12月30日(月曜日)快晴。朝7時に赤谷温泉 小鹿荘を出発。旅館の女将さんが「車のフロントガラスが凍っていますから、お湯を使ってください」とバケツ一杯のお湯を用意してくれた。お湯につけた雑巾でフロントガラスを拭くが、反対側に回っている間に少し前に拭いたところに薄い氷が張っていく。かなりの寒さだ。小鹿荘から登山口の白井差までは約20km。途中の石灰岩の採石場を過ぎると道は狭くなる。道は所々凍っていて気が抜けない。ただしワーゲンゴルフにスタドレッスタイヤという組み合わせは強力で、大きな問題もなく8時少し前に終点山中氏宅前に到着。
両神山登山のメインルートは日向大谷から頂上を往復するものだが、距離が長い。これに対して白井差から頂上を往復するルートは急だが距離は短い。私は10年ほど前に白井差から両神山を登ったことがあるが、この時は「一位ガタ」から「のぞき岩」の東側に登った。数年前に白井差から両神山を直登するルートを開拓した山中氏によると「新しいルートはそれとは全く違い、のぞき岩を目の前に見ながら、頂上の南側の肩にでる」というものだった。
このルートの大部分は山中氏の私有地を通るため、山中氏は登山道整備費として入山料(一人千円)を取っている。また入山は電話による予約制になっている。山中氏から登山道(白井差新道)の地図を貸して貰い説明を受けた後出発。午前8時5分。出発点の標高855m(GPS)。このルートは比較的均一な傾斜で難所はないというが、ここしばらく登山者は入っていないのでラッセルだろうという山中氏の話だった。
約25分ほど登ると「昇竜の滝」と名の付いた滝がありその上に小さな祠があった。ここから上は雪の斜面が続くので、アイゼンを着装した。登るに従いトレースは消え足跡のない雪面が私たちの前に広がっていく。気持ちが良い。ラッセルはおおむね足首程度だが時々ふくらはぎまで雪に沈むこともあった。
12時5分稜線到着。
作業道の標識が立っていた。GPSを見ると標高は1,675mだったが実際はもう少し高く、ここから両神山頂上(1,723m)までは一足投の距離だ。日向大谷からのメインルートを歩く登山者の声が聞こえる。ここにザックを置いて空身で頂上を往復した。
頂上直下には2,3mの岩場があるが問題になるものではない。12時22分山頂到着。
山頂には日向大谷から登ってきた3,4組のパーティがいて写真を撮り合った。
山頂からは四方の絶景を楽しむことができた(北側は少し木が邪魔をした)。とりわけ印象深いのは写真の浅間山(私は一瞬御嶽と勘違いした)でかなり近くに見えた。富士山、雲取山、八ヶ岳連峰、蓼科山などが一望の内だ。
この日は風がなく、思ったより暖かい。素手でカメラ操作をしても苦にならない。
12時35分頃デポ地点に戻り軽い昼食。早く下山して温泉に入りたいので、tea seremony(ガスコンロでお湯を沸かしインスタントコーヒーを飲むだけだが)は省略する。12時50分下山開始。
おおむね登ってきたトレースを忠実に戻るが時々ショートカットをまじえて時間を稼ぐ。ただショートカットは大胆にやりすぎるとルートを見失う可能性もあるので、注意が必要だ。
40分ほど降って一息を入れた。冬の日が傾くのは早く、午後1時半なのに南東斜面のこの付近では木々が長い影を落としていた。
私は雪の上に影を落とす林の風景が好きだ。ウサギかキツネのような野生動物でも出てくると楽しいのだが、さすがにそこまでの幸運には恵まれていなかった。
午後2時30分駐車場に戻る。雪の両神山登山は登り約4時間、下り約1時間40分を要した。気の合った3人交替交替のラッセルが良い思い出となる楽しい登山だった。
帰路国民宿舎・両神荘に立ち寄り温泉に入って帰った(入湯料800円)。
ここは本格的な温泉なので、湯に関しては昨日止まった小鹿荘より上だ。関越道経由で自宅に戻ったのは午後6時15分ごろだった。
こうして今年最後の山のぼりは楽しくそして無事に終了した。
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名古屋のSさんは本当に山好きになった。年末登山は昨年の瑞牆山に続いて二回目だが、来年もまた誘われ(あるいは誘い)そうである。Fさんは私たちより20歳近く若いがかなり山好きになってきたようだ。
気の合う山仲間と素晴らしい登山経験をシェアすることは人生の大きな楽しみの一つだ。年の瀬にその楽しみを持つことができた幸運に感謝したい。