金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ブラックフライディも中々大変

2008年11月30日 | 社会・経済

ブラックフライディというと「株価暴落で有名なブラックマンディの親戚かしら?」と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかしブラックフライディの方はもう少しポジティブな意味を持っている。ブラックフライディとは米国でサンクスギビング・ディの後の最初の金曜日を指す。サンクスギビング・ディは11月の第4土曜日で今年は11月27日がサンクスギビングディで、28日がブラックフライディだ。

ブラックフライディの意味は、この日が実質的にクリスマス・セールスの始まりの日で、この金土日の三日間の売上で、これまで赤字だった小売業者が「黒字」つまりブラックに転換することができるので、ブラックマンディと呼んでいるのだ。

不況下の今年は例年になく早くから「割引セール」の札が早くから立っていた。早いところでは10月から年末(クリスマス)セールの札が立っていたそうだ。セールの札が余りに早く立つと消費者は更なる値下げを期待して、買い控えを起こすという。

この安売り合戦の中で強い力を示しているのはウオールマートだ。米国の消費者は少しでも安い商品を求めて、ウオールマートやコストコに買い物に行っている。エコノミスト誌によると、4割の消費者はウオールマートに行き、ウオールマートに行った人の9割は総ての買い物をそこで済ませているということだ。

このウオールマートだが、ブラックフライディ当日(この日は早朝から買い物客が列を作るらしい)、ニューヨーク州のあるモールの店で、一人の男性従業員がバーゲンに殺到する人の群れに踏み倒されて死亡したという記事がニューヨーク・タイムズに出ていた。

今回の金融危機で株価暴落が原因で死亡したという人は寡聞にしてまだ聞かないが、株価暴落の副次的産物である景気後退の影響では死者が出たということだろうか?

それにしても不況下で一人勝ちの様相を呈するウオールマートだが、そんなに魅力的な商品に溢れていたっけ?と疑問を感じる時もある。ニューヨーク・タイムズによると、事故のあった店では早朝5時頃から行列ができていたということだ。寒いのにご苦労様である。

明日あたりからブラックフライディの売上をメディアは報じて、景気の先行指標にしようとするだろう。ウオールマートなど一部の店を除いて、販売状況は芳しくないと私は思っている。しかしどれ程のものを買うのかは知らないが、早朝から行列を作るという米国消費者の熱意は敬意を表したい。その意欲があればやがて景気は回復しそうである。そう思いませんか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平林寺へサイクリング

2008年11月30日 | まち歩き

11月最後の土曜日(29日)天気が良いのでワイフと自転車で新座の平林寺を往復した。平林寺には何度も出かけているがいつも車だ。距離は片道9km位で問題はないが、途中の道が狭いので快適なサイクリングは期待できない。

10時半に自宅を出発。少し道に迷ったが50分で平林寺到着。平林寺は紅葉を楽しみに来た素人カメラマン達で一杯だ。今年の紅葉は昨年より少し早いようだ。

Kikaede

お寺の紅葉のように明暗差の大きい景色に出会うと、使っているオリンパスE510の力の限界を感じる。ダイナミックレンジが小さいのである。三脚を抱えたハイエンド・アマチュアさんのカメラをそっとのぞき見るとそれなりに大きなカメラを持っている人が多い。来年はカメラのアップグレードを考えよう。

鮮明に赤いかえでがあった。

Akamomiji

本堂脇の水路に写る紅葉も美しい。

Mizukagami

Mizukagami2

夕紅葉とみに水音澄みわたり  鈴木 花蓑

Mizukagami3

池の水は噴水のため絶えずゆれている。鏡のように静かな水面に写る紅葉も美しいが、波紋に揺れる赤もきれいだ。

Kikaede2

黄色いかえでは闇に輝く星だ。

私達は昼前に紅葉見盛りの平林寺を後にして、ひばりが丘で釜飯を食べて帰った。秋は釜飯の季節だ。少し運動した後の釜飯は特に旨い。秋の平林寺へのサイクリングは私の年間行事の一つになるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の景気減速リスク

2008年11月28日 | 国際・政治

不況のリスクは「人々の夢や希望を奪う」ことである。夢や希望を失った人が直ちに犯罪に走るとは思わないが、失うもののない人が犯罪や暴動に走る可能性が高いことは確かだ。

中国の国家友展和政改革委員会National Development and Reform Commissionの張平Zhang Pion氏が、ニュース・カンファレンスで「世界的な金融危機の影響で、中国で工場閉鎖が起こり失業者が増え、社会的不安が増加する危険性が高まっている」と警告を発していることをファイナンシャル・タイムズで読んだ。

彼の警告は中国最大の輸出基地である深セン市の市長が「今年682の工場が閉鎖ないし操業停止を行った結果5万人の職が失われた」と発表した翌日行われた。中国の景気悪化の度合いは90年代後半のアジア通貨危機の時よりも深刻な様相を示している。

張平氏は4兆元(約5,860億ドル)の景気刺激対策の内訳の概要を始めて示した。ファイナンシャル・タイムズによると、4兆元の4分の3は向こう2年間でインフラ整備に使われる。内1.8兆元は鉄道・道路・空港などの交通施設へ、1兆元は四川省の地震復興へ投資される。

彼はこの政府投資は来年の経済成長を1%押し上げる効果があると述べたがこれは多くの民間エコノミストが予想するよりも低い数字だった。

不況はマイナス面が多いが、プラス面があるとすれば建設資材等の価格が下落していることと労働コストが低下していることである。中国がこの機会に大規模なインフラ整備を行い、景気を刺激しながら、国民生活の質の向上を図るならば、災い転じて福となすことができる。しかし舵取りを誤ると各地で大規模な暴動が起きる可能性を否定できないだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

農林中金と公的資金

2008年11月28日 | 金融

日経新聞によると農林中金が昨日発表した08年9月中間期の純利益は前年同期比92%減の104億円。有価証券の含み損は国内金融機関で最大の1.5兆円に膨らんだ。農林中金は資本強化のために1兆円の増資を計画していたが、正式に発表を行った。

一昨日ファイナンシャル・タイムズは農林中金の増資を記事にしていた。興味深い点は農林中金を日本最大のヘッジファンドと呼んでいたことだ。今日の日経新聞では「日本を代表する機関投資家」と呼んでいる。ヘッジファンドと呼ぶか機関投資家と呼ぶかは見る角度の問題として、農林中金は58兆円の資産の15%だけを貸出に回し、7割を有価証券運用に回している。

貸出に較べて有価証券は時価評価の対象となるので、信用リスクや流動性リスクが高まると、時価の下落分が含み損を直結する。ついでにいうともっとリスクに敏感なのが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)だ。CDSは平たくいうと「倒産保険」だが、企業や「仕組みもの」の債権について債務不履行リスクが高まると、市場参加者が感じ始めると急速にリスク・プレミアムが急騰(価格の暴落)が起きる。これがAIGの破綻の大きな原因だ。

話を農林中金に戻すと参院で審議中の金融機能強化法改正案で農林中金への公的資金注入の是非が焦点となっている。議論の詳細をフォローしている訳ではないが、気になるところは「理事の退職金が多い」などという感情的な議論が横行しているのではないかという点だ。

11月15日にG20は声明を発表しているがその中に「規制政策における景気循環増幅効果を緩和する努力をする」という項目がある。これは何を言っているかというと、「景気後退期に政府は金融機関に資金を投入して金融機関の貸出を促進しないと一層景気が悪化する」ということだ。

景気循環増幅効果は英語ではプロシクリカリティProcyclicalityという。景気後退期は倒産が増えたり、金融機関が保有する株式の価格が下落して自己資本比率が悪化する。そこで金融機関は自己資本比率を維持するべく、保有資産の圧縮を図ろうとする。これが景気の悪化を増幅させる。これは日本が1990年代に経験したことだ。

今欧米の金融機関には積極的に公的資金が投入されている(金融危機の初期の段階で米国政府は金融機関の自助努力を求めていたが)。この評価については「欧米の金融機関はそれ程傷んでいるのか?」と見るだけではなく、政府が積極的にプロシクリカリティの緩和を図っている面も見るべきである。

話を戻して総資産の15%しか融資に回していない農林中金に公的資金を投入しても国内の景気刺激には余り効果がないという考え方にはかなり理があるように聞こえる。極論をすると農林中金を巨大なヘッジファンドと見た場合、ヘッジファンドに公的資金を投入するのか?という議論にもなる。なおヘッジファンドの場合、ファンドの出資者はハイリスク・ハイリターンの投資を行っているという自覚があるが、農林中金の元手は系統預金や個人の金融債であり、預金者には「ハイリスク・ハイリターン」の認識はない。

話は長くなったが、今後世界的に大手金融機関の新しいビジネス・モデルが形成されていく中で、時価評価というブレの大きなポートフォリオを主体とする農林中金のビジネスモデルの可否が問われそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トヨタ格下、自動車は苦しい

2008年11月27日 | 金融

昨日格付機関Fitchがトヨタの格付を最上格のAAAからAAに格下した。トヨタは2003年にムーディーズがAaaに格上げしてから、3つの格付機関から最上級の格付を得ていたが、今回その一つを失った。なおFitchはトヨタをネガティブ・ウオッチに置いているので、格付回復より格下の可能性が高い。この格下ニュースで昨日トヨタ株は4.6%ダウンだ。

世界中で数少ないAAA企業であるトヨタが格下になったことは、自動車業界の苦境を物語る。考えてみると自動車は複雑な商品だ。ボトムラインは「移動手段」や「運搬手段」だが、その上に「趣味」「ステータス・シンボル」という付加価値があり、金融商品的な側面を持っている。金融商品的側面とは雑な言い方だが、自動車にはセカンダリー市場があるので、オペレーティング・リースの対象となったり、それを担保としてお金を借りることも可能だからだ。

特に自動車ローンやリースの比率が高い米国において、自動車購入についてファイナンスがつかないと車の販売は難しくなる。今年前半にガソリン価格が高騰した時は、米国の消費者が、燃費の悪いピックアップ・トラックやSUV市場から退出し、これらの車種の中古車市場は崩壊し、オペレーティング・リースを行っていた自動車メーカーは大損をした。そして自動車リースを大幅に縮小した。

自動車業界は今年「原油の高騰」と「金融危機」というアゲンストの暴風が吹いた。原油価格は目先下がっているが、ほとんどの人はやがて上がると考えている。景気が悪い間は車の販売は伸びないし、景気が回復するとガソリン価格が上昇して車はまた敬遠される・・・・。先進国で車を販売を延ばすのは難しい時代になっているのだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする