日銀は明日(10月31日)午後2時経済・物価の展望を発表する。これは今後の日銀の金利政策を判断する上で極めて重要だ。また展望の発表を前にして、日銀の動きを掣肘するような意見も出ている。ウオール・ストリート・ジャーナルの記事もどちらかというと金利は上がらないという論調だ。ウオール・ストリート・ジャーナルは日銀の政策委員が記事を読むことを期待しているのかもしれない。またこの記事を読む限り、今年の日本株のピークは先週あたりで過ぎたか?という気持ちがしてきた。まあ企業業績が悪くなった訳ではないので長期投資家は慌てる程のことはないが。記事の概要は次のとおりだ。
- 7月に日銀が5年にわたるゼロ金利政策を廃止して以来、最大の疑問は日銀が今年再度金利を引き上げるかどうかだった。今多くのエコノミスト達はそれは起こりえないだろうと言っている。
- その理由は手に負えない程弱い消費者物価である。全般的に良好な経済成長の中で、日本の消費者物価の上昇はきわめて遅い。薄型テレビや家具等の消費財の価格は下落し続けている。またその他の財についても賃金の回復が遅いので消費者は散財を控えているので、物価上昇は限られている。エコノミスト達はエネルギー価格の下落と携帯電話の競争激化による価格下落のため、向う数ヶ月の間物価指数は弱いままだと言う。
- 金曜日に政府は全国のコア消費者物価指数(エネルギーを含み生鮮食料品を除く)は前年比0.2%上昇したと発表した。これはエコノミスト達の予想0.3%を下回った。
- このCPIの発表を受けて少なくとも来年初めまで日銀は金利を引き上げないという観測が広まっている。ゴールドマンザックスの山崎氏は「エネルギーを除くと物価は下落し続けている」「この環境下で金利引き上げを正当化するkとは極めて難しい」と言う。金曜日のCPIのリリースの後、国債金利は1.735%に低下した。これは10月23日に付けた1.84%レベルから見るとかなりの低下である。
- ドイチェ証券の森田氏は「現在の経済のファンダメンタルに対する楽観主義は、11月になると懐疑主義に取って替わられる」「長期金利に低下圧力がかかる」と言う。
- とはいうものの大和総研の牧野氏のように「日本の潜在成長率を3%とすれば、日銀は現在の0.25%という金利水準を極めて低いと感じている」という意見もある。今後の金融政策を占う上で明日の展望レポートは重要だ。エコノミスト達は来年4月からのCPI上昇率を0.5%と見ている(メディアン値)。これは昨年4月の予想0.8%より下落しているが、主にCPIの計算方法にかかわるテクニカルな理由だ。日銀がこれより上の予想を出すと金利引き上げのシグナルと解釈されるだろう。
金融業というのは因果な商売で、金利の予測とそれに合わせた資金調達などをやっている。しかし金融業にたずさわっているとはいえ金利のプロという者は少ない。経営層だといったところで、いや経営層だからというべきだが、金利には素人の人が多い。相場と関係のないこと~例えば融資だとか人事だとか~をやって多少偉くなった人が経営層ともなると「何かビューを述べないと責任を果たしていない」などと感じて相場を語ることが多い。しかしこれは無用のことである。いや、時として害というべきかもしれない。というのは大概の人は相場を語るようで実は自分のポジションにかかわるウイッシュ(願望)を語っているに過ぎないのである。そしてそれが部下を惑わすのである。勿論これは自戒をこめた反省である。
しかし経済評論家という連中はもっとひどいかもしれない。予想で飯を食いながら予想が外れることに厚顔無恥過ぎる。「あの時の私の金利予想はカクカクの理由で外れました」など反省している評論家などまず見ることがない。この点米国のマスコミは厳しく、年末にはその年の評論家のパフォーマンスを評価している。つまり米紙の記事は結構シビアなのだ。読むならば無責任な日本の新聞より米紙の方が良いという所以だ。