金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米、成長率プラスに転じるも雇用なき回復か?

2009年10月30日 | 社会・経済

昨日(10月29日)に米国商務省が発表した第3四半期(7-9月)の実質GDP成長率は年率換算3.5%と5・四半期ぶりにプラスに転じた。3.5%という成長率は過去80年間の平均成長率だ。株式市場はこの数字にすなおに反応し、大幅上昇した。米国のGDP成長率がプラスに転じたことに加えて、IMFがアジア・太平洋地域のGDP成長率の見込みを引き上げたこともプラス材料だった。5月時点でIMFは同地域の今年の成長率を1.2%と予想していたが、今回は2.8%に引き上げた。また2010年の見通しを4.3%から5.8%に引き上げている。

しかしニューヨーク・タイムズはムーディーズのBrusuelas氏の「2010年は経済成長の年になるだろう。しかし『雇用なき成長』Jobless growthと特徴付けられるだろう」という言葉を紹介している。またエコノミスト誌はA Jobless recoveryという題で、今後の課題に対する見解を述べている。

Jobless growth, Jobless recovery 「雇用なき成長」「雇用なき景気回復」というのは、米国をはじめとする先進諸国の今後の景気回復を特徴付ける言葉になるかもしれない。

米国が7-9月にプラスに転じた大きな原動力は、ポンコツ車買取プログラムとはじめて住宅を取得する人に8千ドルの連邦税還付を行う景気刺激策により耐久消費財購入が増えたことだ。

エコノミスト誌によると英国のインターネットによる世論調査システムYouGovはオバマ政権の景気対策に対する反対:賛成が47:43である。同誌はオバマ政権が更なる景気刺激策や失業対策を取ろうとしていることに対して、「失業保険給付を2,3週間の伸ばすことや失業者に対する医療保険補助を延長することは、意味あることだけれども、住宅取得に対する税制優遇や失業者に追加給付を行うような政策は財政を一層悪化させるので問題だ」と警告している。

同誌はインフレは沈静している(第3四半期のインフレ率は1.6%、食糧・エネルギーを除くと0.5%)ので、連銀が政策金利の引き上げを延期し、財政出動は抑制するべきだと主張する。

米国の景気回復が軌道に乗りつつあるとはいえ、回復に兆しが見えない労働市場と財政悪化の綱引きの中でまだまだ難しい状況が続くと見るべきだろう。

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景気回復の三段ロケット、二段目で失速懸念

2009年10月29日 | 金融

昨日(10月28日)米国株式市場は、新築住宅販売件数の予想外の低さが景気回復懸念を高め大きく値を下げた。ダウは119ポイント(1.2%)下落。株式市場はコレクション局面に入ったようだ。新築住宅販売件数の市場予測は44万件だったが、発表された数字は40万2千件だった。

米国の住宅市場が回復してきた理由は、政府が始めて住宅を取得する人に8千ドルのタックス・クレジットを与えていることや、住宅ローンの金利が5%と低めに設定されていることにある。だがこれらの住宅販売促進政策はそろそろ息切れしそうな感じだ。

債券運用で有名なピムコのビル・グロス氏は、現在の景気回復過程を三段ロケットにたとえている。一段目・二段目は各国政府の大量の流動性供給・超低金利策といった金融政策や、自動車の買換えへの税金優遇や補助金の交付などの景気刺激策と企業の在庫圧縮努力。この効果で最悪期は脱しつつあるように見えた。

だがビル・グロス氏は景気が本格的に回復するには、消費であれ、設備投資であれ、輸出であれ、民間の需要が高まる必要があると述べ、民需が回復するには「オールドノーマル」から「ニューノーマル」への移行が行われる必要があるという。

「ニューノーマル」の時代とは、過度の消費よりも節約・倹約が美徳とされる世界。たとえば大型のSUVを乗り回すことが格好良いと考えられた時代をオールドノーマルとすれば、少し高級な自転車に乗って環境に優しく、かつ健康的な生活を送ることがニューノーマルと理解して良いだろう。

ビル・グロス氏は「オールドノーマル」な経済について「1970年代後半のインフレ終息により、80年代から低金利時代が続き、規制緩和や金融技術により金融レバレッジ(借入)が拡大し、年5,6%のGDP成長が続き、株・不動産・コモディティの価格が上昇した時代で、米国の消費者は借金を恐れずに消費を謳歌した」と述べる。だがリーマン・ショックで反転が始まった。経済成長率は今までの半分程度になる。長短金利の目先の上昇はない。しかし当局の金融機関に対する規制強化が高まるので、借入の削減(ディレバレッジ)が進む。

このような状況の中人々はまだ「ニューノーマル」という新しいパラダイムになじめないので混乱する・・・という訳だ。

もしビル・グロス氏の「ニューノーマル」と三段ロケット論が正しいとすると、今年の春先から多少の踊り場はあったにしろ、続いてきた株式の強気相場は少しはしゃぎすぎていたのかもしれない。もっとも好悪いずれにせよ材料を先取りしたがる株式市場とはこのようなものかもしれない。

因みにビル・グロス氏は当面株を買うなら、値上がり期待銘柄より配当狙い銘柄だとピムコのレポートの中で書いている。

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住信と中央三井、統合のドライビング・フォース

2009年10月27日 | 金融

今日の午後、市場に住信と中央三井が2011年春を目処に経営統合をするという観測記事が流れ、両行の株式は売買停止になった。朝日新聞(ネット)によると新社名は「三井住友」ということだ。穿った見方をすると次に三井住友フィナンシャルGとの統合を進めるための新社名かもしれない。

以前から統合のうわさのあった両行だが、もし今回統合に向かうとするとそのドライビング・フォースは何か?と考えてみることは経済学的に興味深い作業だ。

順不同でその背景を考えてみよう。

第一はやはり「大きくないと生き残りにくい」ということだろう。Too big to failということは米国発の金融危機で身近に見たこと。このブログでも書いたが、米国では今年既に100の地銀が破綻しており、更に数百の予備軍が控えている。金融システム全般に与える影響が小さい銀行には国が救済の手を差し伸べない。新しい自己資本規制の動きは判然としないが、かなり高いハードルとなると推測される。自己資本は質、比率ととも絶対量が必要だろう。自己資本に関連して言うと中央三井にとって政府が保有する普通株の買入消却(あるいは民間株主へ譲渡)が経営の柔軟性を確保する上で大きな課題になっている。しかし金融機関の増資競争が激化する中で、これらの資本政策の実施が難しくなっていることもドライビング・フォースになっているとも考えられる。

第二は「縮小する国内市場のパイの取り合いを止める」ということだ。信託銀行の大きな資金源は退職金市場だった。しかし団塊の世代の退職とともにこの市場は縮小する。また信託銀行の顧客基盤である比較的裕福な高齢者層も今後、資金を流出させる。企業与信についても設備投資の低迷から向こう数年は低迷するし、不動産市場の急速な回復も望みにくい。このように縮小する市場で競争するよりは、競争相手と統合する・・・という考え方は戦略的に正しいだろう。

第三は「銀行における団塊の世代の退職」だ。高度成長期に大量に採用した社員が退職しつつあり、現在はオイルショック後採用した社員が役員・幹部になっている。この年代は採用数が少なかったので、経営統合してもそこそこのポストを配布できると推測される。

第四は「日本の金融業務で比較的収益性があると考えれれる資産運用業務で住信の優位性が確定した」ことだ。住信は今年の7月に日興アセットマネジメントを買収した。これでメガバンクに拮抗する預かり資産を手にしたがこの優位性は大きい。なお資産運用業務は比較的収益性があると考えれると書いたが、それがいつまで続くか?ということに私は疑問を感じている。資産運用に知見を持つ個人投資家は上場型投信のように低コストで流動性の高い資産運用を目指すので「資産運用神話」がどこまで続くか疑問だ。勝手な想像を働かすと日興コーディアルを買収した三井住友フィナンシャルGと経営統合することで証券業務の一気通貫が完成すると考えている人もいるかもしれない。

第五として金融庁の思惑が影響しているのではないか?という想像を禁じえない。中央三井に対して金融庁は業務改善命令を7月に発出している(詳細は不明だが同行は9月に改善計画を提出している)。金融庁が金融システムの安定を目指してより強い金融機関の創出意図を持っていることは想像しうるところだ。

まあいずれにせよ、これは金融再編の一つのプレリュードになりそうだ。

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米地銀の破綻100を超える

2009年10月27日 | 金融

10月23日フロリダのパートナーズ銀行が今年米国で破綻した100番目の銀行になった。エコノミスト誌によると、米国の地銀の破綻が最も多かった年は1989年。S&L危機のピークで、534行が破綻した。しかし破綻した銀行の数が金融危機の規模を測るベストな物差ではない。何故なら金融機関の数が当時の1万6千から半分の8千に減少しているからだ。

破綻した銀行の資産総額で比べると、S&L危機では金融システム全体の4.4%強であり、今回は3%強だ。

連邦預金保険機構の問題銀行リストには416行の名前が載っているし、調査会社のクレジット・サイト社は経済状況が変わらないと更に600行が破綻する可能性があり、状況が悪くなると1000行以上が破綻する可能性があると述べている。

大手行は投資銀行業務等収益源が多様化しているし、政府支援があったので何とか凌いできたが、価格下落の続く商業用不動産融資などが重荷になっている小規模な銀行には救いなさそうだ。

しかしエコノミスト誌は小規模銀行の破綻は金融システム全般を脅かすものではないだろうと述べている。

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晩秋の武尊山

2009年10月26日 | 

10月25日(日曜日)、会社の山仲間を中心とした9人で宝台樹キャンプ場から武尊山(2,158m)を往復した。キャンプ場から5分程車を走らせ、武尊神社の手前で駐車。登山開始は6時15分頃。

Hotakajinjya

神社の横の看板には貞観(西暦865)の頃より「保宝鷹神社」と称され・・とある。これが事実だとすると空海が高野山に金剛峰寺を建立してから50年位後のことなのでもの凄く古い神社だ。

40分程林道を歩くと剣が峰に向かうコースと武尊山に登るルートの分岐点である。左側の武尊山ルートを登る。道は小さな沢を4,5回横断しながら尾根を目指す。1時間弱の登りで尾根に出た。数分歩くとトタン屋根の避難小屋が左手の谷底に見える。9時10分頃最初の岩場に到着。

Iwaba

武尊神社からのルートには3ヶ所岩場がある。特に危険というほどのことはないが、足場が滑りやすいので注意したい。武尊山の石は押しなべて平滑で滑り易い。

Iwaba2

木製の梯子が傾いているのも気になるところだ。何時か誰かが転倒するのではないか・・・という気がする。武尊山は地味な山で登山客が八ヶ岳などに比べると少ないのでこんなチャチな梯子で間に合っているのだろう。

頂上に近付くにつれ、風が強くなり寒くなってきた。頂上の手前の山道はスレート瓦のように薄い石が敷き詰められている。石を踏むたびに乾いた金属音がした。10時2分頂上到着。霧の中で何も見えない。

Choujyou

風に当たると寒い。下山後見たら水上の気温が15度位だったので、1500m程高い武尊山の頂上では気温は5度前後だったのだろう。昼食を食べて来た道を引き返す。

13時林道終点到着。13時55分駐車場。正味は登り4時間降り2時間半のルートだが、降りは足が疲れたので休み休み降りたので少し時間がかかった。

下山後JR水上駅の近くの日帰り温泉に入って帰る。お湯に浸かると体がジンジンした。結構冷えていたのである。温泉から出ると4時前なのに水上の空は薄暗かった。山には冬が近づいている・・・と感じながら私は東京に向かった。

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