金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米中貿易交渉の行方をどう読むか?

2019年02月28日 | 投資

昨日(2月27日)米国株はナスダックは若干上昇したものの、ダウ・S&P500は少し値を下げた。

原因の一つは米中貿易交渉の行方へ対し投資家が少し懸念を持ったことにあるようだ。

昨日米国のライトハイザー通商部代表は、3月最初に予定されていた関税の引き上げ(10%→25%)については、貿易問題を解決する暫定的なメカニズムに両国が合意したので見送るというコメントを発表した。WSJはU.S. drops threat of 25% tariffs on Chinese goods in sing that accord is nearというタイトルで報じていた。

Accord(協定)が近いということだれば、マーケットはもっとポジティブに反応してもよいようにも思えるが、そうはならない。

その理由を私は次のように考えている。一つは「関税引き上げ見送りは既に前からその可能性が報じられていたので織り込み済みであること」だ。そしてもう一つは「暫定的なメカニズムの実効性について懸念があることだ」だろう。米国の主張は米中の貿易協定(知的財産権保護や技術移転問題等)に中国側の違反があれば各レベルで協議を行うというものだが、中国側はこれは中国を犯人扱いし、米国は裁判官の立場に立つものだと反発している。

一方とにかく貿易問題に決着をつけて選挙前に点数を稼ごうとしているトランプ大統領と実務交渉を担当するライトハイザー代表のギャップも気になるところ。

再選を目指すトランプ大統領としては、北朝鮮問題・中国問題で点数を稼ぐ必要があるが、焦りすぎると実のない交渉となる。

このあたりは選挙による民主主義の一つの弱点が露呈しているようだ。

民主主義の弱点が露呈している顕著な例は、Brexit問題だ。

また今秋は印パ紛争で緊張が高まっている。カシミールでのテロリストによる自爆テロの裏にパキスタンがいるということで、インドが越境爆撃を敢行し、パキスタンが2機のインド空軍戦闘機を撃墜したという。

これの緊張感の高まりの背景にも統一選挙を控えたインド政府の点数稼ぎがあるという見方があるようだ。

ニーチェは「狂気は個人においては稀なことだが集団や党派においては通例である」と述べている。俗な言葉でいえば、赤信号みんなで渡れば怖くないである。

西部邁は「デモクラシーを民主主義と訳するのではなく民衆政治と訳したならば、欠陥や誤謬が存在することが理解しやすかった」という趣旨のことを述べている。

外交問題においてどちらか一方が圧倒的な勝利を収めることはない(仮にあったとすると長続きはしない)という当たり前の原理に民衆が腹落ちするかどうか?ということが米中貿易交渉の行方に横たわっている気もする。独裁政治は暴走するが民主政治は暴走しないというのは理念ではあるが、現実は時々裏切ることがある。

 

 

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北朝鮮はベトナムのドイモイ政策を追従できるか?

2019年02月27日 | 国際・政治

今日(2月27日)からベトナムのハノイで米朝トップ会談が始まった。

北朝鮮にとってトップ会談の場所としてハノイはうってつけの場所だ。ベトナム戦争の後、1986年にベトナムは対外経済開放など資本主義的政策(ドイモイ政策)を導入し、経済成長路線を採用した。かっては世界の最貧国の一つと言われていたが、今のベトナムはインテル・サムソン・ナイキなどの世界企業が拠点を置くアジアの製造業のハブの一つになっている。世界中のスマートフォンの10台に1台はベトナム製らしい。

今回の米朝トップ会談が具体的成果をあげるかどうかは分からないが、会談がハノイで開催されること自体象徴性が高いと私は考えている。

それは「北朝鮮が経済開放政策を採用してベトナム型路線を歩く可能性がある」ことを示唆していると思われるからだ。ベトナムと北朝鮮の関係は、金正男暗殺事件以降冷え込んでいた(北朝鮮の元ベトナム大使の息子が事件に関与していたらしい)と言われているが、少し前に北朝鮮が非公式にベトナムに謝罪して関係は改善しつつあるようだ。

また北朝鮮はベトナムのドイモイ政策を研究しているといわれているから、ハノイで米中会談を開くということは、北朝鮮がドイモイ路線の追従を視野に入れているというメッセージ効果があると私は考えている。

もっとも北朝鮮が単純にベトナム型の経済政策を展開できるとは考え難い。それは朝鮮半島が韓国と北朝鮮に分かれているからだ。だが韓国・北朝鮮の距離は以前より縮まっている。もし米朝間で朝鮮戦争の終戦宣言に向けて前向きな議論が進むと距離はさらに縮まるだろう。

世界的な投資家ジム・ロジャースは近著「お金の流れで読む日本と世界の未来」の中で「朝鮮半島はこれから世界で最も刺激的な場所になる」と述べ、北朝鮮のポテンシャルの高さを評価している。

ロジャースは「歴史は韻を踏む」と述べ、北朝鮮がベトナムの経済発展をフォローする可能性を示唆している。

私はロジャースほど朝鮮半島のポテンシャルを楽観視している訳ではないが、米中首脳会談という瓢箪から駒が飛び出す可能性はあるとも考えている。

 

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気だるき近江の旅

2019年02月26日 | ライフプランニングファイル

昨日大津は唐崎のKKRホテルに泊まりに行った。大学山岳部の同期会に出席するためだった。

昨日今日と三月下旬並みに暖かく気だるさが募った。

春の琵琶湖周辺はある種の寂しさが漂う。芭蕉は「行く春を近江の人と惜しみけり」と詠んだ。唐崎に船を浮かべて人々と去り行く春を惜しんだという。

大学時代は神戸と京都に住んでいたので、山の帰りは朝湖東平野を列車で走ることが多かった。夜行列車を使っていたからで、列車から比良の山並みが見えると「ああ、帰ってきた」と感慨を持ったことを思い出す。

それは無事に山登りを終えたという安堵感と疲れと名状しがたいある種の脱力感が混じった気分で一言でいうと気だるさに近かったろう。

特に雪深い信州の春山から帰ってきて、湖東平野の苗代を見るときなど殊にその思いを強くしたものである。

同期会をセットしてくれた幹事さんが、私のそのような想いを推測して唐崎のホテルを選んだとは思わない(幹事さんは国家公務員だったので割引のきくKKRホテルを選んだと思う)。

だがその選択は良かった。琵琶湖の夜景を見ながら盃を傾けていると夜は瞬く間に更けていく。山の猛者だった連中も四捨五入すると古希と呼ばれる年齢に近づいてきた。

過行く歳月を愛おしみながら盃を傾けるのに春の琵琶湖畔ほどふさわしい場所は少ないだろう。

 

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米国株のラリーは長続きする?~WSJの記事から~

2019年02月24日 | 投資

先週の米国株ではダウとナスダックが9週間連続で上昇、S&P500は4週間連続で上昇した。

これは米中の貿易交渉が進展するという楽観的な見通しが広がったこと、S&P500社の第4四半期利益が約9割の企業で前年同期比13%増となったことなどが要因だ。

ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると1月2月とダウとS&P500の株高が続いた年は6割以上の場合その年は株高になっているという。

もっともブラック・マンデーが起きた1987年のような例外もあるのだが。

投資家というのは根が楽観的なようで早くも「景気は過熱もせず冷え込みもしないゴルディロックス状態にある」と述べる人も出てきている。

最近のラリーを牽引しているのは、FAANG銘柄ではなく、資本財銘柄や一般消費財銘柄など循環株である。このことから景気は一般に考えられているより強いのではないか?と推論するストラテジストもいる。

もう一つ頭の隅に入れておいても良いことは、トランプ大統領が再選を目指すなら、株高を演出するということだ。

その文脈で考えると私は米中貿易交渉を前向きに持っていきたいとトランプは考えているはず。

無論これらのことはすべて推測の域をでないが・・・

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幾つかの坂を越えてシンスケへ

2019年02月24日 | レストラン・飲み屋

山仲間と飲み会を湯島のシンスケですることになった。シンスケは太田和彦の「居酒屋百名山」に登場する老舗の居酒屋だ。

時間があるので顧問先がある竹橋から歩いていくことにした。

学士会館の前の東西の道を東に歩き、小川町の交差点にでた。このあたりは山やスキーの店が並び、アウトドア好きには覗いてみたい店が多い。小川町からは北に向かう。中央大学駿河台記念館にかけて緩い上り坂が続く。聖橋の手前で中央線を越える。

このあたりで行程の半分だ。聖橋を渡ると右手に湯島聖堂がある。

湯島聖堂の先は神田明神。神田明神から道はやや下り、清水坂下の交差点についた。

清水坂というと京都育ちの私としては「きよみずざか」と読みたいところだがここは「しみずざか」

清水坂の登りは少し急だ。坂の途中に洒落た珈琲店があり、やがてカップル向きのホテルがちらほらする。

また洒落た小料理屋の暖簾も目につくようになってきた。湯島が近い。

竹橋から聖橋にかけては学問の雰囲気が漂っていたが、湯島に近づくと柔らかな雰囲気が漂っている。

真っすぐ行って湯島天神の境内を抜けてシンスケに行くことも可能なようだが、やや遠回りなので坂を右に曲がってシンスケに向かった。

竹橋からシンスケまではゆっくり歩いて40分程度。小さな坂を幾つか越えていくちょっとした散歩だ。

本気で街歩きをするなら、ニコライ堂・湯島聖堂・神田明神・湯島神社など見るところは多いが、日が暮れているのでこの日は割愛。

ところで神田明神の御祭神の一柱は平将門で、湯島天神の御祭神は菅原道真だ。お二人は崇徳上皇と並んで平安時代の三大祟り神だ。

江戸の鬼門方向に二人の祟り神が祀られているのは何か意味があるのかしら?あるいは単なる偶然?などと考えている内にシンスケに着いた。

シンスケに入って一杯目のビールは本当に美味しかった。歳を重ねて自由な時間が増えると居酒屋探訪の前に少し街歩きをすると最高だ。

なおシンスケは上品なお店でガツンとくるような料理は少ない。それでも金曜日の夜は満席だった。

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