昨日米国下院は不良債権買取法案を否決した。興味深いことは共和党・民主党の双方の賛成・反対票が割れ、特に政権与党の共和党の過半数が法案に反対に回ったことだ。これは米国の議会に党議拘束(議会に提出される法案の賛否について党の方針を決めておいて議員の投票を拘束する仕組み)がないからである。
日本ではかなり強い党議拘束があるため、与野党議員の数の差で国会審議の前に法案の可否決が決まっている場合が多いが、米国では出たところ勝負だ。法案毎に個々の与野党議員が是々非々で投票することを交差投票corss votingという。
米国の議員が気にしているのは、党の幹部ではなく、自分の選挙区の選挙民の意見である。今回法案に反対した議員の元には、電子メールなどの媒体で選挙民から強い反対の意見が届いていた。どの議員がどの法案に賛否を投じたかという記録は詳細に発表されるので、選挙民は自分が選んだ議員が自分達の意見を代弁してくれるかどうか監視することができる仕組みだ。良くいうと地域の意見を強く反映させることができるが、反面選挙民に対するポピュリズムに陥るとも言えよう。
米国下院のことをHouse of representativeという。representativeというのは「代表者・代弁者」という意味だ。名前が良く実態を表している。ついでにいうと米語では国会議員のことをLawmakerという言い方をするのが一般的だ。Lawmakerとは法律を作る人という意味で、国会にのみ立法権があるということを明確に示す言葉だと思う。もっとも実際の立法については各業界を代表するロビースト達が法案を持ち込む。そして今回の金融危機の原因の一つにファニーメイやフレディマックの派手なロビー活動があると指摘している人もいる。
そんなこともあって私は手放しで米国のように党議拘束がない制度を良いとは言わないが、日本の国会のように議論を重ねていても、結果は採決前に分かっているというのでは国会の議論に何ほどの意味があるのか?という疑問は強い。欧州諸国は日本より緩やか党議拘束を行っているので、政治家やマスコミはもっと勉強して(あるいは十分勉強した上で都合が悪いから言わないのかもしれないが)、少し国会討論の枠組みを変えるような提案を行ったらどうだろうか?
少なくとも国民の政治離れに歯止めをかける効果はあると私は信じている。