少し前までネパールを旅していましたので、ジェロントロジ―のお話も中断していました。
さて旅から戻って眼にしたのがモンベルの季刊誌OUTWARD最新号(2023年Winter)に出ていた角幡唯介(かくはたゆうすけ・極地旅行家)さんと辰野勇(モンベル代表)の対談です。
対談の中で辰野さんは「76才まで生きてきて思うのですが、人生は『居場所探し』の旅でもあると思うんです。人それぞれ、居心地の良い場所を探して生きている。私の場合は、モンベルや各地の山々が自分の居場所です」と語ります。
山好きな人は多いですが、山に直結した仕事を後期高齢者になっても続けている人はそれほど多くないでしょう。むしろ例外といってよいでしょう。
もっとも私は何人かその例外を知っています。たとえば飛騨の某ペンションのご隠居で今も山スキーなどのガイドをされている80才のUさんなどです。
また悠々自適の生活を奥美濃の自宅兼別荘で送り日々白山を眺めている先輩のIさんなども自分の居場所を見つけた人といえるかもしれません。
それに較べて私などは時々山に行くものの、それ以外の大半の時間は自宅で過ごしています。今のところスポーツクラブやボランティア活動で外出することが多いのですが、やがては家内と二人で過ごす時間がもっと増えていくでしょう。おそらくそれが終(つい)の居場所になるかもしれませんね。
と思うとぱっとしない話なのですが、辰野さんは対談の最後にこう述べていました。
「この先いつか、家族に囲まれて暮らすのが、居場所になるかも分かりません。それは決して悪いことではなくて、その場その場で納得がいくまで行動してきたコス、思いつく世界でしょう」
辰野さんの言葉と「The Good Life よい人生とは」の著者ロバート・ウォールディンガーの言葉を重ねて考えてみましょう。
彼はこう述べています。
「幸せな人生とは、時間をかけて展開していく一つのプロセスだ。幸せな人生とは目的地ではないことを認識することだ。幸せな人生とは道そのもの、道をともに歩く人たちそのものだ」
二人の言葉から見えてくる一つの答は「幸せは人生とは居場所を探して旅を続けることそのもだ」と私は思いました。