金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

コロナをてこにして従業員教育方法を変える企業が伸びる

2021年11月28日 | ヒューマンスキル
 日本ではコロナ感染が激減している中、世界的には南アフリカ発の新型変異株オミクロンの影響が懸念されています。
 これについて私は直感的に一時的な感染拡大はあっても、大惨事になる前に抑え込めるのではないかと判断しています。人類は経験から学び、危機対応能力を高める力があるからです。
 コロナは大きな傷跡を残していますが、それをてこにして新しいことを始める人や企業にチャンスをもたらしていることも事実です。
 WSJにHow the Covid-19 pandemic changed employee training(コロナはどのように従業員教育を変えたか)という記事が出ていました。
 コロナ感染拡大によって従業員教育のオンライン化が進む中、従業員研修やキャリアサポートはどのように変わりつつあるかという話です。
 いくつかポイントを紹介すると、「従来集合研修でやっていた講義をそのままコピーしてオンラインでやるようなやり方では従業員の集中力が低下するので効果薄」ということがまずあげられます。
 ヴァーチャルトレーニングでは、集中力は7分で切れるとあるコンサル会社の人は言っています。だから7分毎にトレーニング内容を変えると効果的なのです。例えば7分間スライドを見た後には7分間ブレイクアウト(オンライン分科会)をやるとかです。
 「トレーニングを一口サイズに短くする」というのも参考になる話です。
 実開催の研修では丸一日場合によっては一週間使って行うことがありますが、かならずしも期待通りの効果がでるものではありません。
 なぜなら学んだことを仕事に生かすには反復訓練という継続的なトレーニングが必要だからです。長いトレーニングを繰り返すことはできませんが、短く切られていると自宅からでもトレーニングしやすいと言えます。
「受け身で聞いているだけでは不十分」というのも参考になります。
 短いゲームなどを交えて受講者を積極的に参加させることが重要です。
 なお細かいことは省略しますが、マスターカード社では人工知能を使って、個々の従業員が目指すキャリアについて、現在保有しているスキルと不足しているスキルを分析し、スキルギャップを埋めるアドバイスを行っているという話も出ていました。
 これらの話は社員教育に関する話ですが、オンラインでセミナーを行う場合も参考になると思います。オンラインのセミナーは実開催のセミナーの100%コピーではいけないのではないか?と考え始めたところです。
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日本でテレワークの生産性が上がらない二番目の理由

2021年03月12日 | ヒューマンスキル
 先日「日本でテレワークの生産性が上がらない一番の理由は会社が従業員を信用していないことにある」と書いた。それは誠にそう通りなのだが、モノゴトには複数の理由がある場合が多い。私はプレゼンテーションの講習会なのでは「断るにしろ受けるにしろ、モノゴトは理由を3つ上げて説明するのが良い」と言ってきた。なぜなら我々がモノゴトを判断する場合、3方面から見ることが多いからだ。例えば投融資先を判断する場合は、収益性・成長性・安定性の3方面から見るという具合にだ。
 また通常3つ以上の理由をあげるのもやり過ぎだ。なぜなら聞いた方が覚えていることができないからだ。ということで日本でテレワークの生産性が上がらないことについても3つの理由で説明しようと思う。
 今日は2番目の理由についてだが、それは「コミュニケーション技術が未熟」ということだ。コミュニケーションとは意見と情報と感情をお互いに伝え合い、何かを成し遂げていく技術の総称で広い意味ではネゴシエーションやファシリテーションの一部を含む。
ポイントは2つある。一つは技術ということだ。技術は先人たちが積み上げ体系化したものなので、学ぶことで効率よく成果を得ることができる。逆に学ばずに我流でやっていると良い結果はでない。
 もう一つのポイントは「お互いに伝え合い」という点だ。コミュニケーションでは意見や情報の出し手と受け手が対等でなくてはならない。対等という意味はお互いの時間やスケジュールを尊重しあうというところから始まる。
 たとえば上司が自分の都合で知りたいことがあるからといって、思いつくままに部下を呼びつけて質問するというのは完全にコミュニケーションの基本ルールを無視していると私は考えている。部下には部下の仕事の段取りがあるからだ。
 現在多くの企業でリモートワーク環境の構築が進み、従来の固定電話と電子メールに加えて、スマートフォン、ZOOMなどのテレビ電話・テレビ会議システム、Slackなどのチャットツール、SharePointのような情報共有ツール、あるいはBasecampのようなプレジェクトマネジメントツールなどを並行的に導入している企業も増えているのではないか?と思う。
 そしてツールは増えているけれど、効率的な使い方をして企業内のコミュニケーション効果を高めている企業は多くないと私は見ている。
 ここが2番目の問題なのだ。まずコミュニケーションとは何かということを全従業員に徹底する。そして相手の生産性を一番妨げない方法でコミュニケーションを行うことを考える。つまり全社的にコミュニケーションの生産性を高めることを考える訳だ。そうすると同時性を求められるZOOM会議などは極力減らして、メールやチャットで要件を伝え合おうということになってくるはずだ。メールとチャットでは前置きがなく、スレッドのあるチャットの方が効率的だから極力チャットを使おうという具合になるはずだ。
 だが多くの企業はそこに至っていない。だからテレワークで生産性をあげることができないのである。
 テレワークの生産性を上げようと思うのであれば、まずコミュニケーションの基礎を全社員が学ぶことであり、ITCリーダーがコミュニケーションツールの使い分けについてガイドラインを設けることが次のステップになるということだ。
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ヒューマンスキルの要、人を動かすために動かない?

2021年01月08日 | ヒューマンスキル
 少し前からヒューマンスキルのことが気になっています。なぜか?というとコロナ対策で再びテレワーク拡大が求められる中、多くの企業がテレワーク拡大に悩みを抱えているからです。
 大手企業の中には昨年春~夏のテレワーク実施を通じて、インフラ面では整備を進めたところが多いでしょう。しかしPCやZoom等機器類が揃えばテレワークが進むといものではありません。担当者・チェッカー・決裁者が別々の場所で仕事をするため、ワークフローも変わるでしょうし、指示・質問・回答の方法も変わってきます。オフィスで揃って仕事をしている時は、言葉によるコミュニケーションだけではなく「空気を読む」というコミュニケーションの方法もありました。井戸端会議で上司や経営層の本音を探るという情報収集もありました。
 これらのコミュニケーションは無駄なものではなく、仕事を進めていく上で必要な潤滑油だったのです。
 しかしテレワークになるとこれらのコミュニケーション手段はなくなります。
 そしてそれ故に「組織の中できちんと情報を共有していく」ヒューマンスキルが重要になるのです。
 一般にヒューマンスキルは次の7つのスキルで構成されると言われています。
 「リーダーシップ」「ネゴシエーション」「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「ファシリテーション」「リスニング」「コーチング」です。
 ところでヒューマンスキルって何でしょうか?
 私は一番シンプルな定義として「他人を動かして何かを達成する技術」と考えています。例えば「顧客にある商品やサービスを説明して購入してもらう」には「プレゼンテーション」や「ネゴシエーション」が必要になります。
 ところで部下や同僚に働きかけて、チームで何かを達成する時はどのようなスキルが必要でしょうか?
 もしあなたが何かを企画するとすれば、その企画を関係者にプレゼンする必要があります。しかし説明しただけでは腹落ちしないことが多いと思います。参加者には参加者の意見や立場があるからです。
 だから議論を通じて合意を形成してく必要があります。この合意形成にこぎつける技術がファシリテーションです。
 もっとも日本の会社では「腹を割った話は酒でも飲みながら」という風習がありますから、テレワークになると合意形成が進み難くなるかもしれません。
 また部下を働かすにしても、命令するよりは自発性を重んじて積極的にその仕事に取り組むようにする方が成果が上がることはよく知られているところです。つまりここではコーチングの技術が必要になる訳です。
 私は「ファシリテーション」「リスニング(傾聴)」「コーチング」では「相手の意見をよく聴く」ことがポイントだと考えています。自分が異なる意見を持っていても、黙って相手の意見を聞くことがポイントなのです。
 意見を聞くことで相手は自分が認められたと思い、最低限の信頼関係が生まれるはずです。
 テレワークの一つのハードルはこの「聴く」ことが難しくなっていることにあるような気がします。指示はメールやテレビ会議で出すことができるのですが、その指示が腹落ちしているかどうかは分かりません。
 相手が腹落ちしてこちらの希望どおりに動いてもらうには、実はこちらが動き過ぎないということがポイントなのです。顧客に何かを買ってもらいたい時に熱くなって売り込み過ぎると顧客は引いてしまう場合が多いと思います。
 同じように部下に対する過剰な指示は部下のやる気を殺いでしまう可能性があります。このような事態を避けるには「人を動かすために自分は一定期間動かない」という間の作り方が重要なのです。
 これがヒューマンスキルの一つのポイントです。ただし相手の顔を見ながらでも慣れないと難しい間の取り方をテレビ会議やチャットで行うには一層スキルが要ります。これがテレワークの一つの壁になっているのでしょうね。
 だから機材を入れただけでテレワークが進むと考えるのは間違いなのです。
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