金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

きのうの発句は今日の辞世

2011年03月31日 | うんちく・小ネタ

昨夜(3月30日)は久しぶりにシコタマ飲んだ。会社の山の会の飲み会があったのだ。震災以来外で飲む機会が減った人が多く、その反動で酒の量が増えたようだ。

親しい仲間と酒を汲み、また山に登ることができる喜びをかみしめる。

今回の震災は直接被害を受けなかった我々にも、幾つかのことを教えてくる。一つは自然の力の底知れぬ強さだ。古来日本人は自然と闘うという考え方ではなく、自然との調和を求めるという考え方を取ってきた。しかし科学技術や土木技術の発展とともに、自然を征服しようという西欧的考え方が強くなってきた。だが津波の猛威を見るとやはり世界に冠たる日本の土木技術を持ってしても、津波の猛威には勝てなかった・・・・ということが分かる。今後もっと高い防波堤を作るかあるいは自然との調和を求めるかは考えどころだろう。

さてもう一つ改めて思い起こすことは、「人生は一寸先も分からない」という当たり前の原理だ。科学技術や医療の進歩で人の寿命は伸び、色々なことが予見できると我々は考え勝ちだ。だがそれは確率の問題に過ぎず、やはり「一寸先は分からない」というのが正しいのだろう。

だが先が分からないことは悪いことではない。「先が分からない」ということを自覚することから、今を精一杯生きるという緊張感が生まれる。

晩年の芭蕉に弟子が辞世の句を尋ねたときの芭蕉の答が「きのうの発句は今日の辞世、今日の発句は明日の辞世、我が生涯言い捨てし句々、一句として辞世ならざるものなし」であった。つまり一句一句に全力を注ぎ込むという気概である(もっとも芭蕉には「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」という辞世の句があるが・・・)

無論我々凡人はそのような集中力・緊張感の連続には耐えることができない。緩んで酒を飲み、ワイワイ騒ぐのである。

だけど時に「一寸先は分からない」ということを思い出し、今を精一杯生きるということを自問してみたいと考えている。

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東電、いずれにせよ「事実上」の国有化は避けられず

2011年03月30日 | 金融

昨日(3月29日)株式市場を揺さぶったのは、玄葉国家戦略担当相の「東電の国有化も選択肢の一つ」という発言だった。福島3区選出の玄葉大臣の発言はまもなく読売新聞が報道した。一方枝野官房長官は記者会見で「政府が今のところ国有化を検討していることはない」と玄葉発言を否定したが、このニュースは海外メディアも大きく取り上げている。

東電の株価は46年ぶりの安値を付けたが、金融機関や機関投資家にとってもう一つの頭痛の種は東電の社債の金利急上昇(価格は急落)だろう。東電が発行している社債残高は5.02兆円、ブルンバーグによるとニュージーランドの年間生産額の半分に達するという。

震災前は日本国債の利回りに0.1%程度の上乗せスプレッドで取引されていた東電社債は、25日時点では上乗せスプレッドが0.67%程度と6倍以上に拡大している。バンクオブメリルリンチのデータによると、7つの東電の社債は最低でも価格が5.64%下落した(債券価格の変動は非常に大雑把にいうと、「利回りの変化×残存期間」である)。ブルンバーグによると、東電社債の今月のパフォーマンスは世界の投資適格債券の中で最悪のパフォーマンスだ。

価格の急落は投資家にとって一つの買い場とも見えるが、ブルンバーグによると三菱UFJアセットマネジメントのチーフファンドマネージャーは「我々は東電社債には手を出さない」と述べている。原発事故に関する東電の負担額とそれに伴う東電の命運が今の段階では予測を超えているからだ。

もし東電が国有化されるとすると、東電は恐らく新しい株式を発行し、国が引き受け発行株数が増えるので、稀釈化が起きる(一株当りの配当が下がり、株価も下がる)。一方国有化されると社債の償還は政府が引き受けることになるので、社債の投資家は保護されるのだが、今の段階でここまで予測することは不可能だろう。

ニューヨーク・タイムズは「国有化は、東電エリア以外の納税者も東電の救済資金を負担することになるので彼等の反対が起こる可能性が高い」と分析している。

だが、今のところ解決の目処が見えない福島第一原発の状況を考えると東電が国への依存度を高めざるを得ないということは避けがたい事実だ。

東電は原発事故に対して法的な賠償責任を負うが、この責任には「例外的な自然災害を除く」という例外規定がある。感情論は別として東電がこの例外規定を根拠に賠償責任の大幅な回避を求めることは十分考えられるところだ。そうしないと経営陣は株主から責任を問われる可能性があるからだ。

福島原発事故の内、民間・政府の保険でカバーされると思われる金額は1,200億円だ。現時点で原発被害の金額を想定することは不可能だろうが、この金額とは桁の違う金額であることは間違いないだろう。

タイムズによると、社団法人会社役員育成機構のトップBenes氏などは「菅首相は恐らく国有化を避けて、東電をarm's length(つかず離れず)の距離に置くことを好むだろう」と解説する。理由は東電を政府に対する国民の批判の「避雷針」にしておきたいからだ。

野村證券の荻野アナリストは「国がほぼ全面的に東電に対して、補償に必要な資金を供給するという『事実上の国有化』がベストなのではないか?」とレポートの中で示唆している。

☆   ☆   ☆

どこまでが原発オペレーターとしての東電の責任で、どこからが監督者としての国の責任で、どこからが「予見不可能な自然災害」と認定することは可能なのだろうか?だがいずれにせよ、その被害を地元住民のみが負担する理由はない。少なくとも東電から配電を受けてきた受益者は何らかの形で負担するのは当然だろう。

だが負担が株式や債券の保有者まで広がっていくと、話は非常に複雑になってくる。東電は金融機関を除くと最大の社債発行者であり、債券のデフォルトは金融市場に大きなインパクトを与える。一つのソリューションは「事実上の国有化」なのかもしれないが、個々の債権債務がどうなるか?ということになると極めて複雑な問題だろう。

「綸言汗の如し」(天子は一度言った言葉を取り消すことができないという意味)という言葉がある。日本の政治家の軽さを考えると、今の政治家にこの格言を求めることはナンセンスだが、複眼的思考をもって慎重な判断と発言が求められる難局であることは間違いない。

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地震はヘッジファンドも襲う

2011年03月29日 | 投資

FTによると幾つかの世界最大級のヘッジファンドが、東日本大震災の後の振幅の激しい市場で大きな損失を蒙っている。コネティカットのGraham Capitalの旗艦ファンド(資産40億ドル)は3月の最初の2週間で8%下落した。

被害の大きいのはトレンドフォロー戦略を取るファンドだ。トレンドフォローとは簡単にいうと順張り型で、コンピュータモデルを駆使して世界中の多くの資産クラスの先物ポートフォリオを組む。トレンドフォロー戦略は、災害等想定外の事象で市場のボラティリティが高まる時に損失を蒙る可能性が高いが今回もそうだった。

もっとも今回の震災の影響は昨年のギリシア債務危機のようには長続きせず、今のところ収まっているので、ファンドマネージャーは楽観的だ。

日本株に特化したファンドも大きく下落した。ロンドンのMarathon Japan Vertexファンドは3月中頃に13%下落した。しかし大部分の日本株ファンドマネージャーは、これは市場の崩壊というよりは、買いチャンスと見ている。

私事ではこのドタバタした市場ではほとんど動かなかった。毎月提起購入しているファンドを粛々と買ったのみである。そのファンドはセゾン投信のバンガード・グローバルバランスファンド。このファンドは欧米先進国の債券と株に分散投資するファンドで、地震直後に円高が急進した時は、含み損が拡大したが今はほぼトントンの水準まで戻っている。

余り大きなリターンが期待できるファンドではないが、損失の可能性もそれ程高くない。不確実な世界では分散投資のみがショックを吸収する方法なのだろう。

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会社のパソコンの一部を自宅で見る

2011年03月28日 | デジタル・インターネット

震災やその後の鉄道の不安定な運行あるいは今後想定される勤務時間帯の変更などを考えると、会社のパソコンに入っているあるいは届く情報をスマートフォンや自宅のパソコンで見ることができたら便利だと感じている人は多いだろう。

そこで私が実践している幾つかの方法をご紹介したい。ただしそれぞれの会社には情報持ち出しに関するルールがあるはずだ。また情報持ち出しをシステム的に制御している会社も多いはずだ。従ってあくまでも、これはご参考程度の話である。くれぐれも会社のルールは尊重して欲しい。

【Outlookからメールを転送する】

余震や大規模停電が予想される時、会社は従業員に翌日の出社方針をメールで伝達する。オフィスにいる社員には連絡は届くが、出張していたり、たまたま休んでいる社員には届かない。その時便利なのがOutlookのメール転送(またはリダイレクト)機能だ(当然Outlookがメールソフトの場合)。

設定は簡単。まずメールを転送したいパソコンやスマートフォンのアドレスを「連絡先」に登録しておく。Gmailを転送先にすると、どこでも見ることができるので便利だろう。次に「ツール」の中から「仕訳ルールと通知」を選択し、新しい仕訳ルールを作成する。そして転送先を登録する。ただし気をつけることは携帯電話を転送先とする場合、通信料に上限設定がないと思わぬ料金がかかる可能性がある。

なお「転送設定」は簡単な操作でOffにできるから、転送の必要を感じる時だけOnにすると良い。

【予定表の同期を取る】

私もそうだが、会社でOutlookを使っている人は予定をOutlookで管理している人が多いだろう。だから会社に行かないと正確なスケジュールが分からないということがある。そんな時威力を発揮するのが、会社のOutlookと自宅のパソコンやスマートフォンの予定表を連動させる仕組みだ。こちらは「メール転送」よりやや手間がかかる。

仕組みの基本は「Outlookとグーグルのカレンダーは設定を行うと自動的に同期を取る仕組みがある」ということだ。そこでまずグーグルにメールアカウント(無料)を開き、自分のカレンダーを作る。

具体的な設定方法については説明を省略するが「Outlook グーグルカレンダー 同期」などで検索すると、マイクロソフトの関連記事等が出てくる。

【文章やスプレッドシートを共有する】

会社のPCの中のデータと自宅のPCの同期を取る究極の方法が、グーグル・ドキュメントの活用だ。グーグル・ドキュメントはクラウド・コンピューティングで、グーグルのサーバ内に開いた自分のアカウント内で、ワープロ・ソフトやスプレッド・シート(エクセルのような集計ソフト)を使い、作成したドキュメントをサーバ内に保管する仕組みだ。グーグル・ドキュメントにアクセスできる環境であれば、何時でもどこでもサーバ内に補完したドキュメントを呼び出すことができる。しかも一定量までは無料。

またグーグル・ドキュメントのワープロソフトやスプレッド・シートは、マイクロソフトのワードやエクセルと互換性があるから、作成した資料を簡単にコピーすることができる。

便利な機能だけれど、会社や組織の重要情報が簡単に外に持ち出される可能性もある。会社によってはこのような利用方法を禁じていたり、システム的に制御している可能性もある。

☆    ☆    ☆

多少落ち着きを見せてきた関東地方の電力事情だが、本格的な回復にはかなり時間がかかりそうだ。今年の夏はサマータイムや勤務時間のシフトが必要だろう。

また在宅勤務も真剣に検討する必要がある。そんな場合「会社のシステムと自宅のPCの連携をどこまで認めるか?」ということは大きな課題になるだろう。

それはチャレンジであるとともにビジネスチャンスかもしれない。

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青菜(チンツァイ)、ルブラン、ノーマルな土曜日

2011年03月28日 | まち歩き

3月26日土曜日快晴、午前10時前に愛車X-trailを近所の日産ディーラーに車検に持っていく。7年目の車検だ。半年程前に買い換えることをちょっと考えたが、余り車に乗らないので買換えは見送りを決めていた。昨今のガソリンの値上がりや震災後のガソリン不足を考えると、車への依存度を低くしたライフスタイルは正解。震災後一度のガソリンを入れていないが不便は感じない。

昼食は久しぶりに麻布に一人住まいをしている次女とワイフの3人で丸の内のブリックスクエアに中華料理を食べに行く。ブリックスクエアの中の三菱一号館美術館に一度も行ったことがないので、お目当ては美術館だ。

食事はブリックスクエアの中の青菜(チンツァイ)で、ランチメニューを食べた。2,200円のメニューだが、大きな肉まんでお腹が一杯になった。震災の話をしながら家族の絆を確かめ合う。

レストラン(青菜)は写真のとおりガラガラだ。初めて来たお店なので、震災の影響で空いているのかどうかは分からないが・・・・・

食事の後、一号館美術館に行く。美術館では、ヴィジェ・ルブラン展をやっていた。http://mimt.jp/vigee/

マリー・アントワネットの肖像を描いた18世紀で一番有名な女流画家だ。ルブラン自体にそれ程関心が高くないので、1,500円の入場料は少し高いと思ったが、復元された三菱の建物見学代も入っていると割り切り入場。美術館も比較的空いていた。

これが震災の影響なのか、ルブランの人気がそれ程高くないせいなのかは不明。

☆   ☆   ☆

「震災後何を呑気な!」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、基本的に私はできるだけノーマルな生活を維持したいと考えている。震災に対してできることは多少の寄付と節電への協力位である。後は仕事の上で必要があれば、粛々と被災された方へ対応することと、復興へ向けた融資を考えることである。

日頃の生活はできるだけ、通常ベースを維持したい。妙に縮こまることはかえって、世の中の正常化にマイナスになるのではないか、と私は考えている。

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