金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

大量退職時代で変わるアメリカンドリーム。さて日本は?

2023年07月04日 | 資格・転職・就職
 テレビのコマーシャルを見ているとビズリーチなど転職支援企業が目につきますね。日経新聞の記事(今年4月)によると、今年の主要企業の採用計画では、中途採用比率は過去最高の37.6%に達しているそうです。これは2016年度の倍です。
 中途採用者が増えているとはいえ、中途採用者の人数ベースでは今年約9.4万人の見込みですから、毎月4百万人を超える退職者がでるアメリカとは桁が違います。
 大量の退職者が続くアメリカでは、この状況を「大量退職時代」と呼んでいます。
 大量退職時代の到来は、「経済的な成功」なかんずく自宅の所有をアメリカンドリームと考えていた古いアメリカンドリームの終焉を告げているようです。
 CNBCにGetting rich isn't the American Dream anymoreという記事がでていました。
 記事によるとハイレベルのインフレと全国規模の消費者債務の拡大で経済的に裕福になることがより難しくなったため、価値観の転換が起きているということです。
 記事によるとGoDaddy surveyが千以上の小規模企業オーナーに行った調査では、54%の回答者が「アメリカンドリームは幸福感を伴う」もので49%の回答者は「自分の情熱を追い求める自由」を伴うと述べています。
 かって成功の証(あかし)であった自宅の所有は、4番目に落ちてしまいました。
 自宅の所有がアメリカンドリームの象徴から転落した理由の一つは不動産価格が高騰し自宅を手に入れることが困難になったということが挙げられます。
またコロナウイルス感染拡大でリモートワークが拡大したことも影響しているでしょう。
 ミレニアル世代(現在26歳~41歳位の層)の1/4は、生涯賃貸物件で過ごす予定だと述べています。
 アメリカ人が蓄財して自宅を所有することを人生の目標にした時代は終わり、より自分のやりたいことをやるために生きるというライフスタイルを追求できるようになった背景の一つは、労働力不足で売り手市場が続いていることがあるでしょう。
 つまり大量退職時代がアメリカンドリームを型にはまったものから、個人個人の夢の実現に変えているのです。
 さてこれからの日本の働く人の夢はどのように変わっていくのでしょうか?
 雇用市場の流動性の高まりに合わせて、より個人の自由を尊重するような社会が到来すれば良いのですが。

 
 
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週4日勤務制、テストしたイギリスでは労使とも好評

2023年02月22日 | 資格・転職・就職
 世界中で多くの人を苦しめたコロナだが、多少は社会に良い効果も及ぼしている。その一つが勤務方法の多様化を考え実験する場を提供したことだと思う。
 リモートワークはその典型だが、WSJによるとイギリスでは「週4日勤務制」(月~木勤務とか火~金勤務など)のかなり大きな実験が行われた。
 実験には昨年6月から11月にかけて、銀行、ファストフードレストラン、マーケッティング会社など61企業2,900名の従業員が参加して行われた。
 テストの当初の意図は、勤務時間を短縮することで、コロナ下の勤務による燃え尽き症候群の解消だったが、週4日勤務で離職率等が改善することが分かってきた。
 週4日勤務制に対する会社側の評価は10点満点で7.5点だった。生産性の改善については46%の会社がほぼ同じと評価し、34%は若干改善したと評価し、15%は顕著に改善したと評価している。
 従業員側は、39%の従業員が以前よりストレスが減少したと評価したが、約半分の従業員は変化なしと評価した。半数近くの従業員は精神的な健康が改善したと述べ、37%の従業員は肉体的にも健康が改善したと述べている。
 実験に参加した企業の9割以上が実験を続けたいと述べ、18企業は週休4日制の恒久化を計画していると述べている。
 週の勤務日数を1日短縮しても、生産性が落ちないどころか平均的には生産性が改善した理由は、不必要な会議や出張の取りやめなど効率性を改善したことにある。
 もっとも今回の実験に参加した企業は平均すると従業員が50名以下の比較的小規模の会社である。
 記事によると「多くの大企業は週4日勤務というコンセプトを受け容れておらず、週4日制を導入している企業では時間内にすべて終わらせることに苦労しているという報告もある」ということだ。
★    ★    ★
世界的にみて直ちに週4日勤務制が主流になるとは考えないが、対話型人工知能の活用など生産性の改善が進むと週4日勤務制を採用する会社が増えることは間違いない。
 だが日本で週4日制が進むかどうかというと私はかなり懐疑的である。
 なぜ懐疑的か?というと週に3日も自由時間があっても持て余すという人が多いのではないかと思うからだ。
 またあまりにも無駄な会議や出張が多くそのために週5日でも仕事が終わらず残業や休日に自宅で仕事をする人もいるはずだ。
 日本の会社では週4日制の実験をする前にまず週5日勤務の中で総て終わらるという先進国スタンダードまで持って行くことから始める必要がある。
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パンデミック後は転職で給料アップが顕著~アメリカの話だが

2022年08月10日 | 資格・転職・就職
 前のブログでアメリカのインフレ問題の焦点はコモディティ価格の上昇から賃金上昇問題に移っていくのではないか?と書いた。
 勤労者の賃金が上昇するのは、雇用市場で求人数が求職者数を上回っているからである。端的にいうと企業が高い賃金を払ってでも必要な人材を確保しようと考えるからである。一方労働者もこの流れを利用して、少しでも実質賃金が高い雇用先に転職する傾向を強めている。
 Rew Research Center のHPにMajority of U.S. Workers Changing Jobs are seeing Real wage Gainsという記事がでていた。多くの転職者は実質賃金の上昇を得ているという内容だ。
 記事によると「大辞職時代」は2022年も継続し、辞職率は1970年代並みに高い水準に達している。今年1月から3月の平均離職率は月2.5%頭数にして約4百万人だ。単純に年率換算すると離職率は年30%に達し、その数は48百万人になる計算だ。
 2021年4月~2022年3月の間に転職した人の60%は実質賃金が上昇した。一方この間に転職しなかった人で実質賃金が上昇した人は47%に留まった。もっともその前の1年間(20年4月~21年3月)については転職組で賃金が上昇した人は51%で転職しなかった人は54%と若干ながら転職組が不利だったが。
 いつまでこのような傾向が続くか分からないが、パンデミックを理由に労働市場から出ていく人もいるので、当面求職者側有利なマーケットが続く可能性が高そうだ。
 ところで日本の正社員の転職率については2021年で7%というデータをマイナビが示している。6年間で過去最高ということだ。
 賃金もモノの値段やサービス価格と同様、基本的には需要と供給で決まっていく。ある会社が非効率な経営の結果、従業員の賃金を上げることができない状態にあったとしよう。そこに新しく参入してきた会社が効率的な経営や画期的なマーケッティングを行うため既存の会社から優秀な社員を高い給料で引く抜くような動きをすれば、賃金の上昇と業界の生き残り競争が激しくなるはずだ。
 これがアメリカの社会。一方転職リスクを取らない社員が多く、賃金も上がらず、業界の競争も激しくならないのが日本の社会だ。賃金水準の引き上げと競争による経済活性化を推進することを是とするならば、転職を容易にする各種の施策を講じるのが良いということになるだろう。
 
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企業は採用時にソフトスキルを求めている~アメリカの話だが

2022年07月21日 | 資格・転職・就職
 CNBCに「93%の企業は履歴書にソフトスキルを見たがっている」という記事があった。原題は93% of employers want to see soft skills on your resume-here are 8 of the most in-demend onesだ。
 ソフトスキルとはコミュニケーションスキルのように評価の尺度は明確に定義し難いがあらゆる職業で求められるスキルのことだ。
 ざっくというとジェネラリスト的な能力を指し、特定分野で専門性を持つスペシャリストの専門能力の反対概念と考えてよい。
 私のサラリーマン時代の前半はジェネラリストが幅を利かせ、後半は会社が「ジェネラリストよりスペシャリストになれ」と声を大にした時代だった。もっとも会社(人事部)はジェネラリストに必要なソフトスキルの重要性を認識していた訳ではない。高齢化に伴い管理職層が肥大化することを回避するため、あるいは勉強不足に陥っている中年層を教育するため、あるいはリストラの材料探しのためにスペシャリストを目指せと声を大にしたのである。
 だがその結果はどうなったか?一部の人は特定分野で資格を取るなどして長く働くことができるようになった。しかし多くの人は新しい職場で実は一番重要なソフトスキルを学ぶことがなかったため、必ずしも新しい職場に活躍の場を見出すことができなかったのではないか?と私は考えている。
 ソフトスキルの重要性は今益々高まっている。一つはコロナウイルス禍の影響でリモートワークやハイブリッドワークなど働き方が多様化してきたのでコミュニケーション能力やスケジュール管理などが以前より重要になったことだ。またダイバーシティやインクルージョン(社会的弱者の包摂)などに対応する能力があらゆる階層で求められるようになってきたことだ。
 さて記事に話を戻すと人材会社ZipRecruiterのCEOシーゲル氏は求人側が求める8つのスキルを列挙していた。
コミュニケーションスキル・カスタマーサービス・スケジューリング・タイムマネジメント・プロジェクトマネジメント・アナリティカルシンキング・一人で仕事をする能力・柔軟性である。
 この中で最も多くの会社が求めているのはコミュニケーションスキルだ。
 日本の会社の場合(今は変わってきたかもしれないが)、その会社の中だけあるいは業界の中だけで通じる言葉でコミュニケーションを行っていることが多かった。そのため長く会社にいる人間が幅を利かした訳だ。だがこのような言葉は顧客には通じない。記事はカスタマーサービスを2番目に求められるソフトスキルに挙げているが、カスタマーサービスの基本もコミュニケーションだろう。顧客のニーズを的確に聞き取り、分かり易い言葉で回答するのがカスタマーサービスの基本だからだ。
 スケジューリングとタイムマネジメントの違いはよく分からないが、予定管理であることは間違いない。プロジェクトマネジメントは工程管理や予算管理を含む概念でタイムマネジメントと共通点は多い。
 実際にレジメ(履歴書)にソフトスキルを記載する場合は、学習履歴や実務経験に加えて、習得しているソフトウエア(プロジェクト管理等の)についても記述することになる。
 
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オランダ、勤労者の「リモートワーク権」を認める法改正に動く

2022年07月08日 | 資格・転職・就職
 WSJによるとオランダの下院は、勤労者がリモートワークする権利を認める法改正を決議し、法案を上院に送った。
 現行法では「会社は勤労者がリモートワークを希望した場合、拒否しようと思えば、理由を伝えることなく、却下することができる」が、改正後は「会社は従業員のリモートワーク要請を考慮し、拒否する場合は理由を明示する」ことが求められる。
 欧米諸国はコロナ後のリモートワークの取り扱いに苦慮しているが、この法改正はリモートワーク権を認める点で画期的だ。
 もともとオランダではコロナ前からリモートワークが盛んだった。EUの統計機関European Unionによると2018年にオランダでは18%の従業員がリモートワークを行っていた。
 今回の法案作成者は「法改正により、従業員はワーク・ライフバランスの最適化と通勤時間の削減を行うことができる」上に企業側にとっても生産性の向上と従業員の満足感の向上に繋がるのでメリットが大きいと述べている。
 最近金融・ビジネス・公務員に対して行った調査によると、70%の勤務員が出社・在宅勤務を組み合わせたハイブリッド型の勤務を希望し、フルタイムで出社を希望する人は10%に留まった。一方在宅勤務オンリーを希望した人は20%に留まっている。
 なおオランダのように明確に「リモートワーク権」を立法化する国はないが、リモートワーク権を擁護する動きは高まっている。
 たとえばスペインでは、勤務形態による昇進時の差別を禁じる法的措置を講じているということだ。
 
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