金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

潮来は喧騒、香取は荘厳

2009年05月31日 | 旅行記

5月31日日曜日、少し前まで雨の予想だったが午前中は曇程度で何とか持ちそうだということで、前夜急に決めてワイフと潮来と香取神宮に出かけた。土日の高速料金が1千円になってからワイフと出かけるのは初めて。7時に西東京市の自宅を出て9時半頃潮来についた。不安定な天気のお陰で道は空いていた。潮来では「潮来トライアスロン」の最中でアスリート達が自転車を軽快に走らせていた。

潮来はアヤメのシーズンだが、想像していたより空いていた。市営の無料駐車場に車を止めて「前川あやめ園」に向かった。

Itako

ここから手漕ぎの船で約40分「前川」という水路を往復した。大人一人1千円である。九州の柳川で船巡りをしたことのあるワイフは「柳川の方が情緒があった」という。確かにここの船巡りは開けっぴろげであまり情緒はない。

Itakohune

船頭さんは老若男女さまざま。時折若い女性の船頭さんが漕ぐ舟に出会うと皆歓声を上げる。

Onnasendo

船頭さんのプライバシーもあるから顔が隠れた写真を一枚掲載。あやめ園には「潮来の伊太郎」など歌謡曲がガンガン流れ少し喧騒である。潮来はやや期待外れだった。

車で30分程東京側に戻り香取神宮をお参りした。深い森の中の参道の両脇には奉納された大きな石灯籠が並び、信仰の厚さがしのばれる。

Tourou

朱塗りの門が新緑に映えて美しい。

Katorimon

黒々とした拝殿は厳かである。

Honden

お昼は神社の入り口に並ぶお蕎麦屋さんの一つ「亀甲堂」で「あなご天ざる」を食べる。値段は1,300円程。手打ちのこしのある蕎麦と大ぶりのあなごが美味しかった。参道のかえでの木々が立派なのでお店のご主人に「紅葉はどうですか?」と聞いたところ、12月の初旬に夜のお祭り(団碁祭など)があり、その頃が見頃という話だった。

香取神社から車で10分程走り、古い町並みを残す「佐原地区」を散策した。ここには日本で始めて実測による全国地図を作った伊能忠敬の旧宅や記念館がある。

Inou

「小江戸」と呼ばれる佐原地区には古い商店などが残っている。写真は中村屋という雑貨屋さんだ。

Nakamuraya

アートフィルターの「トイカメラ」を使い、レトロな味を出してみた。フランス料理の夢時庵というレストランがあった。午後1時半頃だったが大勢のお客さんが入っていた。

Yumejian

これらの古い建物は小野川沿いに並んでいる。その小野川を観光客を乗せたエンジン付きの船が行きかう。こちらもレトロ風に仕上げた。

Saharabune

今回私は潮来の水郷を船で巡ったが、佐原水郷の十二の橋を巡る「十二橋船巡り」を楽しんだ方が良かったかもしれない。急な思い立ちの旅行というものには小さなミスはツキモノのようだ。

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ニューヨーク・タイムズ、検察に媚びる日本の新聞を切る

2009年05月29日 | 社会・経済

日本のことを日本のメディアからではなく、外国の新聞から学ばねばならないことは残念である。今日(5月29日)のニューヨーク・タイムズは「日本のメディアは検察庁が流す情報を丸投げ」という記事を書いていたがこれもその一つだ。

記事は西松建設からの政治献金問題で小沢前民主党代表の公設秘書が逮捕された件について、検察庁の政治的意図と検察ベッタリの大手メディアの報道を批判する。記者のFackler氏は保守論壇の中西輝政京大教授の意見から述べはじめる。曰く「マスメディアは国民にとって何が重要かということを告げることに失敗している。日本は政府を変えて、政治的マヒ状態から脱却するチャンスを失おうとしている。国民がそのことを知らない内に」

実際のところ公設秘書逮捕以来落ちていた民主党の支持率は、鳩山代表選出後若干反発している。だが選挙見通しが混沌としていることに変わりはない。

記事によると日本のジャーナリストは小沢前代表に厳しく、全般的に検察寄りであることを認めているが「メディアは単に検察の発表を繰り返しているだけだ」という批判には怒りを示している。ニューヨーク・タイムズはこの点について朝日新聞に質問したところ、朝日からは「朝日は検察のリークだけをもとネタに記事を発表することは決してなかった」と書面で反論してきた。

だが日本のジャーナリスト達は彼らの報道が日本の新聞の独立性に疑問を起こさせることを認めている。上智大学の田島康彦教授は「ニュース・メディアは権力の監視者であるべきだが、彼らは権力の番犬のように振舞っている」と述べる。原文ではThe news media should be watchdogs on authority, but they act more like authority's guard dogs. Wachdogもguard dogも「番犬」だが向いている方向が逆だ。国民のために権力を監視するのがwatchdogで、国民の眼から権力を守るのはguard dogという訳だ。

日本のメディアが検察庁の意向にそった報道しかできない理由は「記者クラブ」制にある。検察の意向に逆らうと「記者クラブ」出入り禁止となって記事が書けなくなるからだ。ニューヨーク・タイムズによると全国紙より積極的な東京新聞は自民党の西松建設政治献金問題を報道したため、3週間の記者クラブ出入り禁止となった。何故なら検察庁はこの件を公(おおやけ)にすることを望んでいなかったからだ。

社会民主党の衆院議員・保坂展人氏は「小沢氏がターゲットとなったのは、民主党が検察庁を含む官僚機構の簡素化をスローガンに掲げていたからだ」と信じていると述べたとニューヨーク・タイムズは伸べている。

☆         ☆          ☆

ニューヨーク・タイムズは「米国であれどこであれ、ニュース・メディアは政府に近過ぎるという同様の批判を受けているが、日本はより問題が大きい」と述べている。特に日本は「記者クラブ」という仕組みで、大手メディアに政府報道鵜呑みの記事を書かせていることが批判の対象になっている。

我々は時々海外のメディアにも眼を通して、日本丸の位置確認をしておく必要があるということだろう。

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多くの英国人、定年延長を望む

2009年05月28日 | 社会・経済

ファイナンシャル・タイムズとハリス社が今年5月の初めに1126名の英国の成人に調査を行ったところ、6割の人がより多くの年金を受け取るために、現在の定年年齢(=公的年金支給開始年齢)65歳を超えて働きたいと考えていることが分かった。

この記事についていたグラフを見ると同じ質問に対して米国でも6割強の人が長く働くことを希望している。因みにイタリア人は6割が長く働くことを希望、フランス・スペインは4割強が長く働くことを希望。ドイツでは3割程度の人が定年延長に賛成だ。

定年延長に対する賛成比率の違いは、公的年金の厚みでは説明できないようだ。「退職後の所得の源泉」について上記各国の調査が出ているが、公的年金への依存度は英国・米国が32%と一番低く、スペインが74%と一番高い。イタリア(52%)、フランス(56%)、ドイツ(59%)はその中間だ。なお私的年金を加えた年金に対する依存度ではスペインが86%と一番高く、ドイツ80%、フランス76%、イタリア75%、英国71%、米国64%となっている。私的年金制度まで含めると、年金依存度の低い国ほど定年延長を支持する人が多い傾向があるといえそうだ。

定年延長に対する賛否は無論金銭的なインセンティブだけの問題ではない。老後をいかに過ごすか?という生き方の問題にかかわっているからだ。

だが経済的な側面から見ると、ファイナンシャル・タイムズは「国民が定年延長を希望して~つまり年金支給開始時期を遅らせる~いることは、国家財政上好ましいことだと述べる。なぜなら英国は財政悪化から格付低下の懸念が高まっているが、年金支給開始時期を遅らせることで、財政の健全性を回復できるからだ。

更にファイナンシャル・タイムズは年金経済の専門家アルトマン女史の「年金だけで年金危機を解決することはできない。我々は退職を再考するべきだ」という言葉を紹介する。英国では若年層が減少していて、高齢者の雇用を考えないと国としての生産性を維持できないからだ。

アルトマン女史は高齢者雇用についてパートタイムで仕事をすることがより容易になるように改善することが急務だと述べ、最良のモデルは「育児のために一時的に離職した女性が職場に復帰できる制度」だと述べている。

ところで昨日麻生首相と民主党の鳩山代表による初めての党首討論が行われた。新聞によると政治献金問題に多くの時間が費やされ社会保障問題は素通りだったということだ。

私は今日本で必要なことは、年金や医療など社会社会保障と経済活性化の問題を統合的に考えて「雇用のあり方」を抜本的に見直していくことだと考えている。英国より早いピッチで高齢化が進む日本で生産性を維持していくには、雇用の入り口つまり「新卒者の採用」と雇用の出口つまり「定年延長」と女性労働力の活用について大きな見直しが必要だと私は考えている。

この問題について正面から取り組むような政治家が出てくるならば、私は政党にかかわらず意見を傾聴したいと考えているがいかがなものだろうか?

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北朝鮮を抑えるにはドル口座を締め上げるに如かず

2009年05月26日 | 国際・政治

昨日(5月25日)の北朝鮮による核実験の目的については、二つの解釈がなされている。一つは北朝鮮が従来と同様米国を脅かして、二国間協議に持ち込み食糧支援などを引き出そうとするとしているというもの。もう一つは北朝鮮の内政にかかわるものだ。内政面では二つのねらい目があると専門家は見ている。一つは脳卒中を患った金正日の後継者へ政権移譲をスムーズに行う狙いだ。今専門家の間で最も有力な後継者とみなされているのが、金正日の三男・金正雲だ。少し前に金正日の義弟・張成澤が国防委員会のメンバーに加わったことは、息子を後継者にする布石と解釈されている。この後継者選択をスムーズに行うには軍の支持が不可欠とされ、その一環として北朝鮮の核能力を示すため今回の実験が行われたとする解釈がある。

次に核実験は食料や電力不足に苦しむ北朝鮮国民に強力な軍事力を示し、人心掌握を図ろうとする狙いがあるという解釈ももっともらしく響く。

私はこのブログを米国外交評議会(米国の外交問題に影響力の強い研究団体)のSheila Smith女史のインタビューレポートとニューヨーク・タイムズの記事などをベースに書いている。これらの情報は韓国の専門家等の見解を集積しているが、これを見ると今回の核実験は内政目的が中心という意見が多い。

核実験を米国から譲歩を引き出すことが目的だとすると、目下のところ完全に失敗に終わっているといわざるを得ない。4月のミサイル発射実験の後、中国とロシアは国連による正式非難には同意しなかったが、今回は両国とも北朝鮮の核実験は2006年の安全保障理事会決議に違反しているという決議を支持する見込みだ。

北朝鮮の核実験が安全保障上脅威なのは、彼らがダイレクトに日本など近隣諸国に攻撃をかけるということよりも、核爆弾や核技術がテロ国家に流出するからだ。ではこれを防止する方法があるだろうか?一つは国連決議に基づいて米国などが、北朝鮮に出入りする船の積荷を検査することである。だがこれは北朝鮮の敵愾心を燃え立たせる危険な賭けだ。

もう一つの手段は、外交評議会のレポートの中でSmith女史が示唆するように、北朝鮮が中国国内(およびロシア国内)に持っているドル預金口座を凍結することだ。いわば資金面で締め上げ北朝鮮の核開発をストップさせるという兵糧攻めだ。中国から北朝鮮への電力輸出を止めるという制裁措置も考えうる。だがこれらは中国のオプションで米国や日本・韓国の選択肢ではない。

中国がこれらのオプションを行使して北朝鮮の核開発をストップさせるかどうかは、中国が金正日政権の崩壊リスクが核開発リスクより小さいとみるかどうかにかかっているというのが私の見方である。

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EUを超えそうな米国の失業率

2009年05月25日 | 社会・経済

月の後半になると気が重くなる時がある。何故かというと毎月寄稿している小雑誌に書くテーマが決まらないことがあるからだ。経済・金融面で不確実な状況が続く中、雑誌が発行される時期でも風化しないテーマを書くことは時として気が重い話である。また不景気の中取り上げるテーマが暗いことも気分を重くする。

今月は余り得意分野ではないが、失業率の問題を取り上げることにした。具体的には失業率とセーフティ・ネットの問題および失業率と長期的な競争力の問題について若干の考察をすることにした。

話の一つのスタート点は米国とEUの失業率がほぼ拮抗してきたことにある。90年代の中頃米国の失業率が5%だった時EUの失業率は10%だった。2000年代に入って両地域の失業率の差は縮小して2-3%程度になっていた。ところが08年以降米国の失業率が急上昇して両者の差は縮まり、今年の3月には両者は8.5%で並んでしまった。

ニューヨーク・タイムズは「長年米国の失業率がEU諸国よりも低い理由は米国の雇用システムは柔軟で、EU諸国よりも従業員の採用・解雇面で容易だからより多くの雇用を創出してきたという主張がある。しかしもはやこの議論は成り立たないだろう」と述べている。

4月の米国の失業率は8.9%になった。EU諸国の失業率は集計中だが、米国の失業率がEU諸国を上回る可能性が高い。これはEurostatという調査機関が1993年にデータ収集を開始して以来始めてのことだ(失業統計は国によって定義が異なるため、比較データを作りには調査機関による調整が必要)。

米国男性の失業率は昨年12月に既にEUのそれを上回っていた。EUでは男性の失業率が8.4%女性のそれは8.5%とほとんど差がないが、米国(3月の統計)では男性の失業率が9.5%で女性の失業率は7.5%である。

景気後退局面でEUの失業率が米国のように急上昇しない理由はEUは時短手当などのセーフティネットが充実しているからだ。もっとも景気悪化が持続するとEU諸国の政府補助にも限界が出てくると思われる。もう一つの理由は多くのEU諸国は米国のような好景気を経験しなかったので、その反動としての雇用調整が少ないとニューヨーク・タイムズは説明する。

過去の景気下降局面で米国の失業率が大幅に上昇しなかった理由の一つは、人々が景気の悪い地域から景気の良い地域へ新しい仕事を求めて移動することで、産業構造の変化に対応することができた。しかし今回の景気下降局面では住宅価格の下落が激しいので、住宅ローンやホームエクイティローンを抱える人々は自宅の処分ができず、労働力の流動性が落ちていることが指摘されている。

ということは米国の柔軟な雇用システムを下支えしたのは、右肩上がりが持続した住宅市場ということができるだろう。

ところで日本の失業率は4.8%で、米国やEU諸国の平均の約半分だ。日本の低失業率は時短手当など政府補助金に支えられるところが大きくもし補助金がないと失業率は2%上昇するといわれている。

政府補助金が競争力の低下した非効率な業種の存続を可能にするので、国民経済上好ましくないという議論があるが、これについては後日検討しよう。

EU諸国で日本より失業率が低いのはオランダだ。オランダの労働慣行についてちょっと調べたところ、新卒者がすぐに正規雇用されることはまずないよいうことだ。新卒者は大体期間1年の臨時雇用からスタートする。これがオランダの低失業率につながっているかどうかは不明である。しかし「日本で正規雇用者の解雇が難しいことから派遣社員が増え、その結果勤労世帯の所得低下が起きている」とすると、雇用慣行のフレキシビリティを高めるような議論がなされても良いと思われる。

だが米国の失業率が急上昇している中、このような議論が多くの支援者を得ることは難しいだろう。取りとめのない話になったが、2,3日後には自分の考えがもう少し煮詰まることを期待している。

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