私のオフィスの向かい側にみずほ銀行がある。今日お店の前を通ると法被をきた若い行員さんが声を嗄らしてサマージャンボのセールスをしていた。暑い中ご苦労様です。
ところで銀行員がもし「預金をすると元本がマイナス30%になります」という預金を勧誘したどうなるだろうか?いや、どうなるどころかそのような商品がなりたつ訳がない。ところが「宝くじ」という仕組みは全体から見るとこのような商品である。勿論1億円当たる人もいるし、百万円当たる人もいる。だが大多数の人は10枚連番で買った場合300円当たるだけである。くじ全体の期待値としては7割程度(正確ではないが)しか配当されないので、確率論的にいうと「宝くじは預金をすると元本がマイナス30%になる」商品なのだ。
しかし宝くじには「夢」がある。3千円で宝くじを買ってしばらくの間当たったらどう使おうか?と夢を見ることができる。そして万万が一本当に3億円当たると好きなことをして暮らすことができる。一方それに較べると失うものは高々3千円だ。3千円失っても日々の生活に困る訳ではない・・・・と人々が考えるから宝くじは成り立つのである。宝くじは「夢」をリターンに加えないと成り立たない商品なのだ。
ところでみずほ銀行以外の金融機関が取り扱っている商品の中にも「夢」をリターンに加えないと成り立たない商品がある。それは何かというと投資信託特にアクティブ型の投資信託だ。
アクティブ運用というのは、個別銘柄を選択投資することで市場平均(=インデックス。TOPIXや日経平均)を上回るリターンを上げることを目指す運用方法だ。アクティブ運用はインデックスに勝てるか?というのは中々深遠なテーマなのだが、実際の運用成果を見ると、インデックス運用を上回るアクティブ運用は少ない。従ってアクティブ投信を買う多くの人は高い報酬を支払いながら、市場平均並みのリターンを上げることができていないということになる。
仮に優れたファンドマネージャーは市場平均を上回ることができるとしても、誰が優れたファンドマネージャーであるかを見つけることが難しい。「過去の運用成績が良かった」ファンドが将来も良い成績を上げるという保証はない。何故なら「過去の運用」が「運用スキル」の成果なのか「タマタマの幸運の結果」なのか判定することが難しいからだ。
だが多くの人は過去の運用成績(しかも短期間の!)でアクティブ投信を選ぶ。市場平均を上回る運用を「夢」見て。
やや捻くれた見方をすると「資産運用ビジネスというのは、タマタマの幸運で得た運用成績をマーケッティングするビジネス」ということができる。タマタマの成果を幸運の結果でなく、スキルの成果に見せる・・・というビジネスなのである。アクティブ投信のセールスはそういう意味で「夢」を売る金融機関のビジネスである。もっとも宝くじでは「金銭面での期待値」はマイナスに決まっているが、投信では当然のことながら「金銭面のプラス」が期待できる。ただアクティブ投信に払う報酬が「夢」に見合っているかどうかという問題はあるが。