分だ。つまり「国を強くしていくにはどのようにすれば良いか?」といった基礎体力作りの部分だ。
 世界的に見ればBRICS諸国の勢力拡大で米国の相対的な力や影響力は落ちているように見える。
 しかし色々なイノベーションを起こし、旺盛な投資でそれを経済成長に結びつけていく米国の力は衰えていないと私は考えている。
 米大統領選に関するオッズを見るとトランプが優勢だ。その一つの理由は彼が経済や外交面でハリス候補に優っていると考える選挙民が多いことによるだろう。つまり「国を強くする」ことにプライオリティを置く人が多いということなのだろう。
 さて今週の衆院選挙、我々は何に優先順位をおいて選挙に行くべきなのだろうか?
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