金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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【イディオム】take for a ride 北朝鮮の騙し

2014年10月23日 | インポート

政府は拉致被害者の再調査を巡り、伊原純一アジア太平洋局長らを10月27日に北朝鮮に派遣することを決めた。

この件についてエコノミスト誌に次のような一文があった。

Predictably, the delay has triggered criticism among conservaties that Japan is being taken for a ride.

「予想されたことだが、(北朝鮮の拉致被害者調査の)遅れは、保守派の中で日本は騙されているという批判を引き起こしている」

Take someone for a rideというと一般的には自動車などの乗り物に乗せるという意味だが、慣用句として「騙す」という意味がある。

エコノミスト誌によれば「安倍政権は新たな調査をしてもしなくても、北朝鮮は拉致被害者がどこにいるか正確に把握していると信じている」ということだ。

無論このようなことはエコノミスト誌に指摘されるまでもなく、常識で最初から分かっていることである。北朝鮮にとって交渉の重要な切り札である拉致被害者の居場所を日頃から把握していないはずはないからだ。

これまでの交渉の中で北朝鮮は日本から、食料や医薬品など人道的支援物資の輸出再開や、在日朝鮮人の母国への送金上限額の引き上げなどを引き出してきた。

北朝鮮の次の狙いは何か? それに対して、日本はどこまで飴をしゃぶらせるのか?

エコノミスト誌のこの記事のタイトルはStakes uppedだ。

この場合のStakeは掛け金だから、掛け金が上がったという意味だろう。A stake is very high.とうと一か八かの大きな駆けという意味だ。そこまで行かなくても、閣僚辞任等でごたごたし始めた安倍政権にとって、これは一つの賭けであることは間違いない。

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【イディオム】Bake in the cake 利上げの影響は?

2014年09月25日 | インポート

Baked in the cakeというイディオムは投資用語としては「織り込み済み」と意味で使われる。

WSJ のMarket WatchのHere's what happen to stocks before and after rates riseという記事の中にThat's been baked in the cake for some time.という一文が出ていた。

このThatは来月(2014年10月)に終了する予定の連銀の債券購入プログラムを指すので、「連銀の量的緩和終了は少し前から市場では織り込み済みだった」という意味になる。実際量的緩和の終了のニュース自体は市場にインパクトを与えていない。

市場がフォーカスしているのは、連銀が何時政策金利の引き上げに動くか?ということだ。だがこの記事の書き手は「連銀が何時金利を引き上げるのか予想することは不可能だし、そんなことを議論するのは馬鹿げている」「もっと重要なことは金利上昇(あるいは正常化)が行われた時、市場がどう動くか?ということだ」と述べている。

S&Pによると、第2次大戦後連銀が金利引上げに動いた16回のうち、13回は金利上昇の半年前にpullback(株価の一時的な下落)、correction(株価の10%以上の下落)、bear market(弱気相場入り)が起きている。ただし過去はその後長い眼でみると楽観的な相場が戻っているのだが。

連銀の金利引上げを予想することは困難だが、誰かが予想するから金利引上げ前の半年前に株式相場がそれを織り込むというのも事実ではないだろうか?

連銀の金利引上げは、雇用市場とインフレ圧力の綱引きで決まる。今のところ雇用市場の実態は失業率等の統計データが示すより悪い。何が雇用市場の改善のドライバーになるのか興味のあるところだ。

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イエレン議長がタカ派に見える日

2014年08月22日 | インポート

ドルがユーロや円に対して強含んでいる。ドル指数は昨年9月以降で最高値だ。ユーロは1.33を割り込んで1.328レベル、これは昨年9月来の安値だ。円は103円後半レベルまで売り込まれている。

ドルが強含んでいる理由は、日米欧の景気動向と中央銀行のスタンスの差が明確になってきたことによる。

市場参加者が注目しているのは、今日ジャクソンホールで行われる中央銀行総裁のスピーチだ。一番注目されているのは米連銀のイエレン議長だが、彼女の話は後に回して、イエレン議長の後に発言する予定のECBのドラギ総裁については、景気が低迷して、インフレ率が危険水域と思われる0.4%まで落ち込んでるユーロ圏でどのような金融緩和策を取るかが注目ポイントだ。今月初めにドラギ総裁は、デフレ対策としてABSの購入や量的緩和など非伝統的な政策も視野に入れるといっているので、市場参加者は更に踏み込んだ話を期待している。

そして更なる緩和策が打ち出されるとそれはユーロ安の材料になる可能性が高い。

日銀の黒田総裁の発言も注目されている。日銀は4月の消費税引き上げの影響は、一時的なものだと言い続けているが、第2四半期のGDP成長率が年率1.7%の収縮を示したことで、市場参加者は黒田総裁が景気の弱さを認めるような発言をするかどうかを注目している。日銀総裁が景気の弱さを認めると追加的な金融緩和が行われると判断されるので、円売りの材料になるからだ。

米連銀については、先日発表されたFOMC議事録などからハト派と目される人もタカ派と目される人も米国の労働市場については相当改善が進んでいる、という点では認識が共通していることが明らかになってきた。もっともタカ派は金利の正常化(ゼロ金利の解除)について今すぐに話を始めるべきだと主張するのに対しハト派は時期尚早だという違いはある。ただその違いはそれほど大きくないかもしれない。

その中で注目されるのがハト派と目されてきたイエレン議長の発言だ。もしイエレン議長が大方の予想よりもタカ派よりの発言をする場合、ドルは相当強含む可能性があると私は考えている。もっとも同議長が予想よりもタカ派寄りの考え方を持っているにしても、今日のスピーチでそれを占めすかどうかは分らないが。

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【イディオム】at the wheel 日銀は寝ている?

2014年08月04日 | インポート

At the wheelは「運転して」という意味のイディオムである。

CNBCにIs the BOJ asleep at the wheel?というタイトルの記事がでていた。「日銀は運転中に居眠りをしているのか?」という意味だ。

先週の統計データは、景気の足取りが弱いことを示すものだった。経済産業省が発表した6月の小売業売上高は前年同月比0.6%のマイナス(市場予想は0.5%のマイナス)。

また同じく経済産業省が発表した6月の鉱工業生産高は前月比3.3%のマイナス。在庫が積み上がり停滞感が強くなっている。

この状況に対し、日銀は米連銀を見習ってもっと積極的に金融緩和を行わないと、消費税引き上げの影響で日本は景気後退に陥ると警鐘を鳴らす米系ファンドのストラテジストの声が「日銀は寝ているのか?」というタイトルになった。

ただしこの声には反対意見もある。私もこの反対意見と同じ見解なので、その声を紹介しておくと、富士通総研のマルティン・シュルツ・シニアエコノミストは「日本は米国と違い完全雇用に近い状態だし、家計の需要も過度に弱いという訳ではない。企業は高齢化による需要減少に備えて投資を抑制しているのであって、この問題は金融緩和策で救うことはできない」と述べている。

つまり人口減少に歯止めをかけるような抜本的な政策が打ち出されないと、内需は回復しないということだ。

Wheelについては幾つかイディオムがある。Oil the wheelsは「事を円滑に運ばせる」という意味だ。ただしデフレ脱却についてこのイディオムが使われることはなさそうである。

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中国の米国債買い、金利低下の一要因

2014年07月18日 | インポート

WSJは「中国が今年に入って過去にないハイペースで米国債を購入していることが米国金利低下の一要因」と報じいてた。

昨日公表されたデータによると、5月までの5か月間で中国の米国債保有額は1072億ドル増加して、1.27兆ドルとなった。国債保有額の増加ピッチは過去最高の速さだ。

雇用の改善や物価上昇の兆し等本来であれば金利上昇の材料が揃いつつある中で米国長期金利は低下基調にあり、多くのエコノミストの頭を悩ませてきたが、その一つの謎が解けたようだ。

中国が米国債の購入を急増させているいる理由は、人民元を安くするため、大量の人民元を売り、米ドルを買っているからだ。中国は買った米ドルを1年未満の短期債ではなく、償還期限の長い長期債で保有するため10年国債の金利が低下している。昨年末に3%だった10年国債利回りは2.54%まで低下している。

10年国債の今年の年末利回りについてモルガンスタンレー等大手投資銀行は3%と予想しているが、投資家の中には中国の国債買いが金利上昇を抑えるのではないか?と見ている人もいるようだ。

中国の外貨準備高は世界最大で4兆ドルに近い。中国政府はその内訳を示していないが、大方の債券はドル建てだと言われている。

今年の上半期で米国債を一番買い越したのが米連銀でその次が中国だった。

つまり中国は輸出を拡大しようとしいて人民元を安いレベルに据え置こうとして、人民元売り=ドル買いを行う。そして買ったドルで米国債を買う。米国では金利が低下し、住宅ローンの支払い負担が減少するので、住宅市場が活性化し、景気が良くなる。

一見双方ハッピーだが、そのハッピーは持続するかどうかは分らない。つまり発行総額12兆ドルの米国債の1割強を保有する中国が何らかの理由で米国債を大量に売るような事態が起きると米国金利が急上昇する可能性があるからだ。一方常識的に考えると中国政府が自らの売りで保有する米国債の価値を暴落させるような大量の売りを出すとは考えにくいのも事実だが(いや考えたくないというべきか)。

ところで米金利の低下ないしは上昇速度の減速見通しは円安ムードに歯止めをかけ、ドル円相場を円高に向かわせる。総じて円高は日本株安・円安は日本株高につながり、株高は安倍政権の支持率上昇、株安は支持率低下要因だ。それが日銀の次なる量的緩和策の実施時期を早める可能性があるかもしれない・・・・・・

中国の米国債買いに予想外のside effect(副作用)がでる可能性がないでもないと感じる次第だ。

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