金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

悪いpredator良いpredator

2012年09月30日 | うんちく・小ネタ

Predatorプレデターとは肉食動物、捕食者という意味で、比喩的に「弱みに付け込んで他人を利用する人」という意味で使われる。私は観ていないけれどプレデターというSF映画もあった。またこのブログの読者で英語で金融記事をお読みになっている方は、サブプライム問題等で貪欲な荒稼ぎをした投資銀行を批判する時にpredatorという言葉が使われていたことを思い出されるかもしれない。

プレデター、捕食者という言葉は良いイメージを伴わないが、ニューヨーク・タイムズに「食物連鎖の頂点にいる捕食者によって環境は保全されている。だから彼らを守る必要があるのだ」という主旨の記事が出ていた。タイトルはWhy the beaver should thank the wolf「何故(狼の餌であるビーバーは狼に感謝するべきなのか」というもの。

狼はビーバーを食べる。またヘラジカなど若木の芽を食べる大型草食獣も食べる。狼がいなくなり襲われる恐れがなくなると、鹿は落ち着いて木の芽を徹底的に食べて木を枯らしてしまう。奥多摩などの山を歩く人は木の皮が無残なほどに剥ぎ取られた木々や、それを守るため幹にネットが巻きつけられた木々を見たことがあるだろう。大型肉食獣がいない日本では、鹿は我が物顔なのである。

狼がいると鹿は落ち着いて木の芽を食べることができず、急いで一つ二つつまみ食いをして辺りを警戒するので、木を枯らすことはない。豊かな植生があるとビーバーは巣作りに励むことができる。またビーバーの作ろダムは、昆虫、両生類、魚、鳥、小動物のすみかになる。また豊かな植生は洪水を防ぎ、肥沃な土壌は二酸化炭素を吸収する。

という具合に狼がいることで、豊な生態系が守られ、エコシステムが持続する、だから狼を保護しようというものだ。

規模は小さいけれど、日本にも百年前に絶滅した狼を復活させようという運動がある。これについて私は主旨は分かるけれど、上手く行かないのではないか?と考えている。上手く行かないと思う一番の理由は人間への危害の問題ではない。狼が必要とする生活圏の広さの問題である。先ほどタイムズの記事は「イエローストン公園のような公園は狼を保護する一番効率的な手段ではない。近親交配を避けるため狼は非常に長い距離を移動する。国立公園の規模は狼には不十分で、大陸規模のスケールで保護地域を考えるべきだ」と結論していた。四国の半分の面積を持つイエローストーン公園で不十分というのであれば、日本には受け皿はない。

残念ながら日本に野生の狼を復活させる余地はない、と考えるべきだろう。といってむやみに鹿狩のハンターが増えても登山者としては危険な話だ。とりとめのない話になったが、次に山に行くときは、鹿の害のことを考えながら歩いてみよう。

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入試回避で留学生増加~中国の話だが

2012年09月28日 | 国際・政治

国に勢いがある時は何でもかんでも海外で話題になる。昔FTなどのメディアで日本のニュースが目立ったことがあるが、今はすっかり影を潜め、中国の話題を見ることが多い。

FTに「高考」ガオガオgaokaoと通称される大学統一入試を避けるため、海外に留学する学生が急増しているという記事がでていた。

高考は毎年6,7月に行われ、受験生の集中度を守るため、試験の時期は交通機関の運行も制限されるという大変なものだそうだ。ある中国人学生のブログによると、中国人の中学生は50%、高校生は70%、大学生にいたっては80%が近眼、ということだ。これは世界一厳しい受験競争の結果である。それ程大変な「高考」だが、将来役に立つ内容は乏しく、大学に入ってしまうと1,2年で勉強したことは忘れてしまうそうだ。まあ、我々の受験勉強も同じだったから揶揄する程の話でもないが。

この無益で疲弊する受験勉強を避けるため、海外に留学する学生が増えている。FTによると、2008年には10.5千万人いた高考の受験者が今年は9.15万人に減り、その2割の要因は海外留学生の増加によるという。

海外留学生というと、習近平(一人娘がハーバード大学留学)やこの前失脚した薄氏の息子(同じくハーバード大へ留学)など、共産党幹部や富裕層の子弟を思い起こすが、実際には中流家庭からの留学生が増えている。FTによると、留学生の4分の3は年収30万元(47千ドル)以下の中流家庭出身者だ。

中国には「科挙」という人類史上一番厳しい試験制度があった。厳しい受験競争は中国の伝統なのである。ただし科挙に合格すれば、官吏として将来が保証されたが、今日の中国では海外で高等教育を受けても、中国内で就職するとその分のプレミアムは余りつかないそうだ。

留学費用の回収は大変だが、それでも海外留学生は増えている。礼記に「上(かみ)を学ぶ下(しも)」という言葉があるとおり、古来より上の人がすることをまねてきたと言われる中国人だが、留学熱の高まりは過酷な受験回避だけでない「何か」がありそうだ。

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QE3でドル安、だが限定的という見方も

2012年09月27日 | 金融

米国の量的緩和QE3発表の後、予想外の国債買い入れを発表して、一時的に円高に歯止めをかけた日銀だったが、またぞろ円高になってきた。

大量のドル資金の市場供給で、いわば最大規模の為替介入を行いドル安を図った米国に対して各国がどのような対応をとるか、為替トレーダーの中に様々な憶測が広がっている。

FTによるとベアリングアセットやAmundiの為替デスクは、ブラジル・レアルを避けてメキシコ・ペソを買う、あるいはシンガポール・ドルやロシア・ルーブルを買う動きに出ているという。

ブラジルではマンテガ金融大臣が、米国が引き起こした通貨戦争に対して対抗すると宣言して以来介入警戒で弱含んで入る。一方メキシコはペソ高を容認して、介入を行わないと投資家が信じているから買われている。またシンガポール・ドルやルーブルは、一定のレンジで管理されていて一方向にブレないので、選好されている。

FTによると、前述のAmundiの為替ヘッドは、日銀は金融緩和により円安誘導を行うことに失敗したけれど、大規模な為替介入(で円安になる)リスクがあるので、円買を避けているということだ。

物議を醸している米国のQE3だが、一部の投資家は今回の量的緩和は前回よりドルに対する影響は少ないと信じている。というのは新興国の中央銀行は、通貨高に苦しむ輸出業者を助けるため自国通貨安政策を取るべきか、輸入食料品の価格上昇を相殺するため通貨高を容認するべきかという難しい選択を迫られているからだ。また欧州圏の不安定さもドル安を緩和する材料だ。

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ネクサス7、19,800円で発注

2012年09月27日 | デジタル・インターネット

グーグルが日本でも発売を開始したアンドロイド端末(16G)を、グーグルサイトで今日注文した。数日の内に届く予定だ。ネクサス7についてはビッグカメラ等量販店でも10月2日には発売開始の予定だから、そちらを待っても入手時期は変わらないだろうが。

この通信手段はWi-Fi専用の端末を購入した一つの理由は来月予定しているネパール旅行での利用だ。今使っているスマートフォンを利用する手もありそうだが、海外で通信中にWi-Fi接続から電話回線接続に切り替わったりすると思わぬ通信料が発生するリスクがあると思い、Wi-Fi専用端末を1台購入することにした。

ネパールのWi-Fi事情は意外に良さそうだ。

日本ネパール協会のホームページによると次のとおりである。

今年に入って、あっという間にカトマンズはもとより、全国主要都市、ホテルや外国人の多い観光地のレストラン等でWi-Fiが普及し、無料で使用可能になっています。日本は業者の利益優先で無線LANはタイプの違いによりつながらない場合がありますが、他の国ではWi-Fi Allianceが標準化して汎用性を高めたWi-Fiによって、容易にインターネットに接続できる環境になっています。
【インターネット・カフェ】
カトマンズは停電が14~18時間で、家庭でもかなりインバーターを設置していますが、ローカル水力発電やソーラー発電が可能なエヴェレスとの登山基地ナムチェバザール(2700m)には、インターネット・カフェがずらりと並んでいます。地方でも、ちょっとしたバザールには必ず1軒以上のインターネット・カフェがあります。一般的にはPCを持っていませんが、外国の友人や出稼ぎに行った家族と連絡が取れる環境が広がっています。

日本の通信は電話回線にこだわっていて、Wi-Fiの普及は遅れているが、ネパールは欧米のトレッカーが多いので、国際標準的なWi-Fi環境が整っている、と期待したい。ルータの準備等も必要だが、まずはネクサス7が手元にきてから検討しよう。

若い時にヒマラヤ遠征をした時は、リエゾンオフィサーに頼んで絵葉書を家族に出していたが、今は端末からインターネット経由で瞬時に写真入りのメールを送ることができる。便利になったが、最初はセットアップが大変だ。まあ、これも60歳の手習い、ボケ防止の一つか?

それにしてもタブロイド端末がこの値段で手に入るのは凄すぎだ。日本の家電メーカーは真っ青だろう。

グーグルの調査によると、日本のスマートフォンの利用者の75%はネットショッピングに利用していて商機は大きいという判断だ。

ショッピングとか電子本閲覧という利用目的を考えると、案外1台のスマートフォンより「グーグル端末+従来型携帯電話」の組み合わせが便利かもしれない。

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日本と中国は軍事衝突を起こすのか?~エ誌の記事から

2012年09月25日 | 国際・政治

先週末のエコノミスト誌にCould Asia really go to war over these?(アジアはこれらの(島嶼)問題で本当に戦争になるのか?)というタイトルの記事を載せていた。話題の中心は尖閣諸島をめぐる日本と中国が如何にして軍事的衝突を回避するべきか?という話なのだが、センセーショナルな見出しで読者の関心を誘った、というところだろう。

エコノミスト誌は「アジア諸国は友好関係を保つ方が有益な理由があるから、今回の尖閣諸島をめぐるつまらない口論squabbleはおそらく沈静化するだろう」としながらも、百年前のドイツ帝国の勃興を例に引いて楽観論にも警鐘を鳴らしている。

欧州諸国は戦争による経済的利益はなかった。しかしドイツは成長を続けている同国を世界が受け入れるのが遅すぎると感じ、国粋主義が力を得た。

最近の中国の一部のマスコミには、要領を得ない外交交渉をやめて日本に原爆の一つでも喰らわせてやれという主張もでている。無論北京政府の高官は平和を保つことが、経済的利益であることを知っているので、遅ればせながら口論の沈静化を試みている。

しかし尖閣諸島に集まる両国の船の衝突といった不測の事故が、軍事的衝突の危機につながらないように安全装置safeguardが必要だ、とエコノミスト誌は主張する。同誌が主張するセーフガードは3つ。一つは万一船の衝突が起きた時、どのように対処すべきか定めた行動規範を作り、不慮の事故が紛争に拡大することを避けるべきだ、というものだ。

次は過去に毛沢東や鄧小平が行ったように、尖閣諸島に対する主権問題を棚上げすることだ、と同誌は述べる。ちょっと気になるのは、記事の原文にはwithout prejudiceという言葉がついていることだ。Without prejudiceには「偏見なく」という意味と「既得権を侵すことなく」という二つの意味がある。「実効支配」という既得権を侵さないという意味だと良いのだが。

記事は別の個所で「日本の尖閣諸島に対する主張の合法性がどうであれ、その基盤は荒々しい帝国建設にある。すべての国のメディアはしばしば学校で繰り返し教え込まれた偏見prejudiceを刺激している」と述べている。

もしエコノミスト誌のwithout prejudiceがこのような偏見を排除する、という意味なら歓迎するべきなのだが。

最後のセーフガードとしてエコノミスト誌は米国の抑止力をあげる。日本が尖閣諸島を実効支配しているのだから、日米安全保障に基づきそれは米国の保護下にあり、中国は侵略することはできないと知っている、と述べる。もっとも同誌はオバマ大統領の他のアジア諸国に対するコミットメントは明らかでないが、と一言付け加えている。

★    ★    ★

中国では近いうちに確実に指導層が交代する。日本でも遠からず総選挙が行われる、と期待している(興石幹事長の留任で民主党は先延ばしを図ろうとするが)。

次の政権与党を選ぶ外交問題上のチェックポイントは、このようなセーフガードの構築にどの程度の見識を持っているか?ということになるだろう。

尖閣問題の原因の一つが、鳩山元首相や小沢元幹事長の不見識な発言と行動から、日米間に溝を作り、その隙間を中国に突かれた、という事実を考えると米国の抑止力を活用するような政策を実現できる政治家にしばらく国を預けたい、と私は考えている。

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