金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

銀行貸出、7年振りにプラスに転じる

2005年09月30日 | 金融

日本経済の好調さを示す数字が続いているが、長年減少を続けていた銀行貸出がプラスに転じた。昨日日本銀行が発表した「2005年8月の貸出・資金吸収動向等」によれば、8月の特殊要因調整後貸出平残は386兆9、922億円で前年同月比0.2%のプラスとなった。なお特殊要因とは不良債権償却、貸付債券証券化等である。

これについてファイナンシャルタイムズが記事を書いているので簡単に紹介しよう。

  • 日本経済は回復のもう一つのマイルストーンに到達した。特殊要因調整後の銀行貸出はほお7年振りにプラスに転じた。
  • この数値は日本経済がプラスに旋回していることを示唆している。それは企業が投資拡大のため資金取入意欲が高まっていることを示唆する一方、銀行が貸出姿勢を強化していることを示唆しているかもしれない。
  • バークレーズ・キャピタルは「この数字は我々が兼ねてから言っていた持続的成長のために2005年度内に達成するべき3つのクライテリアの一つを満たすもの」と言っている。またリーマンブラザースは「このデータは勇気付けるものであり、信用収縮傾向の転換点が近いことを示唆している」と述べている。
  • 一方バークレーズ・キャピタルによれば、持続的経済成長のためには失業率が現在の4.4%から4%へ低下することと、消費者物価指数の上昇し始めることが必要と述べている。
  • またリーマンブラザースは「この数字は激減している公的機関の貸出を含んでいないので信用供与状況(の改善振り)をよく見せ過ぎている」とコメントしている。

外人投資家は総じて統計資料を素直に解釈して投資行動を決定することが多いので、この数字をベースに日本経済回復への信任を一層強くすると考えて良いだろう。

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日銀の量的緩和の解除は来年3月か?

2005年09月29日 | 金融

昨日(9月29日)日銀の須田審議委員が来年3月までに日銀の量的緩和の解除の可能性を示唆したことから、中期債が急騰した。このニュースは日経新聞にも出ているが、ウオール・ストリート(アジア版)の方が詳しいのでポイントを紹介しておこう。それにしても日本の金融市場を理解するため海外経済紙を読む必要があるとは少し残念である。日経新聞にも頑張って欲しいものだ。

以下記事の概要

  • 須田委員は「何時日銀が量的緩和を終了できるか予測することは極めて難しいが、我々は現在の緩和政策を今年度中に止めるかもしれないし止めないかもしれない。(may or may not end the current esay policy)」と記者会見で述べた。また須田委員は記者会見の前の高知の講演会で「緩和政策の終了は近いかもしれない」と述べている。
  • 須田発言を受けて10年国債指標銘柄の利回りは0.07%上昇して1.47%になった。これは8月23日以降一番高い利回り。また5年債は過去13ヶ月で一番高い利回りの0.805%へ急上昇した。
  • 三菱証券の長谷川ストラテジストによると「須田発言に市場は驚いた。何故なら来年3月に緩和政策解除というのは市場が予測していたより少し早いからだ」と述べている。
  • みずほ証券の上野エコノミストは「これは日銀が出来るだけ早く量的緩和政策を終わらせたいというというメッセージであり、この考えに対する市場の反応を図っているのだ」と言う。
  • 須田委員は量的緩和のターゲットを引き下げることには反対で「緩和政策の解除基準~年間の消費者物価変動がゼロまたはプラスになる~が達成されるまで現在の残高目標~30兆円から35兆円~を維持するべきだと述べている。

これから債券市場は緩和政策の解除に向けて神経質な動きを見せると思うが、私見では債券金利特に長期債の急速な上昇は起こらないと見ている。これは簡単に言うと需給バランスの問題である。つまり金融機関にとって貸出需要はそれ程伸びる可能性はなく、債券に資金を振り向けざるを得ないのである。従って短期金利の上昇が起きた場合イールドカーブの傾きが水平化する=フラット化が起きる可能性が高い。このフイールドカーブのフラット化にどう対応するかが金融機関のリスク管理の腕の見せ所となるだろう。

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高山に秋近し

2005年09月25日 | まち歩き

9月の3連休の中日は高山にいた。前日乗鞍山麓五色ケ原を歩き、この日は高山を散策して帰京した。私にとって高山の町は約30年振りである。正確に言うと前回高山に来た時宿屋でモハメッド・アリとジョージ・フォアマンのボクシングの試合を見ていたことを今でも覚えている。調べてみると試合があったのは1974年10月のこと。実は私はこの時手強い岩壁を連ねる滝谷を遡行するため新穂高に向かうところだった。滝谷の記憶は遠くなってしまったが、高山のことはアリの記念すべき試合とともに心に残っていた。高山の街並みが昔と変わらないたたずまいを保っていることがすぐ分かり僕は本当に嬉しかった。

jinnyanoasagao 高山で目に付くものの一つは朝顔である。家の軒先を飾る朝顔はどれも立派で美しい。高山陣屋の脇に咲く朝顔も美しいので一枚写真に収めた。

秋はそこまで近づいているが満開の朝顔は晩夏を惜しむかの様に鮮やかだ。

sugidama 高山の街並みは美しい。その美しさの原因の一つは僕は幾何学的なバランスの良さにあると思う。造り酒屋の軒先にぶら下がった杉玉の円と古い門構えの四角の好対照もある種の緊張した美観を生んでいる。玄関前を流れるきれいで勢いのある水流も凛としていて良い。

高山の古い街並を歩くと余り買い物好きではない僕でも1,2時間はウインドーショッピングで過ごせそうだ。店先を覗いて歩くのが好きな娘や家内を帯同すれば大変なことになってしまうだろう。

ところで昼飯はある人のアレンジで料亭「須さき」http://www.ryoutei-susaki.com/index.htmlで頂いた。この「須さき」は第二代高山藩主金森可重の長男、金森宗和が始めた茶道宗和流の流れをくむ料理を出すとのこと。詳しいことは分からないがとにかく吟味され尽くした材料と手のこんだ調理方法には感心するほかない。

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昼食後列車までの僅かな時間を利用して日下部民藝館に行く。古くてしっかりした建物や立派な什器備品には飛騨の豊かさを象徴している。

この民藝館の入り口に近いところで秋の高山祭のため屋台の準備がされていた。町の名前からすると、屋台は豊明台か鳳凰台だろうと思うのだが確かなことはわからない。

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秋の高山祭は10月9,10日である。秋はもうそこまで来ていると思いながら短い高山の旅を終え僕らは名古屋に向かう列車に乗った。

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乗鞍山麓<big>五色ケ原を歩く

2005年09月25日 | 

9月後半の3連休に乗鞍山麓の五色ケ原http://www.hida.jp/goshiki/index.shtmlに行った。この地域は自然環境の保護のため入山が制限されており、専属のインストラクターの同行が入山条件である。また一日の入山人口も制限されている。現在の散策コースは滝を巡るカモシカコースと池を巡るシラビソコースがあり前者を終了した人だけが後者のコースに入ることができる仕組みになっている。

kutemikoshi4

さて滝を巡るカモシカコースの最初の滝が左の写真の久手御越滝(クテミコシダキ)である。落差は58mで滝の手前から全貌を見ることができる。コースのスタート点(国道158号横)からここまでは約1.7km・標高差は160m弱の道のり。この道のりを1時間15分程度で歩いてくる。メインインストラクターの方は上平さんという方だったが、実に動植物に詳しく話も上手なので余り疲れを感じず歩いてきた。

ところで今回の滝巡りの私の目的の一つは滝のきれいな写真を撮ることにある。そのために3つの準備をした。まずレンズは広角レンズ(ズイコーデジタル11-22mm f2.8-3.5)。次に滝の水の柔らかにつながる感じを写すためシャッター速度を落とす小道具としてNDフィルター(減光)。最後に手ブレ防止のために一脚+自由雲台を準備した。本当は三脚の方がより安定した写真が撮れるが移動性を考えて一脚とした。

上の写真はシャッター速度を1/15秒で撮影した。水の連綿と落ちる様子をとらえて美しいと思う。

ikenomatamikoshi2 次の滝が池之俣御輿滝。この滝は数段に重なっているが全貌を撮ることは難しい。この写真は登山道の丸太橋を渡ったところから撮ったもので最下部の写真である。深い森の中で滝の冷気を浴びると昨日のお酒を流す汗も引き本当に気持ちが良い。

aodareodaki2 池之俣御輿滝からは少し登って木の香りがする烏帽子小屋へ着く。新しい小屋(登山道自体昨年オープンとのこと)はエコトイレで総てがきれいだ。 ここでおにぎり3個の昼食。空気がおいしいせいか食欲が進む。

烏帽子小屋からはブナの林やサワグルミの林を通っていく。ブナの林は暗いがサワグルミの林は明るい。これはサワグルミに陽樹の性格があり、洪水に襲われた後の谷筋などに生育するからだ。一方ブナは陰樹であり、暗いところでも生育できる。このためサワグルミの林も表土が安定してくるとブナに駆逐されることがあるという。そんな大きな時間の流れの中の植物相の変遷に思いを巡らせながら歩くことも楽しい。

さて「ネズ壁」というところから急斜面の下降が始まる。急坂の中ほどまで降りると左手に青垂滝の雄滝、右手に雌滝が見える。左の写真は雄滝だ。雄滝は大きく2つに分かれていて下段は柱状摂理が順層に積み重なっているので、登ろうと思うと登れないことはない。しかし上部はオーバーハング気味で空中から水のしぶきが降ってくる様に見える。

aodaremedaki 上の写真は青垂滝の雌滝である。雌滝の方が落ち口の標高が雄滝よりやや高い様な気がする。また滝の幅も広い様だ。ただしまとまりのよさという点から私は雄滝に軍配を上げたい。

これでこのコースの滝は総て終わり、その後富士山麓の青木が原樹海の中に似た地形~地元ではゴスワラと呼ぶそうだ~の中を歩く。

その後平凡な道を少し歩くと出会い小屋(バス乗降所)は直ぐである。

なおついでに池巡りコース中の最大の滝、というか五色ケ原を代表する名瀑布・布引滝の写真を掲載しよう。

nunobiki1 インストラクターの方によればこの滝の中央部分の岩が円空仏に見えるという。

いわれてみればなる程そのとおり。そういえば青垂滝・雄滝の下部にも円空仏が浮かんでいた様な気がする。

この写真の他何枚か写真をフォトアルバムに掲載したのでご関心のある方はお立ち寄りください。

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ハリケーン カトリーナの損害を予測する

2005年09月19日 | 社会・経済

最近のエコノミスト誌によればある専門会社がハリケーン カトリーナによる保険会社の保険金支払金額は400億ドルから600億ドルと見積もっている。この金額は天災では史上最高のものらしい。エコノミスト誌によれば現在までのところ保険金額が最大になった天災はハリケーン アンドリュー(1992年8月)で支払保険金額は215億ドル。5番目には日本の台風19号(1991年)が入っており保険金額は78億ドル。なおこの台風はりんごに甚大な被害を及ぼしたことから「りんご台風」とも呼ばれている。因みに昨年12月大きな話題になったインド洋の津波による保険金支払は50億ドルである。この津波は相当な人的被害をもたらしたと思うが保険金支払が少ないのは、保険の掛け方が少なかったのかもしれない。

もっともカトリーナの被害に関して保険会社が支払う保険金については、米国連邦洪水保険プログラムとどの様に負担を分担するかにより変わってくる。

カトリーナによる損害については再保険会社が大きな負担を負うことになるが、再保険会社は今後世界中のあらゆる保険料を引き上げることで損失をカバーしてくる見込みだ。

ドイツ系大手保険会社アリアンツの関係者は「米国は自然災害にかかわる世界中の支払保険金の75%を受け取っているが、保険料については半分しか負担していない」と議論を吹きかけている。実際過去の自然災害による大きな保険金支払の上位4件は米国の台風と地震関連である。カトリーナは保険業界に大きな損害と議論のタネを残していった様だ。

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