金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アマゾンで本を売るコツ

2008年01月31日 | うんちく・小ネタ

最近アマゾンに出展する中古本が良く売れるようになった。今日も帰宅後メールを開くと「本が売れたのですぐ送ってください」というメールがアマゾンから届いていた。売りに出していた本は「イギリス経済 再生の真実」日本経済新聞社1700円。これを1,500円で売りに出していたところ数日で買い手が付いたのには本当に驚いている。新品価格と中古価格の接近度合いが高く、私が過去アマゾンで売った本の中で最高に回収率が良い。

私は仕事柄?この手の経済本はよく買う方だが、買った本を長年使うかというと必ずしもそうではない。経済や政治を取り上げた本の旬(しゅん)は短い。年月に耐えられる本は多くないのだ。そこで最近は読みたい本が出たらサッと買って、必要な情報を仕入れたらアマゾンで売却することにしている。この類の本のポイントは図表やグラフにあることが多い。そこで将来レポートやエッセーに利用することを考えて重要と思う図表などは電子的に保存しておく。電子的に保存するにはスキャナーを使う方法もあるが、複合機の立ち上げに時間がかかるとか本の体裁を傷める可能性があるという問題がある。そこで私はデジタル一眼レフを使って必要部分を写真に取っておくことも多い。複数ページのポイント部分を記録しておくという点ではデジタル一眼レフの方がスキャナより使い易いと私は考えている。

さてアマゾンで本を早くしかも高く売る方法だが、買ってくれた人の評判を高めることが一番である。本を買った人(私は売り手であると同時に買い手でもあるが)は、売り手の評価を求められる。「迅速な出荷」だとか「中古本の状態に対する説明と現物の食い違いがないか?」などの観点から買い手は売り手を評価し、その評価がアマゾンのサイトに表示されている。これがネットで商売する上で一番重要な信用格付なのだ。

私は最初の頃、本が売れた場合郵便局のExpack500という速達小包のような配送サービスを使って売れた本を出荷していた。Expack500は全国どこでも500円。アマゾンが想定している郵送料340円(書籍小包の料金に近いだろう)より高いが、配達時間が短い(と思われる)ので買い手の方々には喜ばれたようだ。それが幸いしたのか私は買い手の方々から最高級の評価を得ている。

最近はアマゾンの仮想古本屋に出した本が短期間で良い値段で売れるようになったが、私はその原因を早い段階で高い評価を得たことにあると考えている。そしてそのポイントは恐らく買い手の方々が予想を超える程早く注文品を受け取ったことにある。商売のポイントはこの「予想を超える」ことにあると私は考えている。並のサービスは顧客にインパクトを与えない。極小さなことながら「評価を得る」ということの大切さを学んだ次第である。

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邦銀、金はあっても人はなし

2008年01月31日 | 金融

FTは「米銀がサブプライムローン問題で苦戦している今こそは邦銀が海外で商売を伸ばすチャンスのはずだ。しかし邦銀の動きを見ていると腰が引けている。邦銀は自己資本比率も充実している。つまりWell-capitalisedだ。しかし邦銀は海外業務の拡大について経営陣の優柔不断から萎縮している。アナリスト達は国際市場を理解している管理者層を欠いていると分析している」と報じている。

若干の補足を加えると90年代に日本の銀行が不良債権処理に苦しんでいた時、米国勢は日本の不良債権を銀行からの直買いを含めてしこたま仕入れた。不良債権は価格が100であるから、割高で不良なのだが、価格がその何分の一かに低下すると、高い利回りで回る優良債権なのだ。

三菱UFJの畔柳社長はチャンスが訪れたら我々は米国にでも欧州にでも投資することを考えるだろうと述べている。他の大手行の社長も同じようなことを行っている。しかしこれらのトークは「口先ばっかり」とアナリストや海外の専門家には響いているようだ。みずほGはメリルに出資したが、出資比率はわずか2-3%なので、海外業務強化の点で意味があるのか?と疑問を投げかける人もいる。

JPモルガンの銀行アナリスト笹島氏は「邦銀の人的資源の不足問題は金融資本の不足問題よりなお悪い」と喝破している。日本の銀行は外銀の苦境を商売のチャンスにしうる資本は持っているが、人材がいないということだ。

若干のコメントを加えよう。90年代の後半からつい少し前まで、多くの邦銀は最初は格付・株価の低下に起因する預金流出に苦しみ国際業務を熟知した連中まで支店の資金吸収に回した。背に腹は替えられずというところだが、これは優秀な戦闘機乗りに鉄砲を担がせて塹壕戦に向かわせるようなものだ。ここで若くやる気のある行員達は外資系金融機関や他の職に転職した。

次に少し資金繰りが落ちつくと投資信託の販売や住宅ローンの拡販にもこれらの人材を投入した。これはこれでそれぞれの銀行の立派な経営戦略であり、邦銀の収益は立ち直ってきた。しかしその過程で厳しいポスト争奪が行われ、割りを食った国際部門の出身者は多かった。彼らの内力のあるものは外資に転職した。

その結果邦銀で国際業務のプロは全く少なくなり、今回のようなチャンスが巡ってきても、刈り取ることができなくなっているのだ。もし邦銀がこのチャンスを本当に生かそうと考えるなら、飛び出したり、事実上追い出したりした連中をちゃんとした処遇で呼び戻すことである。

しかし私はその可能性は極めて低いと考えている。何故なら経営陣や人事部にそのような大胆なこと(世界的には普通のことで邦銀にとって大胆というだけだが)をするインセンティブがないからだ。つまり銀行を良くしても経営陣に対する見返りが少ない。また悪くしてもそれ程待遇は変わらない。

むしろ彼等にとって怖いのは行内の人事ヒエラルヒーが崩れることなのだ。 つまり邦銀の幹部連中は企業の将来や世界を見ているのではなく、社内の眼や金融庁を見ているのである。

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中国のエネルギー事情

2008年01月30日 | 国際・政治

旧正月の国民大移動時期を前にして、中国では半世紀ぶりの大雪と電力不足から大混乱が生じている。適切な政府の指導の下、まずは人的被害を最小に食い止められることを切に希望する。

ところで中国の電力不足は石炭不足に起因する。中国は石炭確保のため、輸出ストップに動いている。これにより中国から石炭を輸入している日本にもまもなく影響が出てくるだろう。そのようなことから中国のエネルギー事情か簡単にチェックしてみた。元ねたは外務省が発表しているものだ。

中国のエネルギー供給量の世界シェアは13.5%で2020年にはこのシェアは1%程度上昇する。ちなみに日本のシェアは4.9%(データはいずれも2003年)。

中国は米国に次ぐ世界第2位の発電国(世界シェア11.7%)、日本は3位でシェア(6.2%)、4位ロシア5位インドと続いている。中国の発電力の構成は次のとおり( )内は日本

石炭79.4%(28.2%)、水力14.6%(9.1%)、天然ガス0.7%(24.3%)、原子力2.2%(23.1%)

中国は非常に石炭への依存度が高い。中国は世界一の石炭産出国(シェア36.2%)であるとともに、世界一の石炭消費国(シェア34.4%)だ。中国は石炭の輸出国であり、輸出先のトップは日本だ。

中国で起きている電力不足の問題は、発展途上国の成長のボトルネックを示しているとともに、10年20年先の世界のエネルギー危機の予兆かもしれない。中国の大雪や石炭不足は目先インフレ問題だけでなく、資源問題に大きな波紋を投げるだろう。

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必要な改革とは?

2008年01月29日 | 社会・経済

最近エントリーした「福田首相では株も経済のだめだ」にコメントを頂き「構造改革とは何を指すのか?」という質問があったので、幾つかの例でお答えしたい。私が必要と考えている改革の一つは「少子高齢化」や「企業間競争の国際化」に備えて、「人材の活性化と流動化」を促進するべく関連法規の改正と整備を進めることである。次に大都市部と地方の格差を是正する具体的な施策。例えば首都機能の一部移転などである。次に年金制度の改革である。改革の骨子は基礎年金部分を税で賄い、社会保障化することと統一年金番号の導入により、国民が自分の年金受給(予想)額を随時確認できる制度を作ることである。

労働問題についていうと「同一労働・同一成果に対して同一賃金を払う」という原則を立てるべきだろう。今は同じ労働を行っても、正社員であるか臨時雇用であるかということで賃金に差がありすぎることが問題だ。(もっとも正社員は会社の都合で転勤を命じられる等の義務を負っているので、その分は割り引いて考える必要がある)

又日本の残業に対する割増支払い率が欧州に比べて低いことも問題である。このため企業は仕事が増えても正社員を増やすという対応を取らず、正社員の残業やパートの採用で対処しようとする。その結果正社員の雇用が増えず、所得が伸びないのである。

このような改革を経て、労働コストが上昇してくると企業は労働生産性を高める行動を取り、合理化が進み競争力が高まるのである。また働く側もトータルな意味で豊かな生活をおくることができるようになる。

日本には改革するべきことが沢山あると私は考えている。

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中国、環境汚染の根の深さ

2008年01月28日 | 国際・政治

統計上中国の順調な経済成長が続いていいるが、私は早晩~恐らくオリンピックを屈曲点にして~ 成長は鈍化せざるを得ないと考えている。その理由は経済格差問題と公害問題に対処する投資を余儀なくされ成長速度が鈍るということだ。

エコノミスト誌は最近「水を飲むな 空気を吸うな」Don't drink the water and don't breathe the airという題で中国の環境汚染問題を取り上げた。記事によると楽観主義者は3月の全国人民大会で環境保護局が省に格上げされ本格的に環境問題に手が着くと主張するがこれは楽天的過ぎるようだ。

今中国で大きな問題になっているのは中国で三番目に大きい淡水湖・太湖Taihuの汚染問題である。長江デルタ地帯にある太湖は3千万人以上の人の水瓶になっていたが、工場、農耕地、住宅地からの下水で汚染され有毒な藻が発生し、水が飲めなくなってしまった。近隣ではペットボトルの水の値段は6倍に跳ね上がっている。中国政府はこれを天災だといっているが、下水の野放図な流れ込みを防がなかったなど明らかに人災である。

太湖の汚染では農民で環境保護運動を行ったWu Lihong氏が環境汚染を起こしている企業に「ゆすり」を行ったとして、3年の禁固刑を言い渡されている。この話を読んで昨日観た映画「母(かあ)べえ」を思い出した。「母(かあ)べえ」では、日支事変を批判した夫が治安維持法違反で警察に逮捕され獄死してしまう。中国は戦前・戦中の日本のように言論の自由がない危険な国であると改めて思った。

中国政府は昨年世銀にレポートから中国における公害による推定死亡者数を取り除く求めた。しかし共同研究を行った中国環境保護局のウェッブサイトには中国の2百万人を越えるガン死亡者の内7割は公害に関係しているとガンの専門家は信じていると小さく掲載している。世銀は75万人が公害関係で死亡していると発表する計画だ。
中国政府はこれらの数字が社会不安を引き起こすと懸念している。ともあれ、国民の環境意識と怒りは増加している。

環境保護局はかって「グリーンGDP」(GDPから環境ダメージコストを差し引いたもの)を調査し、2004年における環境ダメージコストはGDPの3.05%に相当するという数字を出した。(昨年7月統計局は「グリーンGDP」という概念は国際的に受け入れられていないので政府首脳が使わないと決めたと発表した)
中国のGDPは20兆元だからその3%は6千億元だ。中国政府は06年から10年の5年間に1.3兆元の環境対策費を使うといっている。1.3兆元を5年に
割ると年2千6百億元だ。もっともこの予算は砂漠化防止等にも使われるので、公害対策に使われる予算は相当少ないようだ。これでは環境保護はかなりおぼつかないようだ。

中国の環境問題は国民生活を直撃し、社会不安を引き起こし、政府に対する信頼を揺るがしかねないだけに眼を離すことのできない問題である。特にオリンピック開催時期は外国のマスコミや活動家達の目が厳しくて、中国政府も環境活動等に対して高圧的な取締が行いにくいので、目を凝らしていると色々なことが見えそうである。


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