金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

黒部市民病院、フレンドリーだった

2006年11月30日 | うんちく・小ネタ

ブログに「立山の山スキーで怪我をした」と書いたところ、何名かの友人からメールや電話でお見舞いを頂いた。今週月曜日こそ一日会社を休んだがその後は隔日でガーゼ交換に病院に寄っているものの、それ以外は通常に勤務している。くしゃみや咳をすると胸に響き暫らく痛いが、肋骨一本折れているのでまあ仕方がないかと思っている。それ以外の怪我は堅雪で出来た擦り傷だ。僕が滑った斜面は本当に固い雪でかつ数日前にふった雨のせいで表面がざらざらしていた。例えると「氷の大根おろし」だ。この上を滑ってしまったので、ゴアテックスのズボンはお尻の部分がズタズタになり、しかも少しズボンがずれたので太股の外側などに擦り傷が出来た次第だ。

この擦り傷が治るには皮膚が再生してくるまで時間がかかる。つまり薬は時間しかない。だからこれを「日にち薬」という。あるいは自然治癒力ともいう。

さて怪我は辛いが怪我をして見えるものもある。例えば事故直後に入院した黒部市民病院に人達のフレンドリーな態度。怪我の処理はテキパキしていて処置も適切だった(と思う)し、お医者さん達も「僕もこの前立山にスキーに行ってきましたよ。良くなったらまた来てください」とか「肋骨が折れているから2ヶ月位は重たい荷物は担がない方が良いけれど、しばらくしたらゲレンデスキーは出来るよ」ととっても親しげにしてくれた。看護婦さんも皆さん親切で退院する時は宅急便で自宅に送る荷物を院内の売店まで運んでくれた。これはひょっとすると登山による怪我人が多くて処理になれているということなのかもしれないが。

このフレンドリーな病院と私が今通っている地元西東京のS病院を比較するのは少しS病院に酷なのだが、やはり大都会郊外の病院は余りフレンドリーでない様な気がする。私が特段S病院で邪険に扱われた訳ではないのだが、プラスチックの診察券や予約カードをもってうろうろしている高齢者に対して看護婦さんや受付の人が余り丁寧な対応をしていない様に見受けられた。現在の病院は受付、カルテ管理や会計の電子化が進んでいる様だが、慣れない高齢者には相当な戸惑いがあるだろう。もう少し分かりやすい表示などがあれば良いのだが・・・。それにしても大都会の病院は患者が多過ぎてお医者さんも看護婦さんも疲弊して不機嫌になり、フレンドリーになれないのかもしれないと思った。

これに較べて黒部の病院には私の勝手な推測ながら「富山の薬売り」につながるホスピタリティがあった。で「又黒部の病院に入院する?」と聞かれるとこれだけはご免被りたい。山の怪我は再び起こしたいものではないからだ。

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どうして邦銀の株価は下がっているのか?

2006年11月29日 | 株式

今日(11月29日)は少し邦銀の株価が戻っているが、夏以降の下げがきつく少々の戻しでは追いつかない。一体どうして邦銀の株価は伸びないのか?ということを考えてみた。

まず株式投資を行なう時、「金融なら金融」「医薬なら医薬」というセクターを重視するか、その企業の存在する「国」を重視するかあるいはその企業の収益の源泉がどの国、どの地域にあるかを重視するかという投資スタンスが問題になる。年金運用や投資信託でも「国内株」「外国株」といった分類をするが、これはその企業の所属する国で投資対象を分類したに過ぎず、これだけ企業がグローバル化すると本当のリスク・プロファイルによる分類とは言いがたい。

メガバンクの例で話をすれば、2006年9月中間期末の3グループの海外向け貸出残高は22兆円強と前年同期比36%増えているが、一方国内貸出は余り伸びていない。つまりメガバンクの今後の収益特に限界的な収益はかなり海外収益に依存することが一層鮮明になった形だ。

とすればメガバンクの株を買うことと世界的に収益源を分散しているシティコープ(ティッカーC)の株を買うことにリスク・リターンの観点からどのような違いがあるのだろうか?シティコープの配当利回りは年間3.9%、PERは11.9倍、一方三菱UFJは配当利回り0.5%、PERは39.5倍(ADRベース)である。これでは為替リスクの問題を除けば、誰だって三菱UFJよりシティコープの株を買いたくなるだろう。唯一三菱UFJを買う理由があるとすれば、それは今後の大幅な値上りによるキャピタルゲイン狙いである。しかし最も手強い相手がひしめく国際金融市場でメガバンクが米銀や英国の銀行に勝てるのだろうかという疑問がわくのは当然だ。

つまり「メガバンクが国際業務を強化し、競争相手のシティなどと企業特性が似てくれば似てくる程同じ土俵でリスク・リターンを比較される」ということになり、配当利回りが余りにも貧弱な邦銀の株価は上昇しないということになる。

金融のようにグローバル化したセクターでは国内株・外国株という分類で企業を判断するより「業務特性」つまり「リティルに強い」(不況抵抗力がある)とか「投資銀行業務に強い」(高いβ値が期待できる)とか「中国に強い」などといったプロファイルで企業を選択する方が理にかなっているのではないだろうか?

このように考える投資家が増えているとすると邦銀の株価回復は結構しんどいかもしれない。つまり邦銀はまだ他者と際立つ収益特性を持つに至っていないのである。

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立山の山スキーで怪我をする

2006年11月27日 | 

山スキーは楽しいスポーツだが、一歩間違うと大変危険なことになる。今回は初冬の立山で手痛い目に会った。いや山はいつものようにそこにあるだけで、登る私に油断と不注意があったに過ぎないのだが。山は慎重に登る者は温かく迎え、謙虚さを欠く人間には厳しい対応をするということなのだろう。同好の皆さんに御油断はないと思うが、敢えてご注意を呼ぶためにちょっと報告をしておきたい。

11月25日(土曜日)相棒のM君の車で西東京の自宅を午前6時出発。道は空いていて午前10時前に扇沢の駐車場に到着。バタバタとスキー靴に履き替え10時のトロリーバスに乗り込む。12時前には室堂到着。Shiroumadake写真は大観峰から見た白馬岳(だと思う)

バスターミナルのカツカレーを注文して待っていると隣の中年の観光旅行のおじさん達が盛んにビールやお酒を頼んでいる。ふと僕等は何でこんなに重たい荷物を担いで雪の山を苦労して登るのかしら?という気持ちが起こりM君に「俺もあっちの方が良かったかなぁ」というと彼は勘違いして「ビール位(登山前でも)飲みましょうよ」と言い1本注文した。

さて12時5分一の越から雄山を目指して登る。今日の滑降予定路は山崎カールといい立山(雄山)の西面に広がる広大な斜面だ。小1時間シールを着けて登り、一の越の少し下からアイゼンに変える。写真は一の越から雄山へ向かう途中だ。

Oyama

踏み後のない急斜面はアイゼンの前爪がかかる程度の硬い雪だ。午後3時10分雄山の頂上着。

Dainichidake 写真は雄山頂上から滑る方向の西側を撮ったところ。頂上直下からアイゼンをスキーに換えて滑降準備に入る。私はトラーブの170cmの板。M君はフリーベンチャーという1m弱の板である。

事故はここで起きた。まず尾根を少し下り山崎カールの上部に出る予定が、上から見て尾根の左側の斜面を私がターンをしながら下ろうとした時氷のような堅雪にエッジを飛ばされ転倒したのである。そのまま堅雪の斜面を2,3百メート滑落。途中でスキーを下にしてエッジで制動をかけることを試みるが堅い雪は全く受け付けない。今自宅でカシミールという地形ソフトを使って滑った斜面の傾斜を計算すると35度程度だ。春山スキーではこの程度の傾斜の斜面は滑るのだが堅い斜面は恐ろしい。

暫く・・・いや実際どれ位の時間が経ったのか?何とか急な斜面の途中で止まる。スキーは一本しか残っていない。M君はどうしたろうか?自分の怪我は?色々なことが気になるがまずこれ以上滑らない様にザックかアイゼンを出して何とか着装する。右腿の外側を少し強く打っているのでアイゼンの着装には苦労した。それから自力で斜面を少し下り、一の越からスキーで下ってくる3人組パーティに事故の概略を話してM君とはぐれたことを伝え山小屋の救助を依頼した。

と暫くすると私滑り落ちた斜面をM君が滑ってくる。大丈夫かな?と思ったところでM君が転倒。ただし上部からではなかったので暫く流されて止まった。やっとM君と合流。M君は僕の滑落を見て山岳警備隊のヘリを呼んでくれていた。少し自力下山を続けたとことでヘリが来る。私はホバーリングしたヘリに吊り上げられ黒部市民病院にそのまま入院。幸い肋骨を1本折り、多少の打撲と擦過傷を被った程度で済み、翌日は一人で列車で自宅まで帰ることが出来たが関係各位には大変御心配とお手間をかけてしまった。

今回の事故は自分が堅雪の恐さを軽視したこととスキー技術への過信が招いたものと反省している。

ワイフには黒部の病院から電話で簡単に状況を伝えたが、一晩心配していたかと思うと心苦しい。黒部から特急と上越新幹線家を乗り継いで午後4時頃家に帰ると二人の娘達も「ダディ、大変だったね」と随分心配してくれていた。

家族が「もう厳しい山登りは絶対止めてね」と言わないのがかえって応えたので、私は「少し休むよ」といって2階への階段を登った。足を痛めた身には2階への登りが結構きつく「年を取ったり障害を抱えるとはこの様なことなんだなぁ」と変なことを考えていた。私は今年56歳。厳しい山登りにピリオドを打つ時期なのかもしれない・・・寂しいが受け入れなければならないことが世の中にはあるということなのだろう。

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日本版SOX法、運用は慎重に

2006年11月24日 | 金融

金融庁は11月21日に上場企業の内部統制整備を求める日本版SOX法(金融商品取引法)の「実施基準」に関する公開草案を発表した。金融庁によれば来年1月にも実施基準を確定したいということだ。私はまだ実施基準の詳細を見ていないが、企業にとってかなり負担になりそうだ。そういえば先日たまたま英国政府筋の要人と話をする機会があり、日本版SOX法の話が出たがその時彼が言っていたのは「米国でSOX法が実施されたお陰でロンドンに拠点を持ってきたり、ロンドンで上場をする企業が増えてホクホクである」ということだった。

折りしもエコノミスト誌は米国がSOX法などの影響でビジネスと金融の世界でその圧倒的優位性を失いつつあることをかなり詳細に論じている。かなり読み応えのある論説だがポイントを紹介しよう。日本がSOX法の運用を誤らないように警鐘を鳴らすためにも。

  • 米国のヘンリー・ポールソン財務長官~ゴールドマン・ザックスの前会長~は、今週エンロンの崩壊後2002年に制定されたSOX法(Sarbanes-Oxley Act)により、企業規制が強化され我々の社会に新しいリスクが導入されてきたと述べている。またニューヨーク市長のブルンバーグ氏やシューマー上院議員が「ロンドンに学びニューヨークを救え」と懸念を表明している。今米国の企業や銀行は史上最高の利益を上げているのにこれらの懸念は見当違いではないだろうか?
  • いや、米国の低下を裏付ける数字がいくつかある。米国はヘッジファンド、投資信託、証券化、シンジケートローン、株と上場デリバティブの取引高で欧州を凌駕しているが差は縮まっている。社債の発行額では昨年欧州は米国を上回った。また金融の健康状態のバロメーターであるIPOは5年前は米国が欧州、アジアを凌駕していたが今年は後者が上回っている。資本市場規制委員会のエコノミストは「数字は何か基本的なところで変化が起きていることを示唆している」という。
  • 同エコノミストによると米国市場の競争力を測るものは「海外企業が上場を選択するかどうか?」であるという。過去5年間自国と米国の証券取引所双方に上場する「クロスリスティング」は大幅に減少している。また上場するものは144Aルールを使って上場している。これは米国市場へアクセスしながら、完全な登録とコンプライアンス費用を回避するものである。
  • 米国企業も公開市場から逃げている。ディーロジック社の調査によると、今年の10ヶ月間で過去5年間を上回る金額の公開企業のプライベートエクイティによる買収が行なわれた。(金額は1,780億ドル)
  • 一方ロンドンは外為取引と店頭デリバティブで世界のリーダーになっている。また新興市場の自然は養育場所になっている。
  • 技術革新は資本とそれを必要とするものにとって最良の取引が得られる場所へ移動することを容易にしてきた。

ここでエコノミスト誌は米国の競争力が低下している四つの基本的な問題点を指摘する。

【SOX法のセクション404】 これがSOX法で最も物議をかもす部分である。これは企業に毎年「内部統制レポート」の提出を求める。内部統制レポートは会計監査人による証明と二人の取締役による署名が必要である。これはマインドを高めるが費用も高める。

監査費用は時価総額10億ドルの企業で年間数百万ドルに及ぶ。コンプライアンス費用は固定費なので大きな企業をそれを吸収することが容易である。しかし幾つかのより小さい企業はこのためロンドンのAIM市場を上場市場として選択している。

しかしSOX法はコスト負担を増やすだけではない。理論的にはより高い企業統治のレベルは、高い株価バリュエーションにつながるはずである。もしこのプレミアムが高ければコンプライアンス費用を相殺するはずである。一つの研究によると新興国の企業が米国に上場すると37%のプレミアムが付くという。また時価総額が230百万ドル以上の企業にとってはニューヨーク上場のプレミアムがコンプライアンス費用を上回るという資本市場規制委員会のエコノミストの示唆がある。

改革を主張するものはSOX法の運用をより「リスクベース」のものにしようとしている。これはゴールを大部分変えないで、企業と会計監査人にそれを達成するためにより裁量を与えるというものだ。既に米国の証券取引委員会も負担を軽減することを検討していると発表している。

なおエコノミスト誌はSOX法の問題の他【訴訟】【株主の権利】【規制】の問題を論じているが説明は省略する。

米国という国はある人々が正義と信じることを実行するために極端に走ることがある。たとえば禁酒法の導入もその一例だろう。ベトナム戦争もその一例だし、後年第二次イラン戦争もそうだったということになるかもしれない。ただ米国の良いところは振り子が触れすぎた場合、それを修正する力があることだ。

一方日本では米国のまねをして新しい仕組みやルールに導入に熱心な一派がいるが、これが行き過ぎた場合に修正する力はあるのだろうか?

エコノミスト誌によると、米国の証券取引委員会に英国の金融監督庁(FSA)のようにソフトなアプローチをとることを期待する人もいるということだ。FSAの職員構成は法律家よりエコノミストの方が多いということだが、これは取締より規制の変化が与える潜在的なコストと利益の分析に力を入れているということの表れであろう。

今日本が英国から学ぶことは結構多いのかもしれない。

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山スキーの季節が来た!!

2006年11月23日 | 

温かい秋が続いたためかスキーの話をしてもピンとこないだろう。ところが高い山ではもうスキーができるのだ。その山とは北アルプスの立山である。黒部立山アルペンルートが雪のため閉鎖される直前の11月中下旬に新雪が降ると立山でパウダースキーを楽しむことができる。今年はすでに1m以上の積雪があるので今度の土日(24,26日)で相棒のM君と出かけることにして、今日装備の点検を行った。

Yamaski 写真は山スキー道具一式で左上から兼用靴、シール(靴の横の青い帯)、ゾンテ(靴の前の金属管)、ビーコン(シールの前の灰色の器具)、ゴーグル、スキー板、スコップなどが並んでいる。一般の人になじみがないものはシール、ゾンテ、ビーコンだろう。シールはマジックテープのようなものでスキーの裏に貼り付け、雪面を登るための布で出来た道具である。ゾンテは雪崩で相棒が埋没した時、雪面に差し込んで探す道具。ビーコンというのは電波を出す装置で体につけておく。万一雪崩に埋もれた場合、相棒が電波で探知してくれる様になっている。スコップは雪崩で埋もれた相棒を掘り出す道具だ。帽子の下の赤いテープがついているのはアイゼン。スキーで登れない様な氷の急斜面を登る時に使う鉄の爪だ。

山スキーとはこれらの道具を担ぎ、30分か精々1時間の滑降の醍醐味を味わうため5時間も6時間も雪山を登る最も体力の要るスポーツの一つだ。四捨五入すれば60歳になった身でどうしてこんなことをしているのか我ながら疑問を感じる時がない訳ではない。

しかし次の写真を見てみよう。

Yakai 春の平標山からヤカイ沢を滑るところである。怖いほど青黒い空の下に真っ白な雪面が広がる。スキーのトレースは2,3本あるがその外には広大な処女雪の斜面が広がる。そこを思いのままに滑るのだ。

山スキー程爽快な遊びは少ないかもしれない。それは高みと美しさを求める心と色々な雪面をこなすスキー技術と長いラッセル(雪かき)に耐える体力の、そう将に心技体が求められる『究極の遊び』であると言って良いかも知れない。

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