金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「円短期金利は変わらず」と米紙予想

2006年10月31日 | 金融

日銀は明日(10月31日)午後2時経済・物価の展望を発表する。これは今後の日銀の金利政策を判断する上で極めて重要だ。また展望の発表を前にして、日銀の動きを掣肘するような意見も出ている。ウオール・ストリート・ジャーナルの記事もどちらかというと金利は上がらないという論調だ。ウオール・ストリート・ジャーナルは日銀の政策委員が記事を読むことを期待しているのかもしれない。またこの記事を読む限り、今年の日本株のピークは先週あたりで過ぎたか?という気持ちがしてきた。まあ企業業績が悪くなった訳ではないので長期投資家は慌てる程のことはないが。記事の概要は次のとおりだ。

  • 7月に日銀が5年にわたるゼロ金利政策を廃止して以来、最大の疑問は日銀が今年再度金利を引き上げるかどうかだった。今多くのエコノミスト達はそれは起こりえないだろうと言っている。
  • その理由は手に負えない程弱い消費者物価である。全般的に良好な経済成長の中で、日本の消費者物価の上昇はきわめて遅い。薄型テレビや家具等の消費財の価格は下落し続けている。またその他の財についても賃金の回復が遅いので消費者は散財を控えているので、物価上昇は限られている。エコノミスト達はエネルギー価格の下落と携帯電話の競争激化による価格下落のため、向う数ヶ月の間物価指数は弱いままだと言う。
  • 金曜日に政府は全国のコア消費者物価指数(エネルギーを含み生鮮食料品を除く)は前年比0.2%上昇したと発表した。これはエコノミスト達の予想0.3%を下回った。
  • このCPIの発表を受けて少なくとも来年初めまで日銀は金利を引き上げないという観測が広まっている。ゴールドマンザックスの山崎氏は「エネルギーを除くと物価は下落し続けている」「この環境下で金利引き上げを正当化するkとは極めて難しい」と言う。金曜日のCPIのリリースの後、国債金利は1.735%に低下した。これは10月23日に付けた1.84%レベルから見るとかなりの低下である。
  • ドイチェ証券の森田氏は「現在の経済のファンダメンタルに対する楽観主義は、11月になると懐疑主義に取って替わられる」「長期金利に低下圧力がかかる」と言う。
  • とはいうものの大和総研の牧野氏のように「日本の潜在成長率を3%とすれば、日銀は現在の0.25%という金利水準を極めて低いと感じている」という意見もある。今後の金融政策を占う上で明日の展望レポートは重要だ。エコノミスト達は来年4月からのCPI上昇率を0.5%と見ている(メディアン値)。これは昨年4月の予想0.8%より下落しているが、主にCPIの計算方法にかかわるテクニカルな理由だ。日銀がこれより上の予想を出すと金利引き上げのシグナルと解釈されるだろう。

金融業というのは因果な商売で、金利の予測とそれに合わせた資金調達などをやっている。しかし金融業にたずさわっているとはいえ金利のプロという者は少ない。経営層だといったところで、いや経営層だからというべきだが、金利には素人の人が多い。相場と関係のないこと~例えば融資だとか人事だとか~をやって多少偉くなった人が経営層ともなると「何かビューを述べないと責任を果たしていない」などと感じて相場を語ることが多い。しかしこれは無用のことである。いや、時として害というべきかもしれない。というのは大概の人は相場を語るようで実は自分のポジションにかかわるウイッシュ(願望)を語っているに過ぎないのである。そしてそれが部下を惑わすのである。勿論これは自戒をこめた反省である。

しかし経済評論家という連中はもっとひどいかもしれない。予想で飯を食いながら予想が外れることに厚顔無恥過ぎる。「あの時の私の金利予想はカクカクの理由で外れました」など反省している評論家などまず見ることがない。この点米国のマスコミは厳しく、年末にはその年の評論家のパフォーマンスを評価している。つまり米紙の記事は結構シビアなのだ。読むならば無責任な日本の新聞より米紙の方が良いという所以だ。

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紅葉満喫の雲取山

2006年10月29日 | 

10月29日(日曜日)会社の先輩達と東京の最高峰雲取山(2017m)に登った。私は以前登ったことがあるが同行のFさん、Yさんには初めての雲取山だ。28日(土曜日)11時15分に奥多摩駅に集合。いきなり雲取山の麓にはいっても時間があまるので、まずマイカーで「小菅の湯」に行く。

Kosugenoyu 小菅の湯は3時間コースの入浴代が600円(タオルを借りると750円)とかなり安い。お湯は高アルカリ質で保養・休養に効くということだ。ここでやや遅い昼飯を食う。お料理は皆美味しかったが、特にヤマメの一夜干しが美味だったことを特記しておこう。さて2時半頃小菅の湯を出発して後山林道経由で今夜の宿「三条の湯」に向かう。後山林道では下山してくる車との離合に時間を取られた。4時前には三条の湯に到着して、3人で酒盛りが始まった。同宿の若い男性も話に加わり晩飯前に結構出来上がった。三条の湯の夕食は今ひとつかなぁという感じ。最近は山小屋でも八ヶ岳の赤岳鉱泉のように相当工夫した食事をだすところが増えてきているので一工夫欲しいところだ。

さて登山の本番29日の話。前日の予報では雨模様なのだが、朝ご飯を食べ終わる頃には青空が広がってきた。トイレの数が少ない(現在増築工事中)ので出発まで時間がかかったが、午前6時55分出発。高度を上げるにつれて紅葉が広がっていく。それに合わせて昨日飲んだお酒も消えていく。先輩達はとにかくお酒が好きなので、お付き合いが大変なのだ。さて7時40分頃視界の良い尾根筋に出た。飛竜山につながる稜線がきれいだ。写真は飛竜山。

Hiryusan_1

三条の湯から雲取山に向かうコース(水無尾根)は原生林が続いているので、紅葉が入り鮮やかだ。偏光フィルターを使って青空の色をだそうと工夫してみたがどうだろうか?

Kouyou1赤い楓も美しいが黄色い葉も良い。

Kouyou3 

三条ダルミの手前辺りから霧と雲が多くなってきた。雲取山の名前の由縁だろうか?

Kumowaku一枚の写真で時間を撮りたいと思うことがある。流れる雲を時間として撮りたいと思うが中々思い通りにはいかない。写真の奥は深い。10時15分頃三条ダルミ到着。ここから山頂までは急な直登が続く。40分の登りを覚悟していたが、30分弱であっけなく雲取山の頂上についた。午前9時50分である。頂上は晴れてはいるが、雲が多く余り視界は広くない。気温は10度、じっとしていると汗をかいた体が冷える。山小屋で頂いたお弁当を食べて10時30分頃下山。途中小雲取山付近の稜線のカラマツ林がきれいに見えた。

Kokumotori

12時35分三条の湯へ下山。一休みして駐車場へ。三条の湯から雲取山の登山は登り3時間降り2時間だった。その後奥多摩駅付近の「もえぎの湯」に行ったが駐車場が一杯だったので、駅から少し青梅街道を西に行ったところにある三河屋旅館さんでお風呂に入る。お風呂とお昼ご飯がセットになって3,200円。まいたけのてんぷらやヤマメのみそ焼きなどがあってまずまずのお料理だった。JRで都心に帰る先輩お二人を駅まで車で送ってから私は青梅街道に車を走らせた。青梅の沿線は紅葉にはまだ早く観光客も少ないので道は空いていた。

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高校の校長は「大学」を読むべし

2006年10月27日 | 社会・経済

最近全国の高校で必修科目逃れがあったことが話題になっている。今朝(10月27日)の読売新聞によれば35都道府県249校に及ぶそうだ。世界史の授業としながら、受験しやすい地理を教え世界史の単位を与えるというようなことをしていたということだ。

こういう問題だ出てくると「識者」と称する人が出てきて、もっともらしい意見を述べる。たとえば御茶ノ水大学の耳塚教授は日経で「高校だけを責めるのは酷」などともっともらしいことを言っている。こういうのを盗人にも三分の理というのだろう。

言い分はどうあれ不正をしない、正直な人間を作るというのが教育の根本であろう。多少の知識があっても不正をするような人間を作ってどうなるのだろうか?まず高校の校長達責任者はその点について猛省するべきである。もし四書五経の「大学」を読んでいないなら反省の手がかりとしてまず「大学」を読むべきだ。日本の大学とはこの中国の古典「大学」に由来する。では「大学」は何といっているのか?以下はそのポイント。

  • 大学の道とは明徳(おのずから備わった徳)を明らかにすることだ。
  • 徳を明らかにしようとするものは国を治める。国を治めようとするものは家を整える。家を整えようとするものは身を修める。(ここから修身ということば出た)
  • 身を修めようとするものは心を正しくする。心を正しくしようとするものはその意識を誠にする。

つまり「大学」の道はまず「心を正しくする」ことが重要といっているのだ。教育者はまずその身を修めて欲しいものである。

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MBO、日本で急拡大

2006年10月26日 | 社会・経済

日本人の一つの面白いところに、外国人からハッパをかけられると遮二無二走り出し、後で気が付くとハッパをかけた外国人より前を走っているということがある。ブロードバンドもその例だ。5,6年前日本のブロードバンド環境は先進国に劣り料金も高いといわれていたが、その後のADSL更に光ファイバーの普及で今や世界で最も安くブロードバンドを利用できる様になったのではないだろうか?

さて企業経営の世界にもこの法則が当てはまるかもしれない。それは日本で急速にMBO(Management Buy Out)が盛んになっているという話だ。ウオール・ストリート・ジャーナル紙によれば今年日本で53件のMBOがありその金額は32億ドル相当である(トムソンファイナンシャル調べ。ただし金額に買収会社の借金は含まず)。これは昨年の33%増で2001年の6倍以上の数字である。勿論これは同時期の米国の112件630億ドルに較べると小さいが、ドイツの33件59百万ドルなどよりははるかに大きい。

日本では企業は株式上場を望んでいたので、MBOは比較的新しい手法であるが、経営者達は敵対的買収やものを言う株主の増加につれて株式公開のメリットを再考している。(つまりこの問題についても過去の常識は急速に陳腐化している)

ウオール・ストリート・ジャーナル紙はスカイラークとクレーンメーカー・キトーの二つの例をやや詳しく紹介している。

  • スカイラークは若年層の減少のため、純収入は1999年から昨年の間に121百万ドルから57百万ドルに減少した。昨年秋同社の株価は過去3年で底値をつけていた。
  • 150の不採算店を閉鎖して高級店化するためのリストラを計画した同社の横川社長は5万人の株主がリストラ実施の2年間を待てない株主のことを悩み、MBO専門家達と相談して今年6月にテンダーオファーを行ない、上場を廃止した。この時株式パートナーになったのが、ロンドンのCVCキャピタルパートナーや野村・プリンシパル・ファイナンスだ。前者はスカイラークの35%、後者は6%の株式を保有し、残りは経営陣や従業員が保有している。
  • キトーは2003年にカーライルグループを頼りMBOを実施した。カーライルはキトーの9割の株式を保有している。カーライルはコアビジネスのクレーンに集中することを急がせ、遊休不動産や不採算の倉庫を売却させた。これによりキトーのオペレーティングキャッシュフローは2倍になった。カーライルは他の6社にも投資している。

冒頭の議論を繰り返すならば、日本人は欧米人にハッパをかけられ、やれ「敵対的買収だ」「防衛のためのMBOだ」などといっている内にいつの間にか米国の次の買収・合併王国になっているのかもしれない。しかしその時一番ハッピーになっているのは誰だろうか?買収を仕掛けたファンドや仕掛け人の投資銀行だけがハッピーということでなければ良いのだが・・・と危惧する次第である。日本の会社や従業員もハッピーなウィン・ウィンの関係を築けると良いのだが。

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特例高金利撤回を評価し、メガバンクを叱る

2006年10月25日 | 社会・経済

貸金業規制に関して、自民党金融調査会の幹部会は10月24日批判の強かった特例高金利や実質利上げになる金利区分の変更を撤回する方針を決めた。自民党が9月にまとめた改正案は世論の強い批判を浴び、衆院統一補欠選挙で協力を受けた公明党の主張を丸呑みして大幅修正した形だ。

サラ金問題については私もブログが月一回寄稿している雑誌(ニューファイナンス)の中で私見を述べ、上限金利引下げを主張してきた。いわば世論の末端に参加した訳で今回の自民党の判断を評価したい。

今回の自民党の決定については幾つかの点で注目しておくべきことがある。一つは法律や政策決定が「政治献金の多い業界寄り」から「消費者重視」へ動いてきたことだ。今後パチンコ業界等の動きを見る上でも試金石となるだろう。

次の株式投資等の観点からいえば、消費者金融会社が相当なダメージを受け、メガバンクに大きなビジネスチャンスが生まれたということだ。それにしてもメガバンクというものは直ぐ驕りたがるものと一般消費者に思われかねない記事が「サラ金記事」の横に出ていた。それは「大手3行 政治献金再開を検討」というものだ。

メガバンクの中には米国に駐在経験を持つ社員もいるだろうから、もう少し米銀のスマートなところを見習ったらどうかと思うことがある。その一つが銀行等の地域貢献だ。米国ではCommunity Reinvestment Actという法律があり、金融機関に地域貢献を求めている。貢献方法はさまざまだが、低所得者層への低利融資というプログラムを実行している金融機関も多いはずだ。

以上の話をまとめると、メガバンクは政治献金の話を出して一般消費者の感情を逆なでするのではなく、地域貢献プログラムでも発表する方が宣伝上良いのではないだろうか?

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