金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ブロックチェーン技術、日本の社会論に繋がったりして

2018年02月28日 | うんちく・小ネタ

ひょんなことから顧問先でブロックチェーンについて初歩的な解説を行うことになった。

「ブロックチェーンなんて知らないから勘弁して」と言っていたのだが、みんな素人ですから分かる範囲で分かり易く、と押し切られてしまった。

そこでやむなくブロックチェーンの利用方法を「複数企業が特定分野で共同作業を行うコンソーシアム型に限定して話をする」ことにした。

一般にブロックチェーン=ビットコイン(数ある仮想通貨の代表格)というイメージがあるが、現在ではこれは必ずしも正しい理解ではない。現在では「中央に管理者を置かずに、各参加者が同じ台帳(分散台帳という)を持ってその正確性を確認し合いながら、業務プロセスを進める仕組み」をブロックチェーンと呼ぶという位に理解しておいた方が良いだろう。そして誰でも参加できる代表格がビットコインのような仮想通貨(暗号通貨)で、参加者が限定された仕組みが貿易取引へのブロックチェーンの活用などと理解しておいて大きな間違いはないだろう。

ところで少し勉強し始めて気が付いたことは「ブロックチェーンって伝統的な日本社会・商慣行に馴染み難いのではないか?」ということだ。

日本の社会は豊臣政権から徳川幕府の発足時にかけて検地や庄屋の制度などを経て、土地という資産に係るデータ(所在・地積・生産高など)を行政(お上)が管理する仕組みが出来上がっていた。ところがアメリカのような開拓型の社会では、当初は行政は存在しないから開拓者同志でお互いの財産を確認し合うことで「個々人の財産権(所有権)」が確立していったのではないか?などと考えている。つまり社会や商慣行の深い部分で「分散台帳」という考えがあるのではないか?

日本の製造業者・問屋・小売業などの強固な繋がりもブロックチェーンより強い連鎖(少なくとも過去は)なので、敢えてブロックチェーンなどを必要としない産業構造なのかもしれない。

もっともこんな話はどこでも目にしたことはない。そもそもビットコインを創設したのはナカモトサトシという人(日本人名だが正体不明)なので、分散台帳という技術の源泉が開拓型社会であるという私見もまったくの仮説いや盲説かもしれない。

ただある時期まで日本の「中央に管理者を置いた台帳管理システム」は堅牢で間違いの少ないもの、という神話があったことは間違いない。

例えば日本の銀行の事務処理はアメリカのそれに較べると非常に正確だ。アメリカでは時々間違った口座引き落としなどが起きる。間違っているというとすぐ修正してくれるのだが。つまりアメリカのシステムは「中央の管理者に対する一定の不信=自分で検証することの必要」を内包しているのではないか?と私は直観的に感じている。

その堅牢で間違いの少ないと思われてきた日本の中央管理システムにもほころびは目立ち始めている。少し古いところでは公的年金の記録問題だ。そして今大きな社会問題になりつつあるのは、土地の所有権に関する登記の問題だ。中央管理システムの問題といえば「取りやすいところから税金を取る」という日本の所得税の仕組みも歪みの一つと言えるだろう。

デジタルという枠組みを取り外して「分散台帳技術」というブロックチェーンの根幹をなす概念を考えてみると、それは参加者(例えば同じ村の住人)が互いの土地に関する所有権を確認し合う(登記していようがいまいと)ことで成り立つ仕組みであることに気づく。ところが高齢化や都市部への人口流出で村人などの参加者がいなくなると「分散台帳」は成り立たなくなる。一方登記という「中央に管理者をおいた台帳管理システム」も台帳への記帳義務がないから、機能不全に陥っている。

とりとめのない話になったが、頭が痛くなる技術関係の本から目をあげて、世間の出来事を見てみると何かが見えるような気がするから、多分野のことを勉強するのは面白いとふと感じた次第だ。

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米国株、パウエル議長証言後大幅下落

2018年02月28日 | 投資

昨日(2月27日)米国連邦準備理事会のパウエル議長は、初めて下院の金融サービス委員会で議会証言を行った。

パウエル議長は、経済見通しやインフレ目標達成に楽観的で、引き続き政策金利引き上げ基調を維持することや更には年内に3回以上政策金利を引き上げる選択肢もあり得ると示唆した。

パウエル議長の発言は予想よりもタカ派的と判断され、金利上昇を懸念する投資家の株・債券の売りを招いた。

ダウは299.24ポイント(1.16%)下落した。

もっともこれまで4日間米国株は上昇を続けてきたので、下げがあっても不思議ではない状況だった。

ところで今月初めの株価の大幅下落を経験する前であれば、300ポイントの下落というとかなり大きなニュースになったような気がするが、

WSJのタイトルもU.S. stocks sell off after Powell's remarks(パウエル議長のコメントの後米国株売られる)と淡々としたもの。

スキーでもそうだが、凹凸の激しいコブ斜面を滑り切った後は少々の不整地でも気にならないものである。一種の慣れだ。

2月は投資家にとって体を振幅の大きな相場に慣らす訓練期間だったのだろうか?

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「登記が阻む日本の成長」解決策は?

2018年02月25日 | ライフプランニングファイル

所有者不明土地問題に関する記事を新聞で目にすることが多くなった。

今日(2月25日)の日経新聞朝刊には「登記が阻む日本の成長」という記事が出ていた。

記事は「『迷子の土地』がここまで増えた原因は今の登記制度にある」と指摘し、自民党幹部の「長男による家督相続を戦後に均等相続に見直した時登記を義務化し、使い勝手をよくするべきだった」というコメントを紹介していた。

従って記事の主張は「登記の義務化」にあると思えるのだが、ではどうすれば「登記を義務化できるのか?」という点まで踏み込んでいない(記事のスペースの問題もある)。

登記の義務化を推進する一番良い方法は「登記に公信力を持たせる」ことである。現在に日本の登記制度には「推定力はあるが公信力はなく、第三者に対する対抗要件を有するに過ぎない」と規定されている。

なお不動産の譲渡のような意思表示による物権(不動産の所有権の移転など)の承継は登記が第三者対抗要件として必要だが、相続については一般的に「登記しなくても第三者に対抗できる」と解されている。

それ故相続不動産は登記されないことがあり、相続人が死亡した後、所有権がその相続人の子ども・孫に拡散し、所有者不明土地問題の大きな原因になっていると言われている。

この問題を根本的に解決するには私は日本の民法を大改正してドイツのように「登記に公信力を持たせる」ことと「一定期間を経過した所有者不明土地については国または自治体が収容する」ということが必要なのではないか?と考え始めている。

ただし現在の所有者不明土地の多くは「価値のない不動産」で固定資産税の支払い負担だけが目立つものが多いので、これ幸いと所有権を放棄する人が増えるかもしれないという懸念は残る。

土地の価格は上がるという土地神話の時代であれば、「登記の義務化」は進めやすかったかもしれないが、多くの不動産が負動産になってしまった現在ハードルは上がっている。

しかしこの先日本の人口減少は続くから、負動産の状況は改善しないだろう。今やるしかない問題の一つであることは間違いない。

 

 

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洋服ブラシの購入~実店舗はネットショップに勝てないと実感

2018年02月25日 | うんちく・小ネタ

昨日天然毛の洋服ブラシを買いたくなって近くのイオンモールに出かけた(10%offの案内が来ていたので)。

ところが売り場には化学繊維のエチケットブラシはあるが、天然毛のブラシは置いていない。

家内に「東急ハンズにでも行かないとないのかなぁ」というと、家内は「アマゾンで調べれば?」と答えた。

それもそうだ、と思い家に帰ってアマゾンサイトをチェックすると千円程度のものから上は数万円するものまで実に沢山の商品が並んでいた。

東急ハンズにしろ百貨店にしろこれだけの品揃えをすることは不可能だろう。

手ごろなブラシを注文すると翌日には送料無料(プライム会員のためか?)で配送されるという。

我が家から東急ハンズにしろ百貨店に行くにしろ往復500円以上の交通費がかかる。

他に用事があれば別だが千円程度のブラシを買うために出かけるのはコスト負担が大きい。

実店舗はネットショップに勝てないと実感した次第。

 

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アマゾン株が揺れる相場のアンカー

2018年02月23日 | 投資

今週の米国株は比較的狭いレンジで上下を繰り返してきた。S&P500は概ね2,700~2,750ポイントのレンジで動いていてこの先どちらに向かうのかは見極めが難しいようだ。

このような相場についてBloombergはNo rally is safe in the S&P500 this weekと述べていた。「今週はラリー(急な上げ相場)がないので安全」ということで、急速な株価反発は反動でして大きな株価下落を招き、ボラティリティが高まるので、また株式相場が不安定になるということだろう。

不安定な相場の中で上昇を続け相場を支えているのが、アマゾン、マイクロソフト、画像配信会社ネットフリックスなどハイテク銘柄だ。e-コマース最大手のアマゾンをハイテクに括ってよいかどうかは議論のあるところだろうが、「デジタル技術によるイノベーション企業の代表格」ということでここではハイテクとしておこう。

今年のS&P500の株価を一番押し上げているのはハイテクセクターで一般消費財、金融が続いている。一方足を引っ張ているのが生活必需品、エネルギー、不動産などだ。

このセクター別勝ち負けを見る限り、消費者の財布の紐は緩そうだ。

日頃のネットショッピングでお世話になることの多いアマゾンだが、株式相場のアンカー役としても際立つ存在感を示しつつある。

アマゾンなどハイテク株のウエイトがポートフォリオのパフォーマンスを決める状況がしばらく続くだろう。

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