東京都ではコロナウイルス感染者拡大により病床使用率が48.5%になった(1月30日発表)。国に緊急事態宣言を要請する目安の病床使用率50%に近づいたため、小池知事は要請するかどうかは慎重に検討したいと述べた。
緊急事態宣言については自民党の高市政調会長が感染拡大が続けば、国が緊急事態宣言を発令する可能性があると述べるなど関心が高まっているが、私は今回は緊急事態宣言にいたる可能性は極めて低いと考えている。
その理由は「世界各国がコロナウイルスとの共生の方向で動き、経済的なダメージが大きいロックダウンなどの封鎖政策を採らない」と方針転換していることによる。
という記事の各国の保健当局の動きを説明している。
論点を簡単に説明すると、「オミクロン変異株は感染力が非常に強くワクチンを接種した人でも軽い病気の症状を起こすことがあり、経済的なダメージが大きな封鎖を行ってもウイルスを排除することができない」「一方南アフリカから欧州、アジアにいたる各国政府は入院者数や死亡者数が管理可能なレベルであることを経験してきた」「感染者の急激な増加はもはやかってのような規制強化の指標ではなくなり、感染者が多ければ規制が強化されるという原則は覆された」「カリフォルニア大学の感染症専門家は、コロナウイルスも他の感染症同様、入院患者の治療に重点を置いて対処する必要があるという考え方が各国政府で受け入れられつつある」
また記事は日本の状況についても言及している。
「日本では、 12月上旬の一日の感染者数は百人程度だったが、オミクロンの影響で最近は8万人以上に急増した。しかしこの状況にもかかわらず日本はいくつかの規制を緩和している。政府はオミクロン陽性の患者を全て入院させるという方針をやめ、若くてリスクの低い無症状または軽度の患者には自宅療養を許可している。」
ただテレビの報道番組では司会者やコメンテーターが各地で感染者数が記録を更新したことを大きく報じることが多く、一般国民の関心が感染者数に釘付けされていることは間違いない。その結果コロナ対策が不十分だということで岸田内閣の支持率が低下するといった現象が起きている。
感染力や重症化リスクという点ではオミクロンは従来のコロナとは違うのだという認識を持つ必要があるようだ。
また日本では人命尊重が金科玉条になり時としてそこで思考停止に陥ることがある。確かに目の前の一人の命は大事だが、社会的・経済的活動が過度に抑制されると多くの人が目に見えない形で寿命を縮める危険性があるのだ。これを社会全体の死亡リスクと考えるような視点が必要なのだろう。