金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

党議拘束のない面白さ

2008年09月30日 | 社会・経済

昨日米国下院は不良債権買取法案を否決した。興味深いことは共和党・民主党の双方の賛成・反対票が割れ、特に政権与党の共和党の過半数が法案に反対に回ったことだ。これは米国の議会に党議拘束(議会に提出される法案の賛否について党の方針を決めておいて議員の投票を拘束する仕組み)がないからである。

日本ではかなり強い党議拘束があるため、与野党議員の数の差で国会審議の前に法案の可否決が決まっている場合が多いが、米国では出たところ勝負だ。法案毎に個々の与野党議員が是々非々で投票することを交差投票corss votingという。

米国の議員が気にしているのは、党の幹部ではなく、自分の選挙区の選挙民の意見である。今回法案に反対した議員の元には、電子メールなどの媒体で選挙民から強い反対の意見が届いていた。どの議員がどの法案に賛否を投じたかという記録は詳細に発表されるので、選挙民は自分が選んだ議員が自分達の意見を代弁してくれるかどうか監視することができる仕組みだ。良くいうと地域の意見を強く反映させることができるが、反面選挙民に対するポピュリズムに陥るとも言えよう。

米国下院のことをHouse of representativeという。representativeというのは「代表者・代弁者」という意味だ。名前が良く実態を表している。ついでにいうと米語では国会議員のことをLawmakerという言い方をするのが一般的だ。Lawmakerとは法律を作る人という意味で、国会にのみ立法権があるということを明確に示す言葉だと思う。もっとも実際の立法については各業界を代表するロビースト達が法案を持ち込む。そして今回の金融危機の原因の一つにファニーメイやフレディマックの派手なロビー活動があると指摘している人もいる。

そんなこともあって私は手放しで米国のように党議拘束がない制度を良いとは言わないが、日本の国会のように議論を重ねていても、結果は採決前に分かっているというのでは国会の議論に何ほどの意味があるのか?という疑問は強い。欧州諸国は日本より緩やか党議拘束を行っているので、政治家やマスコミはもっと勉強して(あるいは十分勉強した上で都合が悪いから言わないのかもしれないが)、少し国会討論の枠組みを変えるような提案を行ったらどうだろうか?

少なくとも国民の政治離れに歯止めをかける効果はあると私は信じている。

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次はどんな靴が落ちてくるの?

2008年09月30日 | 社会・経済

米国のマスコミは金融・証券界を「ウオール・ストリート」と呼ぶ。日本で言えば兜町で株屋さんの世界を示すようなものだ。一方実業界や一般のビジネス・パーソンのことを「メイン・ストリート」と呼ぶ。大通りという意味だが、これに対応する日本語の言い回しを私は知らない。さて昨日(9月29日)のダウ大暴落はさすがにウオール・ストリートの住人だけでなく、株式投資に縁の薄い一般のアメリカ人つまりメイン・ストリートの住人をも相当驚愕させたようだ。

ニューヨーク・タイムズに想定問答形式で、メイン・ストリートの住人がファイナンシャル・アドバイザーにアドヴァイスを求める記事が出ていた。その中に「次はどんな靴が落ちてくるの?」What is the next shoe to drop?という文章があった。これは最近使われだした俗語で「既に起きたことに関連して次に何が起きるのか?」という意味だ。その語源を調べるためにhttp://www.urbandictionary.com/というインターネット上の俗語辞典を見た。この俗語辞典は普通の英々辞書などにはまだ登場しない俗語が出ているので便利だ。

その辞書にはWaiting for the other shoe to dropという形で紹介されいる。語源は次のようなことだ。「ある安ホテルに遅い時間に泊まった客がホテルマンから隣の部屋で先客が寝ているから、静かにベッドに入って欲しいといわれた。客は静かに衣服を脱いだ積もりだったが、片方の靴を落とし大きな音を立ててしまった。その音で隣の客は起きてしまったようだ。そこで客はこんどこそは音を立てないようにと慎重にもう一方の靴を脱いでベッドに入って眠りについた。ところが暫くして隣の客から『もう一つの靴は何時脱ぐのですか?」と声がかかった」

隣の客はもう一つの靴を脱ぐ時も大きな音がするのではないか?と思い眠ることが出来なかったのである。

さて本題に戻ると「次に確実に起きること」に対するファイナンシャル・アドヴァイザーの答は「個人は色々な融資を受けることが困難になるので、それを踏まえて対応しなさい」というものだった。既に脱がれた靴(既に起きたこと)は、幾つかの投資銀行や商業銀銀行の破綻や救済合併である。これを受けて銀行は貸出基準を強化した。クレジット・カード会社は利用限度を引き下げ始めている。ジャンボローンと呼ばれる大型住宅ローンもファニーメイなどへの売却が困難になってきたので、ローンの貸し手が減ってきた。ホームエクイティローンと呼ばれる二番抵当ローンも状況は同じだ。

次の次の靴は米国の消費不振による日本を含めた世界の不景気であることは間違いない。

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天が落ちるか落ちないかの瀬戸際

2008年09月30日 | 金融

外国の金融マンと話をしていた頃相場が悪くなった時のいい癖として「そうはいっても明日天が落ちてくる訳でもない」という表現をする人がいた。その口癖を借りるならひょっとすると明日天が落ちてくるかもしれないという状況になった。昨日の米国下院は大方の予想を裏切り、228-205で「不良債権買取機構法案」を却下した。反対の主勢力は政権与党の共和党だ。228の反対票の内133票は共和党、民主党は95票だ。賛成票205の内140は民主党、65票が共和党だ。

この結果を受けてダウ777ポイントダウン。株式市場と金融市場は天が落ちてくる瀬戸際にあるようだ。そしてこれ以上株式市場よ金融市場が悪化すると実体経済は確実に悪化して世界的に大きな景気後退に入る。

専門家はこのレスキュープランは必要不可欠だと判断している。例えば債券投資の大家ビル・グロスは「原案であれ、修正案であれ流動性を失った資産を買う政府機関は必要だ」と力説している。

しかし一般の国民にはこの法案は不人気だ。9月24日にUSA todayとギャロップが行った調査によると22%の国民が賛成、56%が何らかの修正が必要と考え、11%の人は何もしなくて良いと判断している。

下院議員の中にはこのような法案を通すと、社会主義化すると警告を鳴らす人もいる。

議案の不成立の落胆した投資家は株を投売り、金融機関はカウンターパーティの倒産を恐れて信用供与を渋り、企業向け与信を絞る。投資家の償還申し込みが殺到するヘッジファンドは保有資産の投売りを迫られ、マーケットはテールスピンを起こす・・・・・・可能性は高くなってきた。天は落ちてくるかもしれない。もし反対に回った米国の下院議員達が考えを変えなければだが。

全く予断を許さない事態になってきた。

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店の名前は日本語で併記せよ

2008年09月29日 | うんちく・小ネタ

昨日ワイフ・下の娘と日本橋コレドの中のあるフレンチ系レストランでランチを食べた。メニューは「鯛のポアレ」をメインにした1,800円のコース、サーモン・マリネの前菜にデザート付きで中々美味しかった。私は休日のランチにコレドのレストランを選ぶことが多いがその理由は空いているからだ。コレドは日本橋という立地やテナントの数などから集客力が劣っているので空いている。リーズナブルな値段でゆっくり食事をするにはちょっとした穴場である。

だがこのブログの目的は穴場を紹介することではない。テナント各位に「テナント名は何語でつけても良いが、読み方を日本語で併記して欲しい」ということだ。

昨日食事をしたレストランの名前は4eme。正しくはeの上に`のような符号が乗っているのだが字を探すのが面倒なので省略。これすっと読めますか?読めるのはフランス語を知っている人。4emeはフランス語で「4番目」を意味するquatriemeのこと。ところがフランス語を知らない私には読めない。そして読めない言葉は覚えられない。インターネットで調べてようやく「キャトリエム」と発音(日本語風だろうが)することが分かったが直ぐ忘れてしまう。年を取ると知らない言葉は簡単に覚えられないのである。

だが私が外国語のテナントやレストラン名には日本語の読み方を併記せよと主張するのは私が覚えられないからだけではない。災害・犯罪対策上の話からである。もし4emeの店で犯罪や火災があった場合通りがかりで、店の名前を読めない人はどの様にして警察や消防署に連絡すれば良いのだろうか?このような例は六本木や銀座のビルでは多いと思う。

私自身が外国語と言えば多少の英語と極めてほんの少しのウルドゥ語しか話すことのできない語学力の低い人間であるだけに、六本木などを歩いている人が皆、自由にフランス語やイタリア語を読めるのだろうか?と疑問に感じている。

私が暮らしていた頃の米国には「外国語の名前の店は必ず英語を併記するべし」という法律(条例?)があった。これは既に述べた防犯・防災の観点からの要請である。

もっとも4emeが読めないので多少勉強することはできた。4のフランス語はquatreキャトルでイタリア語やスペイン語のquattroクワトロと語源は同じだ。クワトロなら4と知っていた。というようなことで少し雑学が広がった。ついでに食べた鯛のポワレのポワレも調べてみた。ポワレはフランス語でpoele、フライパンなどの鍋を指し、その鍋で両面を油で焼いた料理がポアレなのだ。

雑学は身についたものの、防犯・防災の観点から外国名のテナントは日本語で読み方を書け!という主張に変りはない。

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懸念はヘッジファンドの資金流出に移る

2008年09月29日 | 金融

9月28日日曜日米国で議会のリーダー達は、月曜日のアジア市場がオープンする前に「住宅ローン買取機構法案」骨子の合意に漕ぎつけた。当面の大きなハードルは一つ越えた。しかしこれは問題解決のスタート点に過ぎず、目詰まりを起こしている金融市場が正常化し、米国の住宅市場が安定するまでにはかなり長い時間がかかりそうだ。

その中で次の懸念材料はヘッジファンドだ。ニューヨーク・タイムズはThe money rushed into hedge funds,now some fear, it could rush out.という書き出しで「ヘッジファンドに急速に流れ込んだ資金は、急速に流出する可能性を恐れている人がいる」と警告を発している。

2002年以降ヘッジファンドへの投資額は約3倍になり、全世界ベースでヘッジファンドの残高は2兆ドル近くに膨れ上がっている。ヘッジファンドの運用成績はヘッジ・ファンド・リサーチ社によると今年は最悪の年で現時点で平均10%程度のマイナスである。今年前半で閉鎖したヘッジファンドは約350だ。

業界関係者が注目しているのは今週火曜日の「償還申し込み」だ。年末にファンドから資金を償還するには、この日までに申し入れをしないとならないというのが多くのヘッジファンドのルールだ。

ヘッジファンドはかっては米国の超富裕層が投資するファンドだったが、今では全世界の年金基金などの機関投資家が投資をしている。日本の年金基金の中にも「難しい理屈は分からないが、とにかく絶対利回りが欲しい」ということで投資しているところは多い。問題はこれらの投資家がヘッジファンドに不安を感じて、大量の償還申し込みが殺到することだ。

ニューヨーク・タイムズはシティ・グループのアナリストは業界は償還に備えて6千億ドルつまり3割程度をキャッシュポジションに取っていると分析している。しかしこれを大きく上回る償還申し込みがくると、ヘッジファンドは保有資産の売却を迫られることになる。そうすると売りが売りを呼び、負のスパイラルが続くことになる。

気になるのはC.F.Oというヘッジファンドで担保された証券の格付の動きだ。C.F.OというのはCollateralized fund obligationの略称で、C.D.O「債務担保証券」Collateralized debt obligationのヘッジファンド版と考えてよい。

先週格付機関は幾つかのC.F.Oの格付を引き下げた。ヘッジファンド業界大手の英国のマン社が運営する二つのC.F.Oも格下された。マン社については日本の信託銀行などもディストリビューションを担当しているから、日本でも名前は知られている。格下された中には今年4%以上の損失を出していると言われているGlenwood Capitalも含まれている。

ヘッジファンドの損失が拡大すると日本企業にも大きな影響を及ぼす。もしその企業や企業が属する業界の年金基金がヘッジファンド投資で損失を出し積立不足になると、その穴埋めのため企業は特別に拠出することを求められるからだ。また金融機関の中にも自己勘定でヘッジファンド投資を行っているところがあると見ておくべきだろう。

次に注目するべきはヘッジファンドだというニューヨーク・タイムズの記事は注目に値する。

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