金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

黒田総裁のハロウィンショック

2014年10月31日 | 金融

今日(10月31日)はハロウィンの日だ。この日日銀政策委員会は大方のエコノミスト達が予想していなかった大規模な金融緩和を決定した。詳しいことは明日の朝刊紙面を飾るだろうから、あらましを述べるとマネタリーベース(資金供給量)を60-70兆円ベースから80兆円に引き上げる、ETFやREITの保有額を3倍に増やす、JPX日経400を新たに購入対象のETFに加えるというところが主なところだろう。午後に発表されたニュースを受けて、日経平均は775円急騰(4.8%)し、円は対ドルで急落。現在111.60円近辺で取引されている。

円安・株高を加速したもう一つの理由は政府がGPIFの株式投資拡大を認めたことだ。

このダブルパンチについてCIBC World Marketのストラテジストが、It is a double whammy for the Yenというコメントを述べたとロイターは報じている。

Whammyには「致命的な一撃」という意味と「悪運をもたらす超自然力」という意味がある。ハロウィンなのでwhammyという言葉を使ったのだろうが、日銀の緩和策拡大・JPIFの外国株を含むリスク運用割合拡大それに今週明らかになった米連銀の債券購入プログラム終了が円安を一気に推し進めたことは間違いない。

この動きを受けて欧州株や米国株先物も1%程度値を上げているようだ。

だがうがった見方をすると日銀の緩和策が「悪運をもたらす超自然力」にならない保証はない。それはどのような経路をたどって出口=正常化に戻るか?という点にある。

リーマンショック後素早く大規模な金融緩和策を実施して不況を乗り越えつつある米国だが、成功原因を金融政策だけの効果と考える舵取りを誤る可能性はある。

それと大規模な金融緩和と円安は、大企業や資産保有層にメリットが大きくそれ以外の層にはマイナスの影響を与える可能性が高い(恐らくこれで消費税再引き上げは決まりだろうし)。所得と資産の格差拡大は不可避だろう。

ハロウィンの日に黒田総裁が打った大胆な一策が悪運を招く可能性がない訳ではない。金融緩和は5対4というギリギリの過半数で決まったそうだ。

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自利の山・利他の山

2014年10月31日 | 

明後日(11月2日)から2週間ほどネパールに出かける予定だ。目的はNPO法人が建設した小学校の譲渡式参加とその後のエベレスト方面へのトレッキングだ。譲渡式で私がスピーチをするとは決まっていないが、現地入りした後、急に振られる可能性が高いので、準備はしておかないといけないと考えている。今年は隣国から2人のノーベル平和賞受賞者がでたので、その話をする必要があるだろうと思い、マララ・ユスフザイの本を読み始めたところである。という具合に譲渡式の準備にも時間は取られるが、ネパール渡航の本当の目的はトレッキングにあることは間違いない。ただし余り山登りで遊んでばかりいると思われるのも何なのでNPO活動ということを表に出しているが。

さて本題に入ると、山登りを仕事としているプロのガイドやポーターの人を除くと大部分の人は「自分の楽しみのために自分が登りたい山に登っている」と私は思っている。これを「自利の山登り」と呼ぶことにしよう。しかし職業登山家以外の人でも「自分の好みや楽しみを後回しにして仲間が喜ぶ登山を行っている」人もいるはずだ。これを「利他の山登り」と呼ぶことにしよう。「利他の山登り」の分りやすい例は、大学山岳部や社会人山岳会で先輩が新人や経験の浅い人の訓練登山を行ったり、ベテランが各種の遭難防止・救助活動に参加するケースだ。もっとも自分のクラブの後輩を育成するのは、後輩を育てて海外遠征等大きな登山を行うという狙いがあるだろうから、無条件に「利他の山登り」と呼んで良いかどうかは疑問だが。

自慢する訳ではないが、私も幾つかの形で「利他の山登り」を行っている。具体的には何度も登ったことのある山に某ロータリークラブのトレッキング同好会のメンバーや元の会社の山好き連中と一緒に山登りに出かけることが多い。時には体調が悪くなった人の荷物を担いであげることもあるから、まあ「利他の山登り」といって良いだろう(笑い)

「どうしてそんなことをするの?そんな時間とお金があればもっと自分の好きな山に登れば?」という疑問の声が聞こえそうだが、実は経験の浅い人と山登りをすることが自分の喜びにつながっていると私は考えている。もちろん自尊心を擽られて気持ちが良いという次元の低い喜びの面もあるが、経験の浅い人が高い山に登って感動し、山と大自然から元気を貰い、リフレッシュして仕事や日々の生活に向かう姿を見ると嬉しくなるからである。

つまり利他即自利なのである。

さてネパールのトレッキング。エベレスト方面へのトレッキングは長年願っていた初めてのコースなので「自利の山登り」であることは間違いない。しかしそこで得た感動をブログや電子本などで、多くの人に伝えることができれば、そして何人かの人に「自分も行きたい」と思って貰えるなら、それは「利他の山登り」だと考えている。

ネパールはまだ貧しい国だ。学校建設のような支援を必要とする国だ。だが無償の援助には限界があるし、そこに暮らす人々の自立心を高めることにはつながらない。トレッキングという観光産業を通じて、収入を増やす方法を支援したいものだと私は考えている。もしそのために小さな貢献ができるならばそれもまた「利他の山登り」であろう。

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台中セブンイレブン小話

2014年10月31日 | うんちく・小ネタ

先日台湾の玉山登山に出かけた時、現地ガイドとの台中駅での待ち合わせ場所を台北での世話係りから渡された。正確には別のメンバーが受け取ったメモを新幹線の中で渡されたのである。

メモは中国語で「7-11」だけが赤字で書いてあった。それを見て私はてっきり出口の番号だと思い込んでしまった。台中駅に降りると目の前に「7-12」という出口万号が見えたので、7-11は遠くないはずだと思い、あたりをうろうろした。ところがどこにも7-11はない。しばらくして駅のインフォメーションセンターを見つけ、メモを見せると担当の女性は笑いながら、少し先を指さした。何とそこにはセブンイレブンがあるではないか!そしてセブンイレブンの前に行くとガイドが待っていたという次第。

後で聞くとセブンイレブンの漢字表記はないそうだ。何でも漢字で表記する中国人(台湾人)だが、セブンイレブンはSeven Elevenと英語で書くか「7-11」と表記するそうである。台湾を旅行しているとあちらこちらでセブンイレブンの店を見かける。我々もビールやおつまみを買うのにお世話になった。

それにしても「思い込み」というものは恐ろしい。数字を見て出口の番号だ、と思いこんでしまうとそこで思考停止してしまった。行動心理学でいうアンカリング効果のようなものだろうか?

この程度の「思い込み」は笑い話でおしまいだが、常に心を柔らかくしておかないと思わぬ落とし穴にハマってしまうと感じだ次第だ。振込詐欺の仕掛け人などはこのような思い込み効果を利用しているのだろう。

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【イディオム】step back 連銀の関与後退

2014年10月31日 | 英語

昨日(10月30日)の米国株は、好調だった第3四半期のGDP成長率(年率換算3.5%)を評価して、大幅に上昇した。ダウは221.11ポイント(1.3%)、S&P500は12.35ポイント(0.62%)上昇。ダウが大きく上昇した理由は構成銘柄の一つVISAの予想を上回る好決算が同社株を押し上げたからだ。

この状況にあるポートフォリオ・マネージャーは次のようなコメントをCNBCに伝えていた。

Investors were looking at the GDP number as favorable and confirmation the economy is doing well, or enough that the Fed should be stepping back.

「投資家はGDP数値を好感を持ってじっくり眺め、景気はだんだんと良くなっていて、言い換えると連銀が後退しても十分であると確証を得た」

Step backは「後退する」という意味で、この場合は連銀が10月で債券購入プログラムを終了することを指している。

通常米国市場では遅行指標と考えられるGDP成長率が市場を大きく動かすことは少ないようだが、投資家はバックミラーを見て、経済成長の確かさを確認したかったのかもしれない。投資家は連銀のQE3終了にポジティブに評価した訳だ。次の関心事はいつ連銀が金利引上げに動くか?ということだ。

輸出依存度が14%未満と低く、GDPの7割を占める米国は世界的な景気後退の影響を受けにくい(ただしいずれは影響を受けるが)。更に私は中国の製造コスト上昇から製造業の米国回帰、シェールガス革命等米国にはプラス材料が多いと考えている。また米国人がリーマンショック後の超緩和政策から立ち直ったことに自信を深めるとすれば、米国経済はかなり息の長い安定成長路線を持続する可能性があるのではないだろうか?

もっとも欧州や日本が深刻なリセッションに陥らないことが前提だが。

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金を使う秋(とき)

2014年10月30日 | うんちく・小ネタ

今年の秋は良く金を使う。一番の理由は山登りだ。9月は南北日本アルプスに3回行った。10月は台湾玉山、そして11月はネパールである。全アジア的に見ると台風シーズンの後、つまりpost monsoomは気候が安定するようだ。この時期は収穫の時期に重なり、お祭りが多い。旅行をしていても楽しい時期である。だから秋は日本を含めてアジアを旅する良い時期だ。

だから旅人にとって秋は金を使う時期である。ところで秋は「とき」とも読み、時を意味することがある。だから金を使う秋(とき)ということもできる。「金は天下の回り物」という言葉は金を使って(消費を増やして)景気を良くせよ、という意味だと考えるのは深読み過ぎるだろうか?

便利なものでインターネットで調べると、秋(とき)の語源は諸葛孔明が蜀の後帝に奉った出師の表の「今天下三分、益州疲弊、此誠危急存亡之秋也」で使われていることが分った。解説の中に秋は収穫の時期で一番大切な「時」を意味するので、大切な時を「秋」というのではないか?というコメントがあった。出費は多いが幸いなことに家計は危急存亡とまでは行っていない。ただし旅行から帰った時に銀行から住民税引き落としの予定連絡などが入っているとガックリくる。「苛政(苛税?)は虎よりも猛し」(孟子)とはこのことか?とまた中国の格言を思い出した次第。苛政(課税)が消費を冷やし、金の回りを悪くすることは古今東西変わりはないようだ。

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