少し前ドイツが国債と金融機関の株の現物の裏付けのない空売りを禁止した。この時ユーロが激しく売られたが、これは国債や金融機関のリスクをヘッジしたいと考えた投資家が代替品としてのユーロを空売りしたと考えることができるだろう。
空売りすることができなければ、同じような価格特性を持つ商品を空売りするというのがスマートな投資家の行動パターンだろう。
中国の国内株の空売りは非合法であり、中国株の先物やオプション市場は存在しないかほとんど取引されていない。
エコノミスト誌はこのような状況下、中国リスクを回避したいと考える投資家はどのよに振舞うかをゴールドマンとモルガンスタンレーの丸秘レポートの中から紹介している。その記事の中に上海A株指数と豪ドルの対米ドル価格を一つのグラフにしたものが出ていて、そのグラフはA株と豪ドルの強い相関関係を示している。
つまり中国株の下落リスクをヘッジしたいのであれば、豪ドルを空売りすることである程度のヘッジ効果を上げることが可能(少なくとも過去のトレンドから見れば)ということになる。
またモルガンのレポートによると中国の経済成長と高い相関関係にあるのが、銅、大豆、石油だ。
ゴールドザックスは少し違った戦術を薦めている。例えば香港の大手電話会社ハチソン・ワンポアのCDSを買うという手法だ。
エコノミスト誌は「このような中国株ヘッジ手法が人気が高いかどうか判断するデータは得ることはできないが、寓話的な出来事は多くの人が中国経済に弱気なことを示唆している」と述べている。そして一例として示したのが、先週中国政府が不動産税を強化するといううわさが市場に流れた時、(香港に上場する?)開発業者の株価が急騰した例である。エコノミスト誌はこれはショートカバーの殺到による価格急騰だと分析している。
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この記事は個人投資家にも幾つかのことを示唆してくれる。
一つは一見別のリスクに見える金融商品でも相関関係(因果関係ではない)を分析すると、ヘッジに使うことができるということだ。またこのような二つの商品を持っていてもそれはリスク分散にはならないということだ。
日本株についても中国株価と相関性の高い銘柄を選び出すと中国株のダミーとしてショートポジションを作ることが可能ということだ。無論多くの市場参加者が同じ行動をとると機能不全に陥ることが多いだろうが。