29日付のニューヨーク・タイムズは地元の開発業者と上海の開発業者がジョイントベンチャーを作って、別荘の開発と分譲を行うと報じていた。
これは「中国デベロッパーが日本の不安定な状態に進出する」Chinese developers tap into Japanese insecurityという時節柄読者の関心を引きやすい見出しの記事の中の一つのエピソードだ。
記事は今月NHKのクローズアップ現代「日本の森が買われていく」http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2932を紹介しながら、中国資本による日本の土地買収が関係者の危機意識を高めている状況を紹介している。
もっとも森林資源を買収している外国資本は中国資本だけではない。クローズアップ現代で紹介された北海道倶知安市の森林57万エーカーを買収したのは香港在住のフランス人富豪(奥さんは中国人だが)。NHKは買い手に購入目的を聞きに行くが投資目的というありきたりの返事が返ってきたのみである。
ニューヨークタイムズは中国人の不動産買収に脅威を感じる日本人の感情はロックフェラーセンターを日本人に買収された時の米国人の感情を思い起こさせると述べている。
だが私から見ると今のところ森林や廃れた温泉地を二束三文で買っている中国人やその他の外国人の方がランドマークを買い漁った日本人よりはるかにスマートで合理的な投資を行おうとしているように思われる。
80年代に米国の不動産を買い漁った日本人は「一等地の有名オフィスビルやホテルは値上がりを続ける」という盲信(今となってはだが)のもと、高値でこれらの物件を買った。だがやがて景気の悪化と空室率上昇・稼働率悪化でこれらの物件を持ち続けることができなくなり大半を安値で売って手仕舞いすることとなった。
中国人など外国勢が日本の森林を買っている(その全貌は分からないが)理由は何だろうか?
推測すると一つは長期的な森林資源への投資。米国では森林投資は今スマートな投資と思われているようだ。だがひょっとすると買収後短期的に大規模な伐採を行い、高級住宅建築ブームに沸く中国に持っていく狙いかもしれない。もしそうだとすると水源確保や治水上の問題が起きるかもしれない。しかし森林の売買については1997年に規制緩和が行われ、売買は事後届けで済むようになった。従って外資による森林買収を法的に規制することはできない。
一方三朝温泉のように観光客が減り地価暴落に喘いでいる温泉地などではお金持ちの中国人を歓迎する声もある。
そして私は過疎地におけるこのような投資は受け入れるべきなのだろうと考えている。
ただしである。受け入れる前に地域の景観を守る建築協定のような枠組みをしっかり作っておく必要があるだろう。日本で多くの町が「伝統的な街の景観を大事にする」という努力を怠ったため、まことに風情のない町並みが生まれ、結果として観光資源価値が失われた(ヨーロッパと比較するとよくよく分かる)。
その反省を踏まえて外資の本格的進出の前に手当てをしておかないとそれこそ奇妙奇天烈な景観が生まれるかもしれない。