昨日(10月29日)に米国商務省が発表した第3四半期(7-9月)の実質GDP成長率は年率換算3.5%と5・四半期ぶりにプラスに転じた。3.5%という成長率は過去80年間の平均成長率だ。株式市場はこの数字にすなおに反応し、大幅上昇した。米国のGDP成長率がプラスに転じたことに加えて、IMFがアジア・太平洋地域のGDP成長率の見込みを引き上げたこともプラス材料だった。5月時点でIMFは同地域の今年の成長率を1.2%と予想していたが、今回は2.8%に引き上げた。また2010年の見通しを4.3%から5.8%に引き上げている。
しかしニューヨーク・タイムズはムーディーズのBrusuelas氏の「2010年は経済成長の年になるだろう。しかし『雇用なき成長』Jobless growthと特徴付けられるだろう」という言葉を紹介している。またエコノミスト誌はA Jobless recoveryという題で、今後の課題に対する見解を述べている。
Jobless growth, Jobless recovery 「雇用なき成長」「雇用なき景気回復」というのは、米国をはじめとする先進諸国の今後の景気回復を特徴付ける言葉になるかもしれない。
米国が7-9月にプラスに転じた大きな原動力は、ポンコツ車買取プログラムとはじめて住宅を取得する人に8千ドルの連邦税還付を行う景気刺激策により耐久消費財購入が増えたことだ。
エコノミスト誌によると英国のインターネットによる世論調査システムYouGovはオバマ政権の景気対策に対する反対:賛成が47:43である。同誌はオバマ政権が更なる景気刺激策や失業対策を取ろうとしていることに対して、「失業保険給付を2,3週間の伸ばすことや失業者に対する医療保険補助を延長することは、意味あることだけれども、住宅取得に対する税制優遇や失業者に追加給付を行うような政策は財政を一層悪化させるので問題だ」と警告している。
同誌はインフレは沈静している(第3四半期のインフレ率は1.6%、食糧・エネルギーを除くと0.5%)ので、連銀が政策金利の引き上げを延期し、財政出動は抑制するべきだと主張する。
米国の景気回復が軌道に乗りつつあるとはいえ、回復に兆しが見えない労働市場と財政悪化の綱引きの中でまだまだ難しい状況が続くと見るべきだろう。